鉢山交番前交差点(35.652896, 139.698070)から、中目黒方面を目指します。
桜ヶ丘郵便局前から来ると、前方が二股に分かれている五差路に出る形になるので、左前方の道を選択します。
70mほど進むと右手からの道が合流し、旧山手通りの陸橋、西郷橋(35.650906, 139.696981)下をくぐります。
(西郷橋の上と下 水道橋でもあったことはあまり知られていません)
これから東横線に沿ってルートを選定するとき、どこを通って山をのりこえてゆくかということが、都度問題になりますので、ちょっと説明しましょう。
ここまで渋谷駅から鶯谷の谷間に沿ってなるべく緩い坂を選んでのぼってきました。
いつか神田川のときに書いたように、北向き斜面と南向き斜面では、崖線の傾斜の緩急が違います。
冬に霜が解ける速度で仮説が立てられていました。
南向き斜面の方が、土中に含まれる水分の溶解が速い分、表土の流される(削り取られる)速度も北向き斜面に比して早く、斜面も谷筋を形成する間もなく急になる傾向があるという内容でした。
(オレンジの崖線と白の崖線ではあきらかに様相が違います-グーグルアース東京テレインマップより)
旧山手通りを稜線として、北向きの渋谷方面はわりと渋谷川から枝分かれした谷筋が入っているのが分かります。
けれども南向きの目黒川側は、かなり急な崖が壁のように連なっているのが分かります。
ブロンプトンで走る場合、坂を下るぶんには階段でなければ斜度は急でも関係ないのですが、このように沿線をお散歩するコースを作成する場合は、逆ルートでも緩い坂になるようにしておいた方が便利です。
冬は北風が強く、渋谷から横浜に向かった方が有利ですが、逆に南風の多い夏は横浜から渋谷に向かった方が楽だからです。
(旧山手通りに接続した西郷山公園の入り口には、カフェがあります)
それに、普段利用する路線に沿ってブロンプトンで走る場合は、事故や災害などで鉄道がストップした場合など、いつ、どちら向きに走るか分かりません。
だから、作成するコースはどちら向きで走っても、緩い坂を上り下りするようにしておいた方が良いのです。
そうすれば、用事の行きと帰りどちらでも、ブロ散歩が楽しめますよ。
(グーグルアース東京テレインマップより)
ということで、緩い坂を探してみましょう。
東横線の近くを自転車で走って渋谷川と目黒川を隔てる丘を越えるとき、鞍部と呼ばれる稜線が低くなっている場所は二つしかありません。
ひとつは駒沢通りが通っている鎗ヶ崎交差点(35.646626, 139.702378)で、もうひとつが今回ご紹介した西郷橋です。
そして、どちらも目黒川の側からブロンプトンでのぼってみたのですが、西郷橋をくぐる坂道の方が、鎗ヶ崎へのぼる坂道より若干緩くて楽だったので、こちらの方を選びました。
(左の高層ビルは中目黒、右のビルは池尻大橋です。西郷山公園内は自転車乗り入れ禁止ですから、押し歩きしてください)
あとで何度も走ってみると、自分の他にもこのコースを自転車で上り下りしている人が多いので、地元ではきっと、自転車の乗り越えルートになっているのでしょう。
こうしたその土地ならではの、暗黙の自転車ルートを探すのも、ブロンプトンで街を探検する際の楽しみのひとつです。
こういう道を見つけるためには、ただ車と同じルートを辿るのではなく、普段から自転車に合った道を探っていなければなりませんが、それもまた、ブロンプトンでできる「地図遊び」の楽しみです。
(富士山が見えるのがわかりますか)
西郷橋に話を戻します。
この陸橋はアーチ型をした美しい橋で、よく撮影などにも使われます。
実はこの橋は水道橋も兼ねていて、道路の他に三田用水が流れていました。
三田用水というのは、京王線の笹塚駅の南で玉川上水から分流し、北沢、駒場、富ヶ谷、代官山、恵比寿、目黒と、ちょうど稜線のうえをなぞるように三田方面へ流れていた用水路のことです。
前回ご紹介した旧浅野家のお庭に流れていた水は、もとは三田用水から引いていたわけです。
古くは1664年に開削された三田上水がはじまりで、このように玉川上水から分水する支線のような用水路には、ほかに千川上水がありました。
(三田上水は玉川上水の支線で、両者とも高いところから水を落とすために、尾根の上を流れていました。グーグルアース東京テレインマップより)
西郷橋をくぐると目黒区に入ります。
下り坂になり、坂の途中に信号機(35.649719, 139.696144)があります。
渋谷方面から来ると、振り返らないと視界に入らないのですが、この信号機の右脇に西郷山公園があります。
公園の上に出たければ、鉢山交番前信号を直進し、130mさきで旧山手通りに出たら横断してから左折し、80mもゆくと西郷橋の上部に出ますので、その端詰が西郷山公園の入口になっています。
(西郷橋の下をくぐったら坂を下って左に折れ、目黒川に出たらまた左折します。なお天神橋の向こうには福砂屋の工場があって、出来立てのカステラが食べたければ、朝9時から売っていますよ。まさかそれで「天神橋」なのでしょうか)
この公園は、西郷隆盛の弟従道が、兄隆盛の東京での静養の場にと大名の屋敷だったここを購入しました。
目黒川を見下ろす河岸段丘の上からは富士を望むことができる景勝の地でしたが、隆盛は西南戦争で没し、弟の想いが通じることはありませんでした。
今も冬の良く晴れた日など、ビル越しではありますが、真白き富士の峰がちょこんと見えます。
公園は良く撮影にも使われるので、見覚えのある人も多いのではないでしょうか。
(東京目黒美空ひばり記念館 正面の詩は「生まれし時に この道知らずとも この道を歩みいく年月ぞ 今日を涙して 明日また笑おうぞ」とあります。何だか家康みたいですな)
なお、西郷山公園脇の坂より一本東(代官山)寄りの上村坂には、東京目黒美空ひばり記念館(35.648958, 139.697997)があります。
中は予約制のようですが、表には美空ひばりさん関連の書籍やグッズを扱うお店がありますよ。
たしか彼女は横浜の魚屋さんの娘ではなかったでしょうか。
こんどその辺りを訪ねてみようと思います。
(目黒川沿いには、お店がたくさん並んでいます)
さて、西郷山公園脇の坂の下部(35.649013, 139.695620)で左へ路地を入り、そのまま西郷山通りを横断して天神橋(35.648023, 139.695231)で目黒川に出たら左折し、川に沿って下流方向へ460mほど橋を五つ数え、別所橋(35.645480, 139.699317)で右折して(新)山手通りに出ましょう(35.644959, 139.698585)。
左手斜め前に中目黒駅が見えると思います。
次回は中目黒駅周辺をご案内します。