Quantcast
Channel: 旅はブロンプトンをつれて
Viewing all articles
Browse latest Browse all 932

Chariots of Fire (炎のバイカー)

$
0
0
駅伝のシーズンですね。
浪馬は中高生の頃、年がら年中毎朝校内を走っておりました。
学校でクラス対抗の駅伝大会が毎年ありまして、遅いと格好がつかなかったもので。
2月だったか寒稽古もあって、武道系は苦手なのでやはりマラソンに参加していたのですが、冬の朝は真剣に走ると、粘膜の状態からなのでしょうけれど、喉から血の匂いがしてくるのです。
当時学校の周りは畑がたくさん残っていて、冬場は空気も乾燥していて埃っぽかったので、走れば余計にゼイゼイと喉から喘息のような音を出していました。
それでも、あの頃に走るのをやめようと思ったことはありませんでした。
イメージ 1

 
高校生になったころ、「炎のランナー」(原題“Chariots of Fire”)というイギリス映画(1981年公開)が上映されまして、友だちと映画館へ観に行きました。
キリスト教の宣教に燃えて走るエリック・リデルと、ユダヤ教徒ゆえの差別と偏見に反骨精神を燃やして走るハロルド・エイブラハムスが主人公で、2人がパリ五輪に出走し、レースに勝つまでの戦いを主に描いています。
「神のために私は走る」と言い切るリデルに、「くぅ~カッコよすぎる」と当時は心酔したものです。
一緒に観た友だちは、映画の中のブリティッシュ・トラッドを絵に描いたようなファッションに目を奪われていたようですけれど(笑)
 

あの映画、冒頭は1978年の追悼礼拝シーンから始まります。
そのスピーチは
...and remember those few young men...
...with hope in our hearts...
...and wings on our heels.
(「心に希望を、踵に翼をもったかつての私たち、若者らを、どうか記憶にとどめて欲しい」)という言葉で締めくくられます。
そこから19世紀前半の、主人公たちが活躍した時代のシーンへと移り、ヴァンゲリスの主題曲とともに、有名な海辺の砂浜を集団で走る映像がオーバーラップします。
(あの場所は、ゴルフの全英オープンでお馴染みのセント・アンドルーズです)
そして最後は、イギリス人なら誰もが知っている「エルサレム」を歌う聖歌隊を背景に、再び追悼式典のシーンに戻って終わります。
そもそも映画の原題は「エルサレム」(Jerusalem)の歌詞であるW.ブレイクの詩の文言(「炎の戦車」)から来ているのです。
イメージ 2

 
冬枯れの印旛沼を、北風に対抗して喉をゼイゼイ言わせながらブロンプトンで走っていたら、あの映画の主題曲や「エルサレム」がふと心に浮かびました。
歳をとってあの頃のようには走れなくなったけれども、こうして足裏にペダルという翼を与えられているのだから、心に希望は持ち続けないとね、などと思ってみると、あら不思議、赤いブロンプトンがChariot of fireに見えてきました。
それならこの私は邦題「炎のバイカー」だ(-サイクリストじゃありませんぜ-笑)
因みに“Bring me my Chariot of  fire!”(我に炎の戦車を与えよ!)と叫んだブレイクの詩は、直後に次のような文言で終わります。
(駅に到着し、恋人の出迎えを受けるエイブラハムスがチラ見する新聞の広告には、”Our Boys Are Home ! ABRAHAMS the Toast of England!”=「我らが選手たちが凱旋!エイブラハムスは英国の誉れ」の文字が躍っています。toastって、パンのトーストですが、同音異義で「乾杯」とか「祝杯をあげる」という意味があるんですね)
 
I will not cease from Mental Fight,  (魂の闘争から 退く気はない)
Nor shall my Sword sleep in my hand, (また手中の剣を眠らせておく気もない)
 
Till we have built Jerusalem, 
In England's green and pleasant Land. 
 (我らが快適な緑の大地、エルサレムをイングランドに築きあげるまで

(※なお、この映画の追悼礼拝シーンは、外観は聖メアリ・ルー・ストランド教会ですが、式典シーン自体はシティにある聖メアリ・ルー・ボウ教会で撮影されています)
 
イメージ 3

そう、ブレイクのこの詩は、産業革命を推し進める国家、つまり権威や権力に対する反抗を歌っているのです。
それでも“Jerusalem”は、これまでこのブログでご紹介してきた国歌の“God Save The Queen”や第二国歌ともいえるエルガーの“Land  of Hope  and Glory”とともにプロムでは必ず歌われる、イギリスの人たちにとっては大切な愛国歌なのです。
いやぁ、あの映画の主人公たちが勝利した対象が、急に別ものに思えてきました。
この日は成田空港まで走って北総線・都営浅草線経由で西馬込まで電車に乗り、そこからブロンプトンによるエクストリーム乗り換えで、田園調布まで再び走って東横線に乗り継ぐ計画だったのですが、そのまま格安チケットを購入してスコットランドまでブロンプトン君と高飛びしたくなりました。
(パスポート無いし、真冬だから無理か…)
そんなわけで、下総の野辺にて「さすが君、だてに英国製じゃないねぇ」などと股下の彼をおだててみるのでした。
イメージ 4


Viewing all articles
Browse latest Browse all 932

Trending Articles