旧東海道の旅もはや伊勢の国の半ばまで参りました。
東京や横浜に住んでいて、尺取虫(前回終了した場所から次回はスタートする)方式で旧道の旅をする場合、東海道本線下りの一番列車に乗れたとしても、日帰りは掛川宿から磐田宿あたりまで、つまりは天竜川の東岸が限界ということは、すでに書きました。
そこから西は、新幹線を利用する以上どうしても宿泊して2日なり3日を通しで西進した方が、旅費と旅程のバランスが良くなります。
当然、帰りも新幹線を使った方が、最終日は目いっぱい進むことができ、次回のスタート地点を少しでも西へとずらすことが可能になります。
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(朝6時前の東京駅東海道新幹線改札)Clik here to view.
これまで、往路については東海道線の下り一番列車(品川発熱海行き721Mとその乗り継ぎ列車)や、新横浜始発ひかり493号広島行きについて、かなり詳しくご紹介しました。
ところが、復路の列車についてはあまり詳しくは書いてきませんでした。
計画段階からそうなのですが、旅は出発が肝心でも、帰着はおろそかになりがちなのです。
昔の修学旅行で「帰宅して家の扉を開けるまでが旅行です」と学校での解散時に校長先生が判で押したように同じ訓話をしていましたが、あれは旅の帰り道は疲れているのに心が華やいで、油断が多いから事故に遭いやすいことへの戒めなのでしょう。
それを言うなら、旅立ちの日の朝こそ、前の晩は興奮して睡眠不足だし、学校までの道のりも普段の登校日と違って「心ここにあらず」状態だと思うのですが。
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(開いているのは切符の販売窓口のみです)Clik here to view.
閑話休題(それはさておき)、何度も旅を続けた身としては、復路を充実させた方が、次回の旅がおろそかにならないという感覚を経験として感じて参りました。
もう少し詳しく言うと、復路がひたすら忍耐を強いるような旅程だった場合、その旅全体の印象が窮屈であったような印象が残り、次回旅に出るときに、「また往きはウキウキ、帰りはドローみたいになるのは嫌だな」という気分になるのです。
旅と旅の間隔が半年以上開いているとか、帰りの疲労感がたまらなく好きだという奇特な人を除いて、「行ったらまた帰ってくるのが面倒くさいから旅には出ない」という人は、けっこう多いのではないでしょうか。
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(企画旅行商品の場合、自動改札機は使えません)Clik here to view.
旧東海道の旅の場合、往復が東海道本線の鈍行であろうと、東海道上り便は新幹線であろうと、往路の下り便は早朝で車内はガラガラのことが多く、復路のは午後から夜にかけてになるので車内は満席どころか混雑というケースが殆どだと思います。
これ、例えばハワイや北米、ヨーロッパなどを飛行機で往復するときも同様でした。
往路便は日程によって出発日がある程度ばらけるので、混雑はさほどでもないのに、復路便は皆が週末に帰ってこようとするため、集中して混雑するのです。
3泊5日の旅程を組む人たちと、4泊6日の旅程を組む人たちなら、帰国日が同じならそういうことになります。
だから航空会社でも金曜日から日曜日にかけての日本到着便は、旅行会社への卸値を高めに設定しているのでした。
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そこで、日程にこだわらない専業主婦やリタイアした人たちをどのようにオーガナイズ(組織化)して、団体旅行にもってゆくのかということを、会社の営業企画などでは考えておりました。
大手旅行会社にとっては、航空路線ごとの販売実績が翌年の座席確保と仕入れ値に反映されるため、どれだけ空席を埋めるかが命題になります。
オリンピックイヤーの前年に、開催国、開催都市への団体旅行を数多く組むのも、そんな理由からなのです。
この法則が今も生きているとすれば、特に今年の夏はオリンピックの前年特需が東京にあるはずですが、どうでしょう。
課題は、オリンピックが終わった翌年にあると浪馬は睨んでいます。
長野五輪の時など、宴のあとは本当にひどいありさまでしたから。
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さて、今回話題にする「ぷらっとこだま」という商品は、JR東海ツアーズという旅行会社(子会社ですが、JR東海という鉄道事業者ではありません)の、募集型企画旅行商品です。
このブログを注意深く読んできてくださった方なら、通常の切符と企画旅行商品の違い、分かりますよね。
乗車券や特急券は商法における旅客運送契約に基づく証券です。
それに対して企画旅行とは、旅行業法に定める旅行契約形態の一種です。
ですから、外見やサービス内容は切符とほぼ変わらないのに、あくまでも旅行商品nなのでJR東海が直販することはできません。
旅行会社へ足を運んで募集に応じ、申し込む必要があるわけです。
そしてぷらっとこだまはJR東海ツアーズまたはJTBの支店と一部の協力販売店(サブエージェント)でしか売っていません。
JR東海の営業圏内に住んでいる人なら、JR線の大きな駅に行けば構内に東海ツアーズは入っていますが、首都圏では東京、品川、新横浜、新宿にしかありませんから、街中のJTB支店ということになります。
(なお、電話申し込みも可能ですが、代金支払いに一度はゆかねばなりません)
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(この時間帯ですと、帰省シーズンでもない限り、自由席でも余裕で座れます)Clik here to view.
募集ですから、締め切りもあります。
乗車直前に駅へ行って自動販売機や窓口で、「こんど発車のこだま号でどこそこまで」という感覚で購入するわけには参りません。
「ぷらっとこだま」の場合は、乗車前日までに申し込みから代金支払いまでを済ませておく必要があります。
この締切期限のことを、専門用語で「手仕舞い」と呼びます。
「サァサァお立合い、一生に一度の旅の募集だ、そこのお嬢さん、参加してみませんか?」と両手を広げて街頭販売していたテキ屋のお兄さんが、店じまいするところを想像してもらえばよいでしょう。
旅行代理店というのは、駅の窓口のように夜遅くまで営業しておりません。
仕事帰りに支払いに行くということがなかなかできないのです。
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えっ、前日までに窓口支払いなんて、クレジットカードの御世に何寝言を言っているの?
いまやチケットレスの「スマートEX」の方が面倒はないだろうって。
マァマァお客さん、もう少し辛抱して先を読んでくんなせい。
(なんだか私まで膝栗毛に出てくる物売りの気分が筆に乗り移ってしまいました)
もちろん、切符やチケットレスサービスにはないメリットがあります。
それは売る側で自由に値決めできること。
企画商品ですから、企画側に価格決定権があり、運賃のように値上げするときに運送約款を改正する必要はありません。
(民法を読めばわかりますが、定型約款を改正するには手続きが煩雑で規制もあります)
そして「ぷらっとこだま」という商品は、国鉄が分割民営化され、JR東海が誕生した3年後の1990年4月、JR東海ツアーズ発足当初から存在するロングセラーなのです。
これは上述の航空会社と同じように、ひかり号、のちにはのぞみ号が販売好調なのに対し、空席の目立つこだま号の座席をいかにして埋めるかという命題から産みだされた旅行商品なのです。
航空機と違って格安チケット(金券ショップやコイン商へゆけば、回数券のばら売りをしてますが、あれは事業者のお墨付きはありません)のほぼ存在しない東海道新幹線にとっては、唯一といっていいほどの割引商品なのです。
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ではどれくらいお得なのかといいますと、下表のようになります。
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東京と静岡、浜松間は同じこだま号との比較になることが多いため、時間的なことは関係ありません。
しかしそれ以遠となると、「なんだ、こだま号ってひかり号やのぞみ号に追い抜かれる待避待ちをあちこちの駅でして、ひどい時は2本も3本もあとからくる列車に抜かれるがゆえに、のぞみ号に比べて東京~名古屋間でおよそ1時間、東京~京都・新大阪間でだいたい1時間半も余計に時間がかかるのに、これっぽっちしか割引にならないのか、時は金なりの現代にはそぐわない」という忙しい方々の不満が聞こえてきそうです。
いやいや、「ぷらっとこだま」には駅の売店で使用できる1ドリンク引換券もついていますよ。
そんなサービスでは割に合わないですか?
でも、あちこちがIT化されつつある現代、時そのものが金の時代から、どんな時を過ごすかが時の価値を決める時代にシフトしつつあると思いませんか。
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新大阪は少し遠いから無理ですが、1時間早起きして始発のこだまで東京を発てば、ビジネスマンでぎゅうぎゅうののぞみ号を尻目に、珈琲でも飲みながら薄い文庫本の1冊でも読めるというものです。
それで名古屋での10時の会議に余裕で間に合うのなら、これもプチ・エクストリーム出張の一種です。
こだま号に乗ることで、のぞみ号の車窓から見落としていた何かを発見するかもしれません。
もしその会議で報告や発表を求められているなら、話のつかみのネタをゲットできるではないですか。
それに、往復したなら差額で次回の出張のビジネスホテル宿泊代を浮かせることくらいができますよ、と。
ああ、また旅行会社時代の営業根性が出てしまいました。(つづく)
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