栢山入口交差点にあるデニーズ大井松田店を出て、再び元のコースに戻ります。
この道は、国道255号線の東側を並行している道です。
途中、御殿場線の踏切を渡るのですが、国道の方は当然に陸橋となっています。
また、その先で県道72号(おそらくは元の国道)を横断しますが、ここにもちゃんと横断歩道がついています。
おそらく自分が走っているのは、3代前の道なのでしょう。
そして、こちらの道で出会うのは、道祖神やお地蔵さん。
彼らがずーっと昔から佇んで往来を見守る道をゆくというのは、古からの旅人の列に加えてもらったような気分で、自転車で走っていると身が引き締まります。
もうひとつ、野菜や果物の無人販売所もいくつか見かけました。
簾がおりていれば準備中で、あがっていると営業中ということかな。
いま、地方ではとくに外国人が入ってきて、こういうところの野菜を持って行ってしまうという話題をニュースで見ましたが、昔からそういう人はいて、地域の人でも平気で持ち去ってご近所におすそ分けとかしていたのだそうです。
だから、どこの国の人でも、どこの地域の人でも、作った人の苦労が分かる人と、全く考慮しない人の2種類しかいないというのが、本当のところではないでしょうか。
しかし、お金を払わずに持ち去る人は、せいぜい全体の1割なのだそうで、9割の人はちゃんと代金を払っているわけです。
自分が損害を被らなければ、人のものをかっぱらっても良いという人間は、マイノリティなのですよね。
道は少しずつですが、緩やかな坂をのぼっている感じがします。
このまま県道72号線の旧道をゆくと、酒匂川の支流、小田急線に沿って渋沢方面から流れてくる川音(かわと)川を籠場橋で渡って松田町中心部へと入るわけですが、少し遠回りになってしまうため、東名高速道路が国道255号に接続している大井松田インターの手前で左へ折れ、相模金子駅の北で御殿場線を渡り、一本下流の文久橋を渡ります。
渡ったらすぐに左折して川音川の右岸をくだり、酒匂川との合流点に出たら右折して上流方面へと向かい、十文字橋で酒匂川を渡って、右岸にあるサイクリングコースを遡ってゆこうと考えていました。
ところが、河川敷をゆく自転車道路は、災害復旧工事中で通行止めになっているという情報を前もってつかんでおりました。
川沿いの自転車道って、大雨などでよく水没するものだから、通れないのは珍しいことではありません。
仕方なく、文久橋を直進し、小田急線の下をくぐってから左折してロマンス通り(?)という商店街に入り、御殿場線の線路と酒匂川の間に挟まれた路地をゆくことになりました。
しかし、その路地も新松田駅の裏からおよそ2㎞で尽きてしまい、桜観音前という信号から国道246号線の車道左端を走る羽目になります。
桜観音の呼称は、前の国道の桜並木が見事だったからそう呼ばれるなったそうです。
今はお寺の境内に桜が残っているのみで、国道の拡幅工事の際に切られて残っておりません。
国道は、左に御殿場線の線路をみながら、その向こう酒匂川と右手の高松山の斜面の間をゆきます。
右手斜面上には東名高速道路が並走していますが、自転車の走れる道は国道246号線のみです。
いや、正確にいうと東名高速道路をつくった際にできた側道があるのですが、もとは工事用道路のアップダウンが連続する道のため、自転車で走るのに向いているとはとてもいえません。
それに、こんなところまできて、高速を走る車の排ガスを浴びるのも癪です。
246号線からは、進行方向やや左手に、箱根外輪山の北端にあたる、矢倉岳や鳥手山が見えます。
それら箱根の山々と、丹沢山塊に挟まれた谷間を、御殿場線、国道246号線、東名高速道路が、御殿場方面へとのぼってゆくわけです。
そうこうしているうちに、富士急バスのバス停をみつけました。
田舎のバス停って時刻表を写真に撮っておくと、いざというときに役立ちます。
よく見ると、このまま国道を西へ向かって山北駅を過ぎ、丹沢湖まで行くバスは朝と午後から夕方にかけて、平日6便、週末10便、その差の平日便は殆どが山北駅止まりです。
また、伊豆箱根鉄道の大雄山駅を経由してアサヒビールの工場へ行く便は、10時から16時までの1時間に一便ずつというのが見て取れました。
昔は丹沢湖から犬越路というトンネルを越えると、丹沢の裏側、道志川沿いの月夜野という集落へ抜けることができたのですが、かなり以前から隧道の先の神之川林道があちこちで崩落して、廃道同然になっているので、四輪もオートバイも通行不能です。
自転車なら担いでしまえば何とかなるとは思うのですが、まだ通行止めになるまえにトンネルや裏側の林道を走った時には、ほかでは感じることのなかった胸騒にくわえ、悪寒までしたので近寄る気がありません。
丹沢湖って人造湖で、南側手前の三保ダムを中心に、左から時計回りに世附、河内、玄倉と三方向へ谷が分かれているのですが、どの谷間も妙に暗くて陰鬱な感じがします。
左の世附林道に入れば、明神峠で尾根筋に出て右折すれば、富士山と山中湖を眼下に見下ろす三国峠へ出られるのですが、こちらの林道は私が子どもの頃にラリーカーの転落死亡事故があって以来、ずっと開かずの林道ときいています。
そんなことを考えていたら、脇を1時間に1本の富士急バスが追い抜いてゆきました。
あまり国道を走りたくないので、東山北駅の手前で酒匂川の方へ左折し、県立山北高等学校の前を過ぎて、支流の尺里川にそって上流方面に向かいます。
ん、しゃくりがわ?
いえいえ、正確には「ひさりがわ」です。
この川をのぼってゆくと山北町の東端の向原という集落が、山の頂上付近に開けています。
衛星写真で見ると、山中の鉱山のようにみえるのですが、ここは戦後に海外から引き揚げてきた人たちが入植した場所なのだそうです。
神奈川県内にもそんな場所があったとは。
なお、向原集落から舗装路の峠を越えると、松田町の寄(やどりぎ)という集落へ下ることができます。
そこからさらに下ると、渋沢や松田方面に戻ることが可能です。
表丹沢の中津川に面した山間の郷で、キャンプ場などがあるので、さらに東の水無川とともに、小田急線沿線の学校がオリエンテーリングとか林間学校などでよく利用する場所です。
しばらく川沿いをゆくと、御殿場線と国道の下をくぐって、旧246号線の県道76号線に出ます。
酒匂川右岸の自転車道をのぼって新大口橋を渡った場合、この辺りで合流します。
陸橋下には地元の小学生が、この地域の昔話を絵にしています。
線守稲荷というのは、明治に鉄道が敷かれたころ、機関車の通行を妨害したキツネの話です。
この手の話は信州にもあって、開発によって住処を追われた動物や昆虫たちの抵抗は、スタジオジブリの映画にも描かれました。
線守稲荷については、廃線跡のトンネル上にあって、道路からは行きにくい場所にあるという噂なので、この先で検証しようと思っています。
県道に出たら尺里川を渡り、造り酒屋や元紡績機械工場の前を通って西へ向かいます。
途中から、線路寄りの旧道に入ると、山北駅に向かってまっすぐなゆるい坂道をのぼってゆきます。
途中、街道沿いによくあるような蔵つきの家があったりして、ここが昔の東海道本線沿いの街であったことを思い起こさせます。
そして9時ちょっと前に山北駅到着です。
朝ご飯を食べ終わって出たのが8時前だったので、曽我からここまで、約1時間でした。
次回はさらにJR線沿いに酒匂川を遡り、谷峨を抜けて駿河小山方面を目指します。