(琵琶湖の水の出口、瀬田川にかかる鉄橋を渡る)
(前回からの続き)
〇米原12:20⑥→姫路14:47⑧ 東海道本(琵琶湖)線新快速姫路行き 3263M 乗車時間2:27姫路乗換時間0:16/12両編成 C
この列車の始発は近江長浜ですが、米原までの区間は4両編成、大垣からの列車とほぼ同時に米原駅に到着し、3分間の停車時間中に前部に8両を増結し、計12両編成で姫路へ向かいます。
当然、前8両は米原始発ですから、6番線ホームにおりたら先頭(京都)方向へ急ぎましょう。
ここからはJR西日本の車両になります。
グリーン車はありませんけれども、JR東日本の車両より、座席の幅も深さもゆったりとしています。
途中京都、大阪、三宮前後で混雑しますが、休日は昼間ということもありそれほどでもありません。
首都圏の通勤ラッシュに比べれば、全く問題にならないほどのレベルです。
そして路線区分上は神戸までが東海道本線、そこから西は山陽本線となります。
この電車に乗っていて気がついたのですが、三宮、神戸を過ぎたあたりから、急に地理に不案内になりました。
実を言うと、脇往還である山陽道を下関までブロンプトンで走った自分ですら、駅の名前を見ても咄嗟にいまどのあたりであるのかがわからなくなりました。
それに、車窓を見ていて「畑の土が白い!」と感じるのもその辺りからです。
関東の黒ボク土を見慣れている自分にとって、近畿圏の土は赤味噌と白味噌の違い以上に色の白さを感じるのです。
生まれも育ちも関東の自分にとって、神戸から西、とくに明石海峡大橋をくぐった先の在来線がいかになじみの薄いものであるかを痛感します。
でも、こんな観察、新幹線や夜行バスに乗ってしまったらできませんし、それだけに新鮮で「もっとよく知りたい」と思ってしまうわけですが。
姫路到着は8番線。
向かいの7番線から乗り継ぎ列車は発車します。
沼津、豊橋、大垣、米原と、熱海で同一ホーム乗換して以来すべて階段で上り下りせねばならぬ乗り換えが続いてきましたが、ここでそれも終わりです。
なお、姫路到着1分後に、お向かいの7番線から前を走っていた快速網干(あぼし)行きが出発しますが、あわてて飛び乗らないようにしましょう。
網干は車両基地のある駅で、新快速や快速の殆どはここで折り返すのですが、そこから乗り継ぎで西へ向かう列車はほぼありません。
姫路駅で乗り換えの人たちを観察すると、関東からずっと同じ乗換をしてきた人たちは、殆どいなくなっているのに気が付きます。
やはり、関東~近畿圏への往復に青春18きっぷを使う人はいても、それ以西まで行く人はあまりいないのかもしれません。
(京都駅手前で鴨川を渡る)
(新大阪駅到着)
〇姫路15:03⑦→相生15:23② 山陽本線経由赤穂線播州赤穂行き 975M 乗車時間0:20相生乗継時間0:02/8両編成 C
姫路駅の7番線で待っていると、米原から乗ってきた新快速と同じタイプの車両が入ってきました。
8両編成ですが、姫路始発で中途半端な時間のため、それほど混雑していないから、座席の確保には苦労しません。
この列車は、相生(あいおい)から赤穂線に入って播州赤穂まで行きます。
この辺りまでくると、地名を聞いても位置関係が分かりにくいと思います。
赤穂とは、赤穂浪士の赤穂です。
相生から西の岡山まで、赤穂線は海に近い海岸線側を、山陽本線は内陸側を走ります。
赤穂線も、途中の播州赤穂までは大阪方面からの新快速が直通するのですが、そこから岡山まではかなりのローカル線です。
では、山陽本線の方がメインストリームかというとそうでもなくて、相生から岡山までの区間、とくに兵庫・岡山県境を越えて走る列車は、片道につき毎時1本程度しか走っていません。
そもそも、赤穂市はもちろんのこと、竜野とか相生が兵庫県に含まれるって認識があまりありませんでした。
ですから、東京を出て鈍行でひたすら西へ向かうと、本線つなぎだったのにいつのまにかローカル線になっていたと感じるのが、このあたりです。
わずか20分間の乗車ですが、乗り換えのために中央付近の車両に乗車しておきましょう。
そして、相生駅が近づいたら進行方向右側ドア付近で降車準備しておきましょう。
次に乗り継ぐ列車は、今日乗る列車の中で二番目に乗車時間が長く、もし座れなかったら岡山までは立席になる可能性が高いからです。
(新大阪駅と大阪駅の間で淀川を渡ります)
●相生15:25③→尾道17:56① 山陽本線各駅停車糸崎行き 1323M 乗車時間2:31/6両編成 SC
相生駅ではお向かいの3番線に停車しています。
8両編成からの6両編成への乗り換えですから、競争率は高くなります。
姫路乗車時に、なるべく真ん中の車両に乗りましょう。
前述した通り、相生から岡山までの間をいかにスムーズに、それより西へ距離をのばせる列車に乗り継ぐことが、山陽本線の上手な利用方です。
また、同じJR西日本の車両でも、ここからは中国地方の車両となるため、昔首都圏の中距離電車として走っていたのと同じ車両が黄色に塗られて登場します。
これは、JR西日本が中国地方の地域色として統一したものですが、一部鉄道ファンの間からは「末期色」などと陰口をたたかれるほど評判がよくないそうです。
私などは瀬戸内海の海によく合っていると思うのですが、きっと湘南カラーのほうが見栄えが良いのでしょうね。
列車が相生を出ると車窓はどんどん寂しくなり、岡山県との県境付近ではほぼ人家が見られなくなるほどです。
山も関東の樹が生い茂っている青々とした山々とは違い、岩石や砂混じりの若干乾いたような斜面に松が多く自生していて、それがいっそう寂寥感を色濃くしています。
でも、こんな風景はモグラ新幹線と渾名される山陽新幹線ではほとんど拝めません。
また、冬場だとこの辺りで日が傾いてきて、やがて車内の灯りが窓に反射するようになり、景色が見えづらくなってゆきます。
そして、岡山を過ぎて倉敷辺りでほぼ日没という具合です。
この列車は目的地である尾道の一つ先の駅までゆくのですが、相生から岡山まではかなり混雑していて、岡山から福山までは乗客の出入りが激しく、福山以西はどんどん空いてゆくという感じでした。
尾道手前の松永駅を過ぎ、「次は・・・尾道、尾道・・・」というアナウンスが車内に流れると、暗闇の中にナトリウム灯の並ぶ尾道大橋と、下に滔々と流れる尾道水道の向こうに僅かな残照が確認され、「海が見える。海が見えた。五年振りに見る、尾道の海はなつかしい」という林芙美子の放浪記の一節をいやがうえにも思い出します。
これを意識したのか、大林映画の「さびしんぼう」の冒頭は、「尾道の風景だ。僕のように、毎日眺めて暮らしているものにとってさえ、まるで小さい頃に読んだ物語の中の風景のようだ」という主人公のナレーションからはじまっています。
旅で考えると、とくに尾道はこのプロローグを外してはならないディスティネーションなのだと気がつきます。
だってこれ、新幹線で新尾道に到着したり、夜行バスのエトワールセトで国道184号線をくだって到着したら、まったく別の感覚に陥ると思います。
尾道到着は17:56ですから、夕食をすぐ食べれば翌日のために早寝できる時間です。
駅前でブロンプトンを組み立て、本通り商店街のアーケードをゆき、街中華で夕食をとっていると、ここは武蔵小杉のすぐ近くではないかという気がしてきて、何だか不思議な気持ちになります。
(姫路駅にて)
(岡山駅手前で渡る旭川)
武蔵小杉から9本の鈍行列車(一部快速)を乗り継ぎ、13時間16分かけて尾道までやってきたわけですが、思ったほどには疲れませんでした。
これならヨーロッパに飛行機で行くより楽かもしれません。
これは昔に比べて車両がスピードアップしていて、かつシートも良くなった分、乗り心地もかなり改善されているからだと思います。
また、色々な車両に乗ったからよく分かったのですが、古い車両に比べて、新型車両は細かい揺れも少なく、かなり快適でした。
さらに、バスに比べて車内における閉塞感が薄く、途中の乗り換え時間もタイムロスというよりは、気分転換にちょうど良い休憩になりました。
乗換も、かつてのような修羅場といえるほどの競争はなく、落ちついて乗る位置や下車のタイミングをはかれば、座りはぐれることもありません。
ブロンプトンはロングシート、セミクロスシートならドア脇、クロスシートはやはりドア脇ながら背もたれの裏側にベルト固定すればほぼ問題ありません。
(この景色をみると、なぜかすごーく達成感で満ちてきます)
(工事中でしたが、ホームは昔と変わりません)
仮に平日であったなら、通勤時間帯について、朝は沼津~静岡間、夕方は倉敷~尾道間辺りで迎えたのでしょうけれども、席を確保しさえしていれば、乗っているだけですから問題はなさそうでした。
唯一の不満は実験したのが冬場で、岡山県に入ったくらいで日が暮れはじめ、そこから2時間近く車窓をはっきりと確認できなくなってしまったわけですが、目を窓に近付けて凝らせば見えないこともありません。
それに夜行バスに比べれば断然楽しいわけですし、同行者がいるか、文庫本の一冊でも持っていれば退屈することもないように思われます。
何より青春18きっぷを利用したなら、高速バスよりもかなり安くあげられるわけですし、しまなみ海道の出発点であり、瀬戸内の文学と映画の街でもある尾道まで、各駅停車だけで行くなんて、ロマンがあります。
飛行機、新幹線、マイカーを使って尾道まで行ったことがありますが、それらと比べてずっと旅情が豊かな旅でした。
これは、途中の乗り換えと列車内の雰囲気の変遷、そして車窓が大きく関与していると思われます。
想像では面倒で苦しそうに思われますが、時間のある方には一押しの旅ですよ。(おわり)
(速攻でご飯を食べにブロンプトンで走ります。この生活感ある雰囲気がなんともいえません)
(「くうかい」ってそう来るか・・・じゃわたしも「ゆきましょう、お大師さまとともに」あ、これは八十八か所めぐりでした)