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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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江戸時代の旧東海道の様子を描写した紀行文について

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今回は、いままで広重に仕込んだブロンプトンを肴に、東海道の紀行文について書いてみたいと思います。
絵のどこにブロンプトンがあるのか、わかりにくいものもありますので、探してみてください。
仕込み作業は結構大変で、イラストレーターとフォトショップを使いました。
ということで、今日のお題は紀行文についてです。
旧東海道をブロンプトンでたどるようになってから、江戸時代の旅の様子が知りたくて、その時代の紀行文を時々読んでいます。
それ以前では在五中将(「伊勢物語」のことです)とか「十六夜日記」(本ブログの読者は「じゅうろくや」なんて読まないでくださいね)がありますが、江戸時代に限ってということになるとどうでしょう。
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紀行文といえるかどうかは微妙ですが、十返舎一九の旅草子、「東海道中膝栗毛」がまず思い浮かびます。
題名を現代風に改めれば、「弥次・喜多コンビによる、爆笑東海道ほか珍道中日記」とでもいいましょうか。
あの本を下ネタばかりの低俗で下衆な悪趣味本だと記事でこき下ろしていた記者がおりましたが、まったくもって残念な感覚だと思います。
今の物差しで当時をはかり、それを一方的に押し付けることは、頭から昔の人との対話を拒絶しているようなものです。
これは文化風習についてだけではなく、最近「歴史を見る目」つまり、過去を振り返るときの心構えがおかしくなってきていることと関係している気がしてなりません。
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たとえば、現代に人気の土方歳三が、「ばらがき」のころ、府中大國魂神社の「くらやみ祭り」にひとりで通っていた事実はどうとらえるのでしょうか。
(その時代のくらやみ祭りがどんな意味を持っていたのかは、お察しください)
まさか、「歳さんならゆるされる」とか言うわけにはいかないですよね。
このブログの底本のひとつにもなっている「今昔東海道独案内」の著者、今井金吾先生もぼやいていましたが、当時の飯盛女(旅籠で性的労働を行う女性)の存在や、その女性を買う客を今の倫理観で裁くことほど愚かな行為はないと思います。
最近、大名がコレクションしている「春画」が話題になっていましたが、食事や睡眠と同じく、性の営みについて、江戸時代はもっと大らかなものだったそうです。
そもそも「個人」という概念がなく、西洋の倫理観というある意味では「知恵の実」を食べていないのですから、その時代の人たちに文句をつけても仕方ありません。
もちろん現代のそれを肯定しているわけではありませんので、悪しからず。
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あっ、話が逸れました。
ええと、紀行文でしたよね。
そう、同じく有名な著作に芭蕉の「野ざらし紀行」があります。
岩波文庫の「芭蕉紀行文集」に収められていまして、本屋でパラパラ見た程度ですが、「フォト・エッセイ」ならぬ「俳句・エッセイ」みたいでした。
ドラマ「坂の上の雲」劇中、正岡子規は「つまり俳句とは写生です」と言ってましたが、俳句って景色や情景を切り取った写実という点では、その通りだと思います。
それに芭蕉って自分もそうなのですが、あれで結構物事を斜め上とか斜め下からみている俳句も多いのですよね。
彼が伊賀の出身ということもあって、隠密ではないかという説があるのも頷けます。
ただ、旅先で句碑だけ見るよりはその歌を詠んだ状況がわかるので、面白いと思います。
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先ほどの話に関係するのですが、もし文化も価値観も違う現代人が昔の様子を知りたいということであれば、その時代に日本を訪れた外国人の紀行文を読むのが、もっとも客観に近いのかもしれません。
ということで、私のお勧めはE・ケンペル著「江戸参府旅行日記」です。
ケンペルと聞いて箱根を思い浮かべた方は、すごいと思います。
1年半前にバーニーさんとともにこのブログに登場しています。
ケンペルさんの詳細は上に譲るとして、今日はその中から少しだけ紹介しましょう。
 
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『旅館の主人らの礼儀正しい応対から、日本人の礼儀正しさが推定される。
旅行中、突然の訪問の折に気付いたのであるが、世界中のいかなる国民でも、礼儀という点で日本人にまさるものはない。
のみならず彼らの行状は、身分の低い百姓から最も身分の高い大名に至るまで大へん礼儀正しいので、われわれは国全体を礼儀作法を教える高等学校と呼んでもよかろう。
そして彼らは才気があり、好奇心が強い人たちで、すべての異国の品物を大へん大事にするから、もし許されることなら、われわれを外来者として大切にするだろうと思う』
(ケンペル著 斎藤信訳 『江戸参府旅行日記』 平凡社東洋文庫 より)
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どうです。
現代のネット上に溢れる訪日外国人の感想みたいですよね。
ほんと、今も昔も変わらないのですね。
もし、現代人がブロンプトンをつれてタイムスリップし、江戸時代の東海道を旅したなら、(ご公儀から目をつけられることは別にして)ケンペル同様にきっと大切にしてもらえるのではないでしょうか。
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自分が海外旅行に出てこれと同じ感想を持ったのは、中国のシルクロードでイスラムの人たちに触れた時です。
ウイグル族をはじめ、カザフ族、ウズベク族、キルギス族など在中国の少数民族の人たちは、みな日本人と同じようなホスピタリティをもっていました。
その点にかぎっていえば、どちらかといえば日本人に容姿の似ている漢民族の方が、異民族だなと思えたくらいです。
その辺の話はまた折を見て。
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(由比宿 東海道広重美術館前にて)


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