清春芸術村から来た道を七里岩ラインまで戻り、右折して長坂駅方面へと向かいます。
七里岩ラインは、山梨県道17号線でもあるわけですが、長坂駅手前で大きく八ヶ岳側に振れた後にほぼ180度のヘアピンカーブの橋で谷を渡り、かなりきつくて長い坂を登ります。
芸術村のすぐ下を七里岩ラインに並行して、やはり長坂駅に出る県道606号線もまた、同じように谷を渡って、もっときつい上り坂を長坂駅へ向かう形になっています。
この深くて大きな谷間を流れる川を、大深沢川といい、八ヶ岳山麓についた大きなしわとでもいいましょうか、これを渡ると対岸で必ず上り坂がまっています。
こうしたところには泉が湧きやすいのか、県道606号線の下には地図では温泉記号がついています。
深沢温泉という塩化物泉なのですが、現在は営業している気配がありません。
この深い谷を渡ったあとの登りを避けるためには、中央本線の線路を渡り返して神田の大糸桜まで戻り、さらに上にある中央自動車道まで戻り、そこから東へトラバースして、八ヶ岳パーキングエリアをかすめるようにして、山の上の方から長坂の街へ下ってゆくしか方法はありません。
本コース中のいちばんの難所が、この大深沢川対岸の登りなのです。
しかし、そこは11段変速のアルフィーネですから、ギア段を一番軽くして、コツコツとのぼれば何とかなります。
横を他県ナンバーのマイカーがビュンビュン抜いてゆきますが、あの人たちは帰るときに確実に中央高速名物の渋滞に巻き込まれ、こちらはその時分にはぐっすり眠りながら電車で帰るわけですから、深く眠るためにもここは運動です。
長坂の駅は、本コース中では出発地点の小淵沢に次いで、商店街のある街です。
食事をするならここですし、時間によっては小海線の清里駅までバス便があるので、時間が合えばここから清里へバスで行って、そこから野辺山を越えて佐久の方へ下り、宿泊することも可能です。
但し、山麓で桜を鑑賞できるこの時期、高地の野辺山はまだ春が来ていないでしょうから、きちんとした防寒着が必要かと思われます。
長坂駅からは七里岩ラインよりも中央本線の線路寄りをくだり、日野春駅手前で合流します。
日野春駅の信玄公旗掛松事件については、以前ブログで書きました。
法律学で権利濫用について興味のある方は調べてみてください。
日野春なんて春らしい名前ですが、駅前には七里岩ラインをはさんで山の絵を描く人のための宿があります。
イーゼルを立てて絵を描くことのできるテラスがあって、「画家の宿」と銘打っています。
画家の宿があるのなら、読書家の宿があってもいいのに。
日野春駅前からは七里岩ラインをくだり、穴山駅手前で左手へそれて、能見城の東側を巻いて蛇行する中央本線を貫くように下ってゆくと、新府桃源郷へ出ることができます。
能見城は、武田氏一門である穴山氏の居城でした。
武田信玄関係のドラマだと必ず登場する、穴山信君(のぶただ1541-1582)が有名です。
一般には穴山梅雪という号で呼んだ方が通りがよいかもしれません。
彼は武田氏滅亡のおり、主家の再興をねらって織田方に内通しましたが、その信長が本能寺で横死したとき、家康と一緒に大阪の堺を見学しており、家康とは別々に逃げたところ、落ち武者狩りに捕捉されて落命しています。
一説によると、家康と誤認されて討たれたともいわれています。
桃源郷は能見城の下あたりから、新府駅のさらに東まで、かなり広範囲にわたります。
桃の花は桜よりも時期が遅いので、山の上の方で桜を楽しんだ後、こちらで桃の花を観賞することができます。
また、甲府盆地を挟んで富士山が見える場所も多いので、自転車で走って一番楽しい場所です。
そのまま七里岩ラインに復帰し、台地の先端にある観音像からつづら折りのカーブを下ると、出発点だった韮崎駅のすぐ脇に出ます。
なお、今回のコースは山岳路であってかつ下り主体です。
ちょっとスポーティに見えるBirdyだからといって、スピードは出さないようにしましょう。
七里岩ライン(県道)は、気候のせいなのか、舗装路にしてはかなり路面が荒れていて補修の跡が目立ちますし、側溝も蓋の無い深いタイプのものがそこかしこに見られました。
また、農道に入ったら農耕車や歩行者が優先です。
下りなのを良いことに、彼らを追い立て、あるいは蹴散らすような走りは絶対にしないでください。
公道における小径車はロードバイクのようにスピードを追及する乗り物ではありません。
いっけん山の中に見えるこの地域も、歴史が豊かですし、河岸段丘上には思わぬ絶景もあり、かつせっかくの花なのですから、ウロウロ、のんびり、景色を愛でながら走ることをお勧めします。
(おわり)