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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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高尾山薬王院にブロンプトンをつれて(その3)

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ブロンプトンを高尾山口駅の駐輪場に停め、清滝駅から敢えて寒中のリフトに乗り、高尾山薬王院を目指します。
ケーブルカーではなくリフトを選んだのは、単独行だしケーブルカーは混雑しているようだったからです。
ちなみに、ケーブルカーの方は日本一の急勾配区間が山頂側の高尾山駅手前にあり、その区間は608‰(パーミル=水平距離1,000mあたりの高低差。つまり、1,000m進むうち608m登るということ)斜度に直すと3118分にもなります。
斜度ですが、三角定規から想像すると、90度が絶壁で、45度以下は緩斜面などと思いがちです。
でもスキー場でいうと、30度を超えると一般人には崖のような印象となり、40度以上になると、落ちたら止まらないほどの断崖絶壁という感じです。
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リフト乗り場の方は階段を上がった先にあり、足の悪い人はちょっときついかもしれません。
駅には乗車中の落とし物ランキングが書かれており、スマホ、帽子、財布の順です。
帽子は風で飛ばされたり、財布は切符を買ってポケットへの戻しが甘かったりとわかるのですが、スマホってリフトの上でいじるものなのでしょうか。
おそらくは写真だとは思うのですが。
現代のスキー場にあるような、乗降の時だけ低速になり、中間は高速というタイプではなく、二人乗りの昔ながらのペアリフト。
専門用語では「固定循環式索道」と呼ばれるものです。
スピードが落ちないため、グリーンシーズンのスキー場では乗り降りにちょっとしたコツがいります。
しかしここのリフトは乗降の際に動くベルトの上で腰を上げ下ろしするため、搬器に足をぶつける心配はありません。
しかもこのリフト、雨天対応なのか屋根までついています。
ふだんスキーで利用している身からすれば、古いタイプなのに至れり尽くせりなのでした。
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リフトに乗車して、最初の尾根を越えると山頂までが見渡せます。
そこにパラソルが張ってあって、椅子に腰かけ三脚から構えたカメラマンから「ポーズをとってください」と言われます。
おそらくは撮影されたデータが山頂駅に転送され、リフトを降りたところでお気に召しましたら買ってくださいという商売なのでしょう。
10年前くらいまでは、夏山リフトなどでよく見かけた光景ですが、自撮り棒持参で写真もデータでもらう時代にまだ残っていたのですね。
独りで乗っている私には、声をかけられてもどう反応したものか…。
私なら、下の清滝駅で高尾山のゆるキャラ(キャラムッちゃんとムサ尾)のぬいぐるみや、天狗のお面、山伏の格好を含むコスプレを有料で用意しておき。出来上がった写真はタダで差し上げるという商法を考えます。
貸し出すものを、冬ならサンタ×天狗(両方とも赤いから)のコスプレ、春なら卒業式の和装に勧進帳をもたせるとか、夏であれば風神や雷神、秋は味覚の被り物など、季節感を出せば高尾山リフト独自のサービスとしてリピーターもふえてインスタ映えするし、いま私の前後に乗っている外国人たちには受けると思いますよ。
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そうこうしているうちに山頂側の山上駅に到着です。
リフトを降車したら案の定写真を売っていましたが、軽く頭を下げてスルーします。
そこから200mゆるい坂をのぼるとケーブルカーの高尾山駅です。
麓の清滝駅はケーブルカーの駅が下にあって、リフトの乗り場は階段を登った先にありました。
しかし、山頂側はケーブルカーの駅の方がやや標高が高い、薬王院にやや近い場所に駅があります。
それなら、足が悪いなどの理由があって少しでも歩行を減らしたい人は、運賃同額なのですからリフトよりもケーブルを選んだ方が楽だと思われます。
雨風もケーブルカーならしのげますしね。
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ケーブルカーの高尾山駅から160mで登山鉄道の会社がやっているサル園・野草園の入口を左手に認めます。
登山鉄道の親会社は京王帝都電鉄ですから、この山はお寺と京王のタイアップでやってきた、霊場とレジャーランドの複合施設の観を呈しています。
日曜日ということもあって、参道は縁日のように行き交う人々が絶えません。
さらに90m進むと、タコ杉という根がタコ足のように幾筋にも分かれている杉をみて、そこから280m進んだところで道は二手に分かれます。
向かって左が男坂で右が女坂。
どちらの道を進んでも、250mさきで合流します。
二つの坂の間にあるのは修験道の根本道場。
といっても、仏舎利があるだけでどんな修行を行うのかは謎です。
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男坂と女坂が合流した先では道がほぼ斜面を横切ってゆく平坦な道に変わり、山側に過ぎなえ奉納者の名前がずらりと杉板に書かれて並んでいます。
筆頭が京王電鉄、お次が高尾山電鉄と、この山で商いをしている会社です。
その次が清滝駅にあった金ぴか像の演歌歌手。
どうも彼はこのお山を題材にした演歌を歌っているようです。
その間に、十善戒の説明があります。
十善戒とは、江戸時代に広く流布された仏教における十の戒め、というか善い行いのことで、旧約聖書に出てくるモーセの十戒とは出自がかなり違います。
あちらは神から授かったもの、こちらは仏教の十悪をひっくり返したものです。
ここでの説明は易しくなっています。
たとえば、「不邪淫」(ふじゃいん)は「お互いを尊重しあおう」となっています。
また、「不瞋恚」(ふしんに)は通常怒りを抱かないという意味なのですが、ここでは「にこやかに暮らそう」になっています。
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最後に、「日々の生活で実践して仏の教えを体感しよう」となっているのですが、私なんかは内心で「でも、どうやって」と思ってしまいます。
心がけひとつで人間が変われるのなら、自分の性格上の欠点にここまで手を焼くこともありません。
「怒るな」といわれるよりも「にこやかに生きよう」の方がより具体的だとは思うのですが、そうは思っていても前回書いたように常に実行できることではありません。
そこを「ひたすら祈る」とか「無心になって修行して」そんな自己を獲得するではなく、もっと日々の生活の中でどうするのかについて、具体化してもらえるとありがたいのですが。
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200m先で山門脇を通ると、高尾山薬王院に到着です。
リフトの山上駅からここまで1,180mで、ケーブルカーの高尾山駅からならマイナス200m。
少し早歩きで歩いて15分くらいでしょうか。
道は途中男坂の一部を除いて階段はありませんので、やろうと思えばブロンプトンを曳くことができますが、カバーに包んだまま大本堂で護摩祈祷を受けることでもしなければ、山内では乗れないので大荷物になってしまうと思います。
やったことがある人がいるかどうかは分かりませんが、あえて麓の国道沿いにある自動車祈祷殿で祈願を受けるのではなく、山上の大本堂で護摩祈願が行えるというのも、コンパクトにおりたためる自転車ならではのメリットでしょうけれども。
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なお、かなり昔は高尾山の山内で自転車に乗ることは可能だったそうです。
事実、すべての坂が舗装されている一号路を使用すれば、自転車ならリフトと同じくらいの時間で下山できると思います。
それが、参拝客やハイカーを怖がらせるような走行をする人が出たため、危険防止のため自転車も含め一般車両は通行禁止になってしまったのだそうです。
かつての大弛峠がオートバイの走り屋たちのせいで二輪車通行禁止となったように、いま自転車で走れる場所が心無い人たちのために締め出されないよう祈るばかりです。
 
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境内に入ってすぐのところに歌碑があります。
ボタンを押すと歌が流れる仕組みです。
さては例の演歌歌手の歌かと思いきや、「若いお巡りさん」という古い歌の碑なのでした。
これは作詞者が八王子出身で平成11年に建立されたとかで、しかし碑文を読むとかなりお節介のお巡りさんが、最後は非番の日に女性を鎌倉の海に誘うという内容で、聞いても苦笑するしかないのでした。
なお、演歌の方もちゃんと歌碑があって(2016年建立)、手形に触ると歌が流れるようになっています。
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お守りの授与所を両側に見ながら境内を進んでゆくと、右手に階段があり、その上に仁王門、その向こうには大本堂があります。
ここは真言宗でご本尊は薬師如来と飯縄(いいづな)大権現ですから、それぞれにご真言を唱えましょう。
薬師如来のいちばん短い真言は「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」、飯縄大権現の方は「オン チラチラヤ ソワカ」です。
真言は例によって密教において瞑想しながら一心に唱えることで法理に触れるというものですから、訳や意味をかんがえたりせずに口に出します。
大本堂のさらに上に飯縄大権現社、そのまた一段上に奥の院と参詣し、修行僧たちが暮らすと思しき大本坊の前を通って境内の基部へ下ります。
練習をしているのか、法螺貝の音が聞こえてきました。
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帰りにお守りの授与所をのぞいてみると、先日祈祷後にいただいた自転車用のお守りが、金銀とも1,000円で売っていました。
ここまで歩いてきてお守りを買うのと、ブロンプトンを持ってきて護摩祈願してもらうのと、麓で祈祷してもらうのと、色々な方法があるものだと来た道を戻りながら考えました。
外野からは「利益宗教」なんて揶揄されることもありますが、祈った時の気持ちを大切にすれば、宗教は違っても臨んだ結果は(ひょっとすると本人が予定していたのとは違う形であるかもしれないけれど)与えられるのではないでしょうか。
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いちばんまずいのは、「宗教なんて迷信だ」と、自分で調べようともせずに頭から決めてかかる態度でしょうが、「私は〇〇宗の信徒です」といいながら、お祖師さまの言わんとしたことをちっとも理解しようと努力しないのも、それって信仰なのかと感じます。
また、自分が信じる対象だけを熱心に拝み、他宗教の人たちを小馬鹿にするような発言をするのも、イソップ話の狐みたいに浅薄な考えを晒しているようで慎みたいと思うのでした。
十善戒でいうところの「不両舌」(ふりょうぜつ=他人を仲違いさせるようなことは言わない)ですかね。
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高尾山口駅に自転車を駐輪したのが12時20分。
参拝を終えて下山し、駅から京王線に乗ったのが13時50分ですから、1時間半で大本堂を往復した計算になります。
今回、都合2回にわたって高尾山へ行き、仏教全般についていろいろと考えることが多くありました。
こうした疑問を胸に、答えを探すべく読書の窓を広げようと思います。
そこには、お寺が今後信仰共同体として続いてゆくためのヒントがあると思いますから。
(おわり)
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