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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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旧東海道へブロンプトンをつれて 46.亀山宿から47.関宿へ(その1)

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亀山宿、京口坂の下にある昭光寺(34.855938, 136.445203)前から、次の宿場、関を目指します。
坂を下って道がたいらになると、ほぼまっすぐに西へ向かうかたちになります。
このあたりを野村集落と呼ぶのですが、殆どの家が建て替わってしまっている亀山宿場内よりも古い家が残っていて、街道を走っている実感がわきます。
昭光寺から340mほど進んだ右側が浄土宗慈恩寺(34.856638, 136.441428)の山門です。
山門手前右手に「阿彌陀如来」と大きく彫られた石柱が立っています。
このお寺のご本尊であり、国指定重要文化財の木造阿弥陀如来立像(高さ161.9cm)のことなのですが、この木造にはエピソードがあります。
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(慈恩寺山門)
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(野村一里塚)

もともとお寺ではこの立像に価値を見出しておらず、明治から大正にかけての重要文化財指定からも漏れていました。
昭和12年(1937年)になって、寺が境内にある薬師堂の本尊となっている薬師如来像を文化財申請し、調査のため文部省からきた監査官がくることになりました。
彼らは阿弥陀如来像を鑑定して、こちらの方が国宝に相応しいということで、申請されていなかった方の仏像を文化財指定したというものです。
阿弥陀如来立像の造られた年代は不明で、寺伝によると、行基の作になっていたそうですが、鑑定の結果平安時代初期の作と推定されました。
静かな表情の中に力強さを表現した木造だそうで、1週間前までに亀山市まちなみ文化財室に問い合わせして拝観を申請すれば、見学可能だそうです。
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(旧東海道から県道と関西本線をのぞむ)

慈恩寺から390mさき、左側に大きな椋の木が塚の上に枝を広げていますが、これが野村の一里塚(34.857268, 136.437239)です。
樹齢400年といわれる椋は、やはり国の重要文化財指定を受けています。
三重県内で唯一現存している一里塚ですが、椋の木が一里塚として利用されているのは珍しく、全国でもここだけのようです。
そのまま進むと進行方向左側に視界が開けた場所があって、並行している県道565号線が丘の下に見えます。
この県道がかつての国道1号線で、その向こうに関西本線の非電化単線、鈴鹿川の土手がやはり並行して見えているので、旧東海道が一段高い場所を西へ向かっているのがわかります。   
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(毘沙門堂を右折)
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(布氣皇舘太神社の裏参道)

野村一里塚をすぎると、旧東海道はゆるやかな蛇行を繰り返します。
一里塚から670mさき、右手角に毘沙門堂(34.857998, 136.430077)のあるT字路を右折します。
(▶=右東海道の標柱あり)
左手に鬱蒼とした森をみながらすすみますが、鳥居のある入口が見えてきて、この森が神社の森だと気付きます。
神社の名前は布氣皇舘太神社(34.857421, 136.428291)。
「ふけこうたつだいじんじゃ」と読むのだそうですが、布氣神社と皇舘社があわさってこういう名前になっているのだそうです。
もともと先程通ってきた野村に布氣神社が存在していて、応仁の乱が周囲へ波及した影響で戦火によって焼失したため、こちらへ遷ってきたそうです。
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(左直進で坂を下ります)
先日、伊勢神宮へ参拝する機会があったので、神道についての本を読みました。
本の中では神道の五領域として、神社神道、皇室神道(宮中祭祀)、学術神道(神道説)、教派神道、民間神道(民俗神道)を挙げられていました。
こうした地域の氏神、産土、鎮守などを祀る神社は民間神道に入るわけですが、多様で地域的な特色が濃いために、首尾一貫した教義もなければ、統一された型式もないそうです。
ある意味で神道が「何でもあり」と言われてしまう原因のひとつですが、さらに家父長的な屋敷神という個人の信仰をはじめ、仏教はもとより、陰陽道や儒教などが習合しているためつかみどころがないのです。
そういえば、江戸後期の国学者、平田篤胤は、聖書の三位一体説まで神道に取り入れてしまったと聞いたことがあります。
そこまで何でもありだと、空っぽの入れ物というか、節操が何もないになってしまうような気がします。
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(昼寝観音)
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布氣皇舘太神社は、旧東海道側から覗くと、鬱蒼とした森の中を続く裏参道のさきにお社があるようで、並んでいる石灯篭に灯りなどがついていると幽玄な雰囲気を醸し出しています。
でもだからこそ、親しみの無いよそ者にはなにやら得体のしれないものに感じてしまう面があります。
どうも、「教え」という点では、人をみな平等にみる仏教やキリスト教のような世界宗教と、地域の信仰とはあまり相性がよくない気がします。
そう思うと、今度は日本における神仏習合や神仏分離といった宗教史について、本を求めたくなってしまうのでした。
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(陸橋へはこの角を左折します)
さて、旧東海道は左方向へゆるやかにカーブした後、毘沙門堂の角から390mで、Y字にわかれます。
坂を下る左方向の道と、そのまま段丘上をすすむ右方向の道がありますが、旧東海道はここで坂を下ります。
その分かれ道の左側に、昼寝観音(34.857954, 136.426167)という変わった名前のお堂があります。
観音様の涅槃像かと思いきや、次のような逸話があるそうです。
むかし、西日本における三十三観音を決めるため、観音様たちが集まって会議を行った際、ここの観音様は昼寝をしていてすっぽかしてしまったので、選ばれなかったというのです。
恥ずかしいからなのか、観音様は小さな祠の中で街道に背を向けています。
(私には、小さな祠に入っているのは地蔵菩薩で、観音様は他の場所にいるような気がしました)
それにしてもなんともユーモラスな話ですが、いいじゃないですか、三十三観音から漏れたって。
こうして旧道沿いにあってこのネーミングですから、それだけで人目を惹いたと思います。
それに、日本の文化では、昼寝する人を怠け者みたいに扱われますが、あれは健康に良いと見直されています。
しかし、宵っ張りだからその分を昼寝で取り戻すというのとは、違うと思います。
早朝4時とか5時に起床して活動していると、身体を動かして早目の昼食を食べたなら、確実に眠気に襲われます。
そんなとき、15分でも熟睡できると心身ともにリフレッシュできます。
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(県道へ出たら戻ります)
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(陸橋上から県道、関西本線亀山方面をのぞむ)

坂を下って家並みを抜けると、先程崖下の方に並行していた県道に合流します(34.857602, 136.423099)。
いったん県道まで出てから50mほど後退して、合流点手前を左折すれば、陸橋(34.857386, 136.423673)で県道と関西本線を越えることができます。
もとの東海道がこのように新道や鉄道で分断されている場合は、このように切断された場所まで進んでから戻るのが、忠実に辿る人の作法でもあります。
亀山から西の関西本線は非電化の単線ですが、こうして橋の上から見てみると、かつては関東でも相模線、八高線、川越線などが、同じ風景の中を走っていたことを思い出します。
房総半島だって、ほとんどの線区は電化されておらず単線でした。
今首都圏でこういうディーゼルカーの走る鉄道風景に出会いたかったら、八高線の北半分(高麗川~倉賀野間)か、真岡鉄道、わたらせ渓谷鉄道、JR烏山線、JR水郡線、関東鉄道、そして房総半島のJR久留里線、小湊鉄道、いすみ鉄道と、かなり隅の方へゆかないとお目にかかれません。
そして、いざブロンプトンでお散歩しようと思って利用すると、線路の路盤も悪く車両も古いせいか、かなり揺れるのです。
でも、昔の鉄道は話していると舌を噛むのではないかと思う程揺れたもので、この揺れが眠気をさそい、車内では熟睡できるのでした。
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さて、元国道1号線あらため県道と、関西本線によって分断された旧東海道、陸橋を渡って向こう側へくだります。
すると、低い土手上を道はまっすぐ続いており、桜が道の両側に並んでいます。
左手にあるのは、小夜の中山でも見かけた製茶工場です。
三重県はお茶の産地としてそれほど名前が知れ渡っていませんけれども、県別生産量でいったら静岡、鹿児島についで、第3位なのです。
また、抹茶アイスの製造に使われる加工用の原料茶シェアは、全国一です。
その伊勢茶の生産地の中でも、鈴鹿市や亀山市はもっとも生産量の多い地域です。
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(大岡寺畷)
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(神辺小学校前)

桜並木を抜けてゆくと、今度は右手に神辺保育園、神辺小学校(34.857140, 136.417272)と続きます。
小学校の校門手前には、案内板があります。
それによると、このあたりは大岡寺畷(たいこうじなわて)と呼ばれていたそうです。
大岡寺とは、おそらくはこの小学校があった場所に建っていたお寺の名前で、畷とはまっすぐな道と言う意味です。
川崎宿を出たあたりに、八丁畷という地名があったのを覚えていますでしょうか。
鈴鹿川の築堤に沿って上流方向へとまっすぐ続く道だったようです。
江戸時代は見事な松並木だったと記録に残っています。
しかし、現代の象徴みたいな東名阪自動車道の橋脚が目の前をふさいでいて、あまり風情がありません。
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次回はこの神辺小学校の門の前から旧東海道の旅を続けたいと思います。
(旧東海道ルート図 井田川駅前~坂下宿 https://yahoo.jp/tH6eSs )


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