仕方なく新しいカメラを買いました。
むかし、まだデジタルカメラの無い時代、海外旅行に行くのにカメラは重くて嵩が張りました。
その頃の海外における日本人男性観光客のステレオタイプなイメージといえば、背広にメガネ、出っ歯の小男で、かならず胸の前に一眼レフを下げているといった具合でした。
カメラは壊れやすいから本体はケースに入れなければならなかったし、海外ではなお一層のこと高価なものでしたから現地で盗難に遭う心配もありました。
また、フィルムも高価で自分のように当時の共産圏の国へ行く場合、現地でのフィルム調達が困難で、かつあちらの空港における荷物検査機のX線が強烈だとかで、必ず専用の袋に入れて鞄に詰めたものです。
現像料も高いから失敗写真はゆるされないので、シャッターだって構図をきめて、絞りや焦点を合わせてから、慎重にきったものです。
それに比べれば、デジタルカメラが主流になった現在、旅行に持ってゆくカメラとその周囲のアイテムはコンパクトになったと思います。
以前も書きましたが、ブロンプトンをつれてゆく旅の記録用としてのカメラは、次のような要件を満たしている製品が望ましいのです。
1.とにかく軽量でコンパクト
写真を撮るということに焦点をあてれば、ミラーレスの一眼レフということになるのでしょうけれど、三脚を装備して走るわけにもゆかず、また走行しながら身につけていても邪魔にならないという点で腰のベルトに付けられるコンデジの方が有利です。
またブロンプトン同様、なるべく立方体に近い形、すなわち撮影しないときはレンズの突起が収まる方が、身体に当たらなくて楽です。
(鉄道利用の際、車窓マニアの自分は、さっと出してぱっと撮ることが多いのです。この場所は、松本清張「砂の器」の舞台となった、勝沼~塩山間の風景です)
2.自転車に跨りながら、さっと取り出してシャッターを押せる
自転車の場合、良い作品を撮るということは二の次にしても、距離を走って色々な場所で様々な構図の写真を撮りたいと私の場合はなってしまいます。
一日のうちで光の加減が良い時間というのは限られていますし、あっここは良い景色だと思った途端に取り出してシャッター―を押すということをよくやっています。
簡単に緩めたり締めたりできる肩掛けベルトに一眼レフも試してはみたのですが、ショルダーバッグやインカムなどをつけていると、どうしてもこんがらがってしまいます。
(撮りたいのは、遠くの景色とは限りません)
3.広角レンズであること
やはり景色を撮影する場合は、広角レンズの方が有利です。
カメラの機能表でいえば、焦点距離の幅が広く、かつワイド(広角)側の数値の低い製品です。
ブロンプトンに乗っている場合、もし対象をアップで撮るのなら、ズームレンズを使うより被写体まで自転車で寄せてしまった方が早かったりします。
また、望遠で遠くの山を撮ろうと思ったら、一眼レフでも替えのレンズや三脚が必要になってくるので、コンデジについている3倍程度の光学ズーム機能を使う範囲内で収めるようにしています。
4.明るいレンズであること
機能表の開放F値ができるだけ小さな数値の製品です。
景色は外でフラッシュを焚かずに撮る場合が殆どですし、三脚や外部にライティングが無い田舎へ行くこともある以上できるだけ明るいレンズのカメラであれば、光量が不足していてもぶれにくいということになります。
特に早朝や夕方などは、重宝します。
同様に、なるべく発売日が新しく、大型センサーを搭載したデジカメの方が、撮影できる時間帯がのびます。
(秋の早朝、4時半ごろの街灯が少ない場所で)
5.電池の持ちがよく、充電が簡素に行えること
長旅や海外旅行など、カメラ周りの荷物をできるだけ少なくしたいものです。
昔のアナログカメラであれば、乾電池でよかったものを、今は充電器や、行き先によってはアダプターに変圧器と、どんどん荷物が増えてしまいます。
その点、コンデジなら日の出から日没まで使いたおしても、2,3日は充電しないでも持ちますから、助かります。
また、SDカードも容量が大きくアクセスの早い製品を選んだ方が良いでしょう。
ということでコンパクトデジタルカメラのなかから次の2つの製品に候補を絞りました。
・CANON PowerShot G7 MarkⅡ
・SONY Cyber-shot DSC RXM3
(街灯のある場所だと、夜でも紅葉がはっきり映ります)
撮影を本職にしている方からは、ファインダーのついている後者を勧められたのですが、いままでずっと使い慣れてきたキャノンの製品を選びました。
箱から出して真っ先に感じたのは「レンズでかっ」です。
これまで自分が使ってきたコンデジのレンズに比べて、本体からはみ出さんばかりの径にびっくり。
これで交換が可能なら、まんまミラーレスになってしまいます。
実際に撮影してみると、これまで使ってきたコンデジに比べて、さらに一眼レフに近づいているような気がしました。
また、同じF値のレンズでも、真夜中における夜空の雲まではっきりと映るようになり、センサーが大型化して感度が格段に良くなっていることを実感しました。
カメラをやる人からは敬遠されてしまうコンデジですが、自分のような一般ピープルには、持ち運びしやすく、扱いやすく、かつ撮れた作品も十分に満足のゆくレベルでした。
これが五万円程度で購入できるとは、デジカメが世の中に出てきたころ、35万画素のカメラでこの倍近くの値段がしていたことを思うと、隔世の感があります。
自分のように、どこかにアナログへの未練を残している人間は、これで小さなスケッチブックと色鉛筆も持って行き、夜の宿で写真を見ながらお絵描きしつつ、お酒をちびちびやるなんて面白いかもと考えてしまうのでした。
あ、そんなことをしたいのなら、今はフォトショップで加工する方が早いのでしたね。
なお、今回の写真はすべて新しいコンデジで撮影された写真ですが、明後日次回に投稿される写真は、7枚のうちの5枚が一眼レフで撮られた写真、残りの2枚がコンデジで撮影された写真です。
どの写真が一眼レフで撮影された写真か、区別がつくでしょうか。
ヒントは「被写体深度=ピントの合っているようにみえる範囲、の深さ」です。
やはり、コンデジはどうしてものっぺりした写真になってしまう気がします。