出発当日、仕事の2時間前に新宿へブロンプトンで走って行き、バスタ新宿を観察しました。
いつも走っている南口の対面からエレベーターで4階へ。
予約番号を言って運賃を支払い、チケットを受け取ったのですが、何だか飛行機のチェックインカウンターみたいです。
カウンターの前はこれまた椅子が並んで空港そっくり。
あまり大きくないけれど、コンビニとお土産屋さんがあります。
けれどもテナントの関係なのか、新宿中村屋さんの製品が見当たりません。
新宿土産といえば、カリーあられでしょう。
その代わり、羽田空港でもおなじみの御菓子が並んでいます。
外へ出るとバスが時計回りに一周できるようになっており、その外側にそれぞれの方面へ分かれてバス停が並んでいます。
バス停へは、バスが横付けし、そのまま周回しながら階下へと下るようになっています。
そしてバスの進入路と退出路が別々に分かれています。
なるほど、現代のバスターミナルです。
昔は誘導員が笛をくわえて旗を振りながらバスがバックするのを手助けするのが一般的でした。
バスターミナルは新しくなっていますが、バスの方は如何に?
その日は仕事を早めに切り上げて、14時半にバスタ新宿へ戻りました。
お手洗いを済ませたらやることもないので、15時05分発の白馬行きバスが出るC7バス停前で待ちます。
このバス停は飯田や伊那、駒ケ根などの南信方面、松本、安曇野、白馬などの中信方面、佐久や小諸など長野県のどの地域へ行くバスもここからのようでした。
やがてお目当ての5509便安曇野・白馬行きのアルピコ交通バスが入ってくると、タブレット端末を持った係員が出札業務をはじめます。
確認が終わると荷物を積むのですが、ちゃんとトランクが安曇野~信濃大町で下車する人と、白馬まで乗る人とに分離されていました。
私は信濃大町で下車するので、手前で降りる人のためのトランクの一番奥へブロンプトンを押し込みました。
もちろん、カバーもかぶせてあるので何も言われません。
車内へと足を踏み入れると、指定された座席は5列目のA席でした。
5列目を前方と呼ぶかどうかは微妙ですが、3列目と4列目は女性専用のシートになっており、最前列は乗務員用とかで、小さな熊のぬいぐるみが鎮座しておりました。
座席ですが、私が添乗員時代にお世話になっていた55人乗りスケルトンタイプよりは全席との間隔、すなわちシートピッチが格段に長くなっているように感じました。
子どもの頃の観光バスなんて、前席を倒すと胸に迫ってくるような感じで、こちらも倒さないと空間が確保できなかったものですが、あれに比べればはるかに良くなりました。
シートの横幅ですが、これも若干は広くなっているようです。
小さいけれど、フットレストまでついています。
ただ、縦の間隔よりは微妙に広くなっているという印象で、隣の席との間に可倒式のひじ掛けはあるものの、知らない人と夜行バスで隣り合わせたら、同性異性に関わらず落ち着かないだろうなと思いました。
事実、バブルの頃のスキーバスでは隣が友だちでも、夜中に身体がビクッと動くたびに目を覚ました記憶があります。
若いからあれでもよかったし、翌朝から全力で滑っていたけれど、この歳になって同じようにできるかといわれれば疑問です。
このような事情から、3列独立シートが流行っているのだと思います。
なお、バスは出発時刻が中途半端にもかかわらず、通路を挟んで2×2の4列シートについて、一人旅の人は隣が空いていて、2人以上のグループは隣同士でというような感じで、最後列まで2席とも空いている場所はほとんどありませんでした。
私の隣も空いていましたが、途中のバス停から乗ってくる可能性もあります。
このバスは15時05分に新宿を出て、穂高には19時01分、信濃大町には19時36分、白馬には20時13分に着きます。
向こうで夕食を取るにはぎりぎりの時間です。
途中サービスエリアで休息の際に食事をする時間が現実的にあるかどうかも、今回確認するつもりです。
なお、新宿15時ちょうどのあずさ21号に乗ると、松本には17時48分に到着し、大糸線に乗り継いで穂高18時27分、信濃大町18時53分、白馬には19時40分とバスよりも45分から30分ほどしか早く着くことができません。
これは、松本から先の乗り継ぎが時間的に良くないことによります。
これで高速バスが新宿白馬間4,200円に対し、JRのあずさ利用は運賃5,400円+指定席特急券2,900円の合計8,300円と倍近くしてしまうのですから、勝負にはなりません。
仮に青春18きっぷの利用期間だったとして、15時07分の中央特快に乗って鈍行を乗り継いだとして、穂高20時45分、信濃大町21時12分、白馬至っては乗り継ぎが悪くて22時41分到着と、バスより安い2,370円でもどうかなという所要時間です。
だいたい、乗り継ぎを優先する条件なら新宿発15時37分でも変わりません。
また、東京駅を15時04分に出る北陸新幹線なら長野16時49分着で白馬駅なら18時20分(信濃大町行バスはありません)で、新幹線の運賃料金8,200円にバス代の1,800円が加わってちょうど1万円でバスより1時間20分早く着くということですから、こちらも微妙です。
そう考えると、大糸沿線へゆくのなら高速バスが俄然有利になってきます。
さてバスタを専用の出口から出たバスは、左折して甲州街道を西へ向かい、走り出してから10分とかからずに初台のランプから首都高速にのります。
バブル期のツアーバスなんて、高速代を節約するためなのか調布や、ひどい場合は八王子まで下道を走ってゆきましたが、その点に関して路線バスは安心です。
さて、中央道三鷹、日野、八王子の各バス停に立ち寄りはしたものの、誰も乗車してきませんでした。
タブレット端末で確認しているのなら、無人のバス停は通過してもよさそうですが路線バスではそうも参りません。
たとえば、予約なしでバス停に来て接近してくるバスに手を挙げたら高速バスには乗れるのでしょうか。
答えは、空席がある限り可能です。
ひっくり返せば、満席の場合は乗れません。
新宿白馬線の場合、バス発車時刻の10分前までネット予約は受け付けていますから、クレジットカードで決済するなり、付近のコンビニで支払うなりすれば、予約乗車は可能です。
けれども、その時間もないというケースでは、空席があれば乗せてもらえるのです。
この場合、途中のバス停からでもちゃんとトランクに荷物は入れてもらえます。
ブロンプトンで地方を走っていて、近くに鉄道駅はないけれど高速バスの停留所がある場合、この手が使えます。
さて、自分が乗車した高速バスは夕陽を追いかけるように中央道を西へ走ります。
気分はユーミンの「中央フリーウェイ」です。
あ、でもあれはオープンカーでしたっけ(笑)
もちろん、マイカーで何度も走っている道でもあるのですが、自分で運転しなくていいのは楽です。
車の運転が楽しいという人の気持ちも分からないではないですが、最近は道路にイライラした方がたくさん走っていて、やれ煽られただの幅寄せされただのとトラブルが蔓延しているみたいに報道されています。
しかし、昔からああいうのはありました。
車を造っている人や売っている人はそんなこと絶対に言いませんが、自動車とかオートバイという乗り物は人の心を煽るような性質を持っているのではないかと思います。
自由だといえば聞こえは良いですが、自分勝手な自己が前面に出てしまうような乗り物は、どうなのでしょう。
いまや自動運転化が喫緊の課題みたいに言われていますが、もっとずっと前から、こうなることは分かっていたような気がします。
もちろん、車が悪いのではなくてそれを運転する人の心の持ちようだとは思います。
けれども、現実に起きていることから出発し、どうしたら心穏やかに運転できるのかについての議論や書籍はまだまだ一般的ではありません。
選択肢の一つに、車を運転するのを諦めるという方法があると思うのですが、こうして高速バスに乗って車窓を眺めているというのは、ある面では自動運転の運転手体験と同じことです。
その車窓ですが、バスはマイカーよりも車高が高いので、防音壁の向こうまで見えるはずだと思っていました。
しかしながら、八王子までの殆どの区間と、甲府盆地の西側の人口密集地は高い壁に阻まれて車窓は殆ど空しか見えず、それ以外の区間も下半分から三分の一程度が壁です。
鉄道の車窓とは比ぶべくもありません。
それに、駅も無く、インターチェンジにはさして特徴もない高速道路というものは、車窓の愉しみが殆どありません。
これならまだ、都内~勝沼、甲府昭和~小淵沢以外は中央道が開通しておらず、それ以外の区間はオール下道の国道で山梨長野県境の国界橋を渡り、諏訪湖畔を走って塩尻峠を越えた、かつてのスキーバスの車窓の方がよほど面白かったように感じます。
高速バスに旅情が無いのは車窓がつまらないのが原因ではないでしょうか。
それに、自動運転機能が果たされるようになったところで、運転手は前を見続けていなければならないでしょうから、高速道路走行は余計に退屈なものになるような気がします。
そして、どうして高速道路の車窓はこうも単調でつまらないのでしょう。
新幹線と比べてもかなり落ちると思います。
それは道の使い方や、道と人との関係にあるのかもしれません。
ああ、俄然真面目な交通心理学系の本が読みたくなってきました。
(つづく)