バスタ新宿からおよそ2時間、16時50分に双葉サービスエリアに到着し、ここで20分の休憩になりました。
20分とは微妙です。
もし食事をしようとしたら、注文してからの待ち時間も含め、最長でも15分くらいしかありません。
うどんやそば、カレーライスくらいならかき込むことも可能ですが、夕食としてはどうなのでしょう。
そういえば、バスタ新宿には駅弁ならぬバス弁が売っておりました。
あれも、バスのシート幅から考えて隣に人が来ないという条件でなら買って車内で食べるのもありなのでしょうが、バスが出るまで隣に人が座るかどうか分からない状況では、買うのに躊躇します。
かといって、もう乗ってこないと分かった中央道のここ双葉サービスエリアでは、バス弁は販売しておりません。
その点たとえば東海道新幹線の「のぞみ」であれば、新横浜を出たら次の名古屋までは確実に隣の席が空いているわけですから、ゆっくりと車窓を見ながら駅弁を堪能できます。
仕方がないので、トイレを済ませたのちはサービスエリアの隅にある展望台にあがって、残照の中でシルエットとなっている南アルプスや茅ヶ岳、八ヶ岳をぼんやり眺めておりました。
すると、夕焼け小焼けのチャイムが17時を告げ、この展望台が17時閉鎖と書いてあったのを思い出して、慌ててバスへ戻るのでした。
うーん、やはり旅を楽しめないのです。
さて、日が暮れてしまえばもう車窓を眺めることはかないません。
他の人たちは何をしているのだろうと見回してみると、ほとんどの人は床下のコンセントにつないだスマホに見入っています。
前の座席背面のポケットからパンフレットを出して読むと、「無料のWi-Fiサービス」の文字が躍っており、なるほどこれか…と納得するのでした。
これが仕事であれば、薄型のノートパソコンでも出してきてブログの続きを書くのでしょうが、あいにくそんな器用さは持ち合わせておりません。
これらの文章だって何年、何カ月もあとに思いだしながら書いているのですから。
お腹もすいてきて眠ることはできそうにもないので、本を読むことにしました。
京都の大垣書店本店で買った今井友信著「西洋哲学史」(講談社学術文庫)
これなら眠れそうだと思ったのに、逆に夢中になってしまいます。
中央道では、途中諏訪インター手前あたりが工事車線規制で混雑していました。
また、読書自体、高速道路を走っているときは問題ありませんでした。
途中梓川サービスエリアで二度目の休息をとりました。
時刻は18時半で今度は15分間。
やはり夕食にはありつけそうもありません。
いつものことなのか、大阪や名古屋から長野へ向かう同じアルピコ交通のバスが3台並んでいるのを撮影しました。
途端に、コンデジのレンズが中途半端な場所で停止して戻らなくなり、元には戻らなくなってしまいました。
電池を入れ直しても、電源ボタンを長押ししても駄目です。
これ、もう10年近く前のモデルだし、これまで酷使してきましたからもう寿命なのかもしれません。
これも、散々高速バスを敬遠してきた祟りでしょうか。
仕方なくそこからはスマホのカメラを使用することに相成りました。
しかし、こちらも古色蒼然たるiphone5です。
休憩を終えてすぐに、バスは安曇野インターから下道におりました。
すると、途端に本が読めなくなりました。
やはり下道では信号が多くてストップ・アンド・ゴーが頻繁すぎるのと、ぐるぐるとバスが大きく曲がるため、本を立てて読んでも目が回ります。
それに、各バス停に停車するたびに大きくUターンすることもあります。
これまで、一部区間を除いて高速道路を順調に走って来たのに、下道はもどかしいほどゆっくりになりました。
この付近は安曇野と呼ばれる水田地帯ですが、国道沿いにはお店のネオンが並び、車の量も多いのでした。
昔とは比べられないほどにぎやかになった国道147号線を眺めながら、バスは定刻通り19時36分に信濃大町駅に到着しました。
なお、並行する大糸線は本数が毎時1本程度(時間帯によっては3時間近くあく場合も)のため、乗ってきたバスの高速区間以外、たとえば信濃大町駅前から白馬町(白馬駅前)の乗車はできるのですか、と電話ついでに聞いてみたら、新宿から中央道八王子までの区間は乗車専用、安曇野スイス村から終点までの区間は降車専用なのでご利用できませんとのお答えでした。
このバスは、地域内輸送には役立っていないみたいです。
ひょっとしたら、法律で規制されているのかもしれません。
これでは、仮にバスが新宿を出た直後に忘れ物に気付いて「三鷹とか日野で降ろしてほしい」と頼んでも、安曇野まで行ってJRで東京へ戻ってくださいということになってしまうのではないでしょうか。
今回、高速バスを利用してみて思ったことをまとめます。
〇かつてより良くなった点
1.車両 一席当たりのピッチが伸びたこと、乗り心地の向上、読書灯も役立ちました。
2.定時性 夕方の混雑もあったけれど、ほぼ定時にて走りました。(ただし、道路状況によって遅延する場合がある旨の放送はしつこくなされていました)
3.積載性 ブロンプトンは何の問題もなく積めました。
4.経済性 何といっても運賃が安価です。
●改善の余地がありそうな点
1.居住性
昼間運行のバス便でも、運賃がもう少し高くなって良いので席数を減らして1席あたりのスペースを増やしてほしい。もしフル乗車だったら忍耐の旅になるとおもいます。バスは鉄道に比べて増車増便が容易ですから、コストを運賃に転嫁してでもやってほしいのです
2.高速道路サービスエリアでのお弁当の販売
小淵沢には丸政、松本にはイイダヤ軒という有名な駅弁屋さんがあるのですから、中央道のサービスエリアでも売ってほしいものです、道路公団さん。
3.地域内輸送
法律で縛られているのかもしれませんが、信濃大町駅に到着した時点で乗客の半分以上が下車していました。
ということは、高速バスは終点が近くなればなるほど、空席率が高くなります。
過疎の路線バスは壊滅していて、他の交通手段も限られているわけですし、そこから白馬まで乗れると助かるのですが。
なお、旅情の無さ、車窓のつまらなさは如何ともしがたいと思います。
夜行の高速バスに人が流れているのは、旅というよりは移動に焦点をあてている人が多いからかもしれません。
途中の景色を楽しみたいのなら、やはり鉄道にはかないません。
これは、高速バスよりも高速道路というものの性格に原因があると感じました。
道路というものは高規格で自動車専用に振ったものほど、「モノついでに人」を運ぶインフラなわけですから。
そのことについて、今回高速バスに乗る機会を得て、道路について色々と考えさせられました。