(日曜の朝に住民でもないのに神泉から乗るなんて、遊び人みたいです)
薬王院の自動車祈祷殿を目指し、前回は高尾山口まで辿り着いたものの、タイムオーバーで何もせずに帰ってきてしまった私。
年が明けて落ち着いた頃、今度は日曜の朝のミサ帰りに、再び電車で高尾山口駅を目指すことに致しました。
ミサが終わるのが9時。
教会から一番近い井の頭線の神泉駅へブロンプトンで向かうと、9時9分発の吉祥寺方面各駅停車に間に合いました。
なんぼ近いとはいえ、650mの距離を9分では歩けません。
それに、神泉駅なんてお隣の駒場東大駅とともに、沿線住民でもない私には、普段絶対に利用しない駅ですから、どこに入口があるのかさえまったく不明なので、歩いて行ったところで迷ってしまう可能性が大きいのです。
(下北沢駅井の頭線下りホーム 京王沿線ではおなじみのカレースタンドC&Cがありました)
井の頭線は、両端の駅にあたる渋谷、吉祥寺とも、終端方向に改札口があり、下り、上り列車とも、始発駅に近いほど後部車輛が混雑して先頭車両方向が空いており、逆に終着駅が近いほど、先頭車両が混雑して後方車両が空いている、というのは、滅多に乗らない私でも知っています。
神泉駅は、渋谷駅の次にあたりますから真ん中より前の車両から乗ったら、日曜の朝ということもあって座れました。
ところが、明大前で降りてみると京王線の乗り換えは最後尾です。
やれやれ、各駅停車だしどこも空いているのだから、後ろに乗れば良かったと思うのでした。
(こちらは京王線側のホーム。下りホームは上りホームほど狭くはありません)
明大前駅の井の頭線ホームは掘割の地階にあり、改札口が地上階、そして京王線のホームは築堤上の0.5階にあります。
それぞれの線路の間に空間がサンドイッチされているとでもいいましょうか。
以前、明大前の駅下をブロンプトンで南から北へ通り抜けた時、ゆるい登り坂だけで線路を横断出来、東西に井の頭線を越えた時も同様だったので、わりと古い駅(京王線の開業は1913年、井の頭線は1933年で、当初は「火薬庫前」という物騒な名前の駅なのでした)にしてはうまくつくってあるなと感心したものです。
ところが電車で乗り換えてみると、井の頭線から地上階まではエスカレーターがあるものの、そこから京王線へは上下ホームそれぞれに一基のエレベーターがついているだけです。
乗り換え客の多い駅で、これは少し辛いものがあります。
このように、普段乗りなれない路線にブロンプトンをつれて乗ると、将来足が悪くなったときのシミュレーションをしている気分になることがあります。
そして、やたらとバリアフリー表示を確認するようになりました。
(京王八王子行きの特急なので、北野で高尾山口行きに乗り換えます)
乗り換えた電車は明大前9時26分発の特急京王八王子行き。
けっこうな混雑で、ドア際にブロンプトンを寄せることもかないません。
首都圏における日曜日の下り電車なんてどこもガラガラだろうと高をくくっていたら、見事に裏切られました。
幸い、目の前の席がすぐに空いたので着席できたものの、どこまで混雑しているのか観察してみました。
ちょうど週末で競馬の開催時期だからか、東府中(京王競馬場線の乗り換え駅)に臨時停車するとアナウンスしています。
そうか、多摩川の両岸を走る南武線と京王線は、週末はギャンブル路線の性格もあったのだと思いながらも、東府中ではたいして人が下車しません。
あれ?と思っていると、ドヤドヤと降車したのは京王下り電車が多摩川を渡って左岸から右岸に移った直後の、聖跡桜ヶ丘駅でした。
ここは京王百貨店を中心とした、多摩市における商業中核拠点ですが、それにしても日曜の朝からこんなに人が降りるのは驚きです。
(高尾山口駅前ロータリーに進入する神奈中バスの相模湖駅行き)
次の高幡不動駅でも、大勢の人が降りました。
こちらは分かります。多摩動物園と、多摩都市モノレールの乗り換え客でしょう。
ここで、電車は漸くガラガラになりました。
あとは一般客に混じっていかにも登山客みたいな人がちらほら乗っているだけです。
北野駅でお向いのホームに停車している高尾山口行きに乗り換えたのは、殆どがその登山客たちでした。
そして10時12分高尾山口駅到着です。
ここまで、2回乗り換えたにもかかわらず、渋谷から1時間と3分しかかかっていません。
しかも、改札口を通り抜けるときに確認したら、運賃は360円でした。
なぬ?ちょっと安すぎませんか?
JRで新宿から高尾まで乗ったら550円しますよ。
うーん、前回向かい風を突いて必死にここまでブロンプトンで走ったのに、1時間ちょっとで360円とは、鉄道の偉大さを改めてかみしめるのでした。
(大垂水バス停で下車すると、御覧のとおりの雪です)
乗り換え時間が2分しかないため、いそいそと駅前のロータリーへ。
今日は高尾山口駅前から、10時14分発相模湖駅行きの神奈中バスに乗って大垂水峠へ行きます。
先日までブログに書いていた山梨・長野県境の大弛峠は「おおだるみ」で、こちらは「おおたるみ」でして、国道20号線の都県境にあたり、標高は392mになります。
その昔はローリング族のメッカで原付の通行が規制されていた時期があったことは、大弛峠のお話の中で書きました。
なんでそんな場所にブロンプトンで行こうと思ったかというと、冬は富士山がきれいに見えることと、峠直下に美味しいラーメンを出す店があるのを知っていたからなのでした。
(国道20号線の大垂水峠。御覧の通り眺望は効きませんが…)
いや、聖餐にあずかるために朝から何も食べていないので、ミサの後ってお腹がすくのです。
だから、大垂水峠で富士山を眺めながら早めの昼をいただき、そのまま薬王院の自動車祈祷殿にブロンプトンで乗り付けて安全祈願をしてもらい、最後に高尾山に登ってお参りを済ませて帰るという算段でした。
以前の自分なら、「そんなことやっていると神様からぶっとばされるぞ」と内心思ったものですが、今は「目的もはっきりしているし、あの方なら分かってくださる」に変わってしまいました。
(僅かに神奈川県側へ下ると、富士山が見えてきます)
(冬の白富士は格別です。あースキーがしたくなってきた。手前が富士屋さんです)
高尾山口駅前の相模湖駅行きバス停には、既に15人ほどのハイキング客が並んでいます。
自分と同じように、このバスで大垂水峠まで行けば、高度が稼げるため高尾山裏手の尾根筋に50分ほどで取りつくことが可能で、(小仏)城山(標高670m)まで1時間30分で登ることができます。
小仏城山からは相模湖越しの富士山が望めます。
これが高尾山口から徒歩だと2時間、ケーブルカーを利用しても20分城山まで余計にかかります。
ケーブルカーは運賃が片道480円、対するバスは250円ですから、要領よく登るならこちらでしょう。
もちろん、尾根に出たところからそのまま高尾山へ下ってゆくことも可能です。
(向かって左手の流しで、配水されています)
バスは10分以上遅れて駅前に入ってきました。
ここから、相模湖行きのバスは一日3本しかありません。
なんで東京都内に神奈川中央交通のバスが?という疑問も当然に湧きますが、その話は長くなるのでまたの機会に。
全員が乗車すると国道20号線を登ってゆきますが、途中から路肩に雪を認めるようになりました。
時刻は10時を回っているので、さすがに路面凍結はないでしょうけれど、これは雪が降ったあとに違いありません。
(ここから見える富士山の写真ですね)
大垂水バス停で大半のハイキング客とともに下車し、国道20号線を峠まで380mほど上ります。
峠を越えると、向こうに雪をいただいた富士山が姿を現わしました。
晴天下に真白き峰で、やっぱり富士は冬が良いです。
そして峠のすぐ先、相模湖側のその名も「富士屋」さんへ。
もともとあった食堂の建物の脇の小屋で、朝9時から18時までの間営業しています(水曜定休)。
目玉はお店の入り口にも明示されているように、一日30食限定のチャーシューメン。
なお富士屋さんは車で通ってくるファンも多いので、週末混雑が予想される場合は、相模湖駅発8時39分、大垂水到着8時55分の神奈中バスで来た方が、売り切れの心配がないと思います。
ブロンプトンがあれば、下りは「どちらへとも御随意に」ですから、好きなだけ富士山が眺められます。
(ガムの自販機の隣に、猫用のマタタビの枝を売っていました。マタタビって樹だったんだ。)
店内に入ると、お約束の芸能人の色紙の中に、ラーメン評論家が混じっています。
やはりその筋の人たちには有名なんだ。
ほかに富士山の写真、そしてさほど大きくはないものの古い柱時計と、国道20号線沿いなのに山小屋の雰囲気が少し入っています。
懐かしいのは、ガムの自販機。
中身は今の商品ですが、昔は緑色やペンギンに三日月の絵が入ったデザインのガムを買ってもらいました。
そういえば、大人になって滅多にガムなど噛まなくなりました。
なぜでしょう?
(こちらが命の水です)
そして、先に出されたお水は山から引いている湧水です。
一口含んでその優しく美味しい味に驚きました。
何だろう?
まろやかで、エビアンとは全く違うごく仄かな塩気があるというか。
お店の入口に蛇口があり、「どうぞ無断でお持ちください」と書いてあって、ポリタンクで汲みに来ている人を見かけたこともあります。
東京のこんな近くに名水があったとは、あちこちの林道を走ってきた自分にとっても、まさに「燈台もと暗し」でした。
この水の由来はというと、昭和8年、というからかなり前のお話です。
国道の整備に伴って水源が途絶えてしまうので、この家専用の水源を山から引いてもらったのだそうです。
以来、先代からこの水を使っているそうですが、化粧水は不要になり、病気とも無縁、水やりに使うと花が驚くほど長持ちするなど、かなり良い水らしいです。
もちろん前述のラーメンも、出汁無しでこの水を使用するそうで、いやが上でも期待は高まります。
(つづく)