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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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JR線の運賃は、現金で切符を買うよりSuicaなどICカード利用の方が安いのでしょうか

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すみません、今回も前置きが長くなります。
近距離移動においては、もう切符を買わないようになってずいぶん経ちます。
自分は自動販売機の無い時代も知っていて、少し田舎へゆくと切符は窓口で買わねばなりませんでした。
いわゆる硬券(きっぷの紙が厚くて硬い)というやつです。
あれ、行き先を告げると窓口のおじさんが切符を棚から引き出して、使用日を刻印してから、お金と引き換えに渡してくれるわけですが、行き先の駅名がわからないと切符は買えません。
小学生の時、あれで漢字の読みを覚えたほどです。
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時刻表を抱えているような子どもでしたから、北海道の難読駅名もひらがなが表記してあって読めたわけです。
しかし、箱根へ行った時に強羅(ごうら)は読めたのに、ロープーウェイの終点桃源台(とうげんだい)を読めずに、切符が買えなかったことがありました。
私鉄線やバス・索道のページには、ふりがながなかったからです。
あのような経験をすると地名は絶対に忘れません。
知らない人とコミュニケーションをはかるという意味も含め、教育的効果から考えれば、駅の窓口は機械よりも人間の方が絶対によかったと思います。
 
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中央線にハイキングに行った客が、帰りにキセル乗車をしようと、猿橋駅の窓口で「ソメカワ一枚」とか言って、窓口の職員に嫌な顔をされたなんて話を聞きました。
猿橋のお隣は梁川(やながわ)駅で、これも読めない人が多かったので、地元民を装ってもバレてしまったわけです。
それに梁川駅なんて、降車する人はほとんどいないほど人家の少ない場所で、週末の夕方に登山客のなりをして上り電車に乗る場合、懐に都内で普段使用している国鉄線の定期券をしのばせているのはミエミエでした。
中央線も高尾より西は、今みたいに列車の本数が多くないから行楽シーズンであれば、混雑します。
当然各駅停車でも通路まで人や荷物が溢れていますから、キセル乗車防止のために車掌さんが検札をしようにも、不可能だったのです。
もっとも、窓口氏が意地悪で「ああ、それはやながわって読むのですよ。ハイ、丸森線の梁川駅(福島県に同じ読みの駅がありました)まで○○○○○円になります」などとシレッと返したら面白いのにと空想しました。
 
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小学生の私は定期券を持っていませんから、キセル乗車のシステムさえ分かりませんでしたけれども、旅行好きの知り合いの大学生の家には、降車時のみ定期券を使うことによりせしめた硬い切符を輪ゴムで留めた束がいくつもあって、羨ましく思ったものです。
もちろん、降車駅までの正規の切符を持っていて、改札係に「記念に切符を持ちかえりたい」と申し出ると、子どもならば大概は無効印を押してもらえました。
(でも子どもの切符はデカデカと赤字で「小」と入っているか、硬券の場合三分の一くらいをざっくりと斜めに鋏で切り落とされていて、それが子ども心に残念でなりませんでした)
振り返れば、のんびりとした時代でした。
時代が下るにつれ、精算のために必要なのか、切符をもらえないことが増えていった気がします。
 
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さて、そんなキセル乗車防止の切り札として登場したのが自動改札機と関東ではSuicaPasmoに代表されるICカードです。
あのシステムは鉄道で使用される以前に、何年かスキー場で試験使用されていましたから、知っていました。
オレンジカードがまだ使用されていたころ、スキー場では非接触式のICカードが実験的に導入されはじめ、のちにSuicaが登場したときにはスイスイ乗車などと宣伝告知されていましたけれど、ああ、不正乗車を取り締まって、きっちり運賃を取るのが最大の目的なのだろうなと思っていました。
いまは日常になりましたが、改札係が鋏をくるく回してカチカチ鳴らしていたあの光景が、ピッ、ピッという電子音に置き換わってしまい、なんとも風情がなくなりました。
 
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さて、ここで漸く表題の中身に入るわけですが、消費税が導入された後にIC運賃が設定されました。
私は「ポイントもついてお得」という宣伝文句からJRIC運賃は切符の料金から消費税分の一部を還元してくれているのだろうとなんとなく考え、だから、切符を買うよりもICを使った方がたとえ僅かでもお得なのだろうと勝手に勘違いしていました。
ところが、IC運賃は還元しているわけではなく、ただ一円単位できっちり収受しているだけで、切符との違いは切り捨て、切り上げがないだけだったのです。
表にしてみるとはっきりとわかります。
まず、幹線における切符の運賃とIC運賃を単純比較しますと、距離によってICが安い場合もあれば、切符の方が安い場合もあります。
200km圏内に限って数えてみると、ICの方が安い運賃帯が9に対して、切符の方が安い運賃帯は10、同額が2という結果でした。
これは上述した四捨五入のきまりによります。
最大5円ですから大したことないと思われるかもしれませんが、何度も同じ区間を行ったり来たりしながら、定期も回数券も買わなかったらどんどん差が開いてゆきます。
また、1キロあたりの運賃単価も出しておきました。
やりすぎと思わないでください。
ペダルをひと漕ぎして数メートルのブロンプトンと併用するのですから、いちばん濃い所で電車を利用したいじゃないですか。
これを見ると、10㎞以下のkmあたり運賃は高いので、その程度の距離なら時間があればブロンプトンで走ってしまった方がよいということになります。
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しかし、このからくりには別のルールがあって、人口が集中している都市部では電車特定区間が設定されていて、その区間内であれば幹線よりもさらに安い運賃が設定されていて、こちらのルールでは切符を購入するよりもIC運賃が高くなることはありません。
これは、普通旅客運賃が消費税分を含めた運賃の10円未満を四捨五入しているのに対し、電車特定区間については同運賃を切り上げていることによります。
つまり、電車特定区間の切符の運賃とIC運賃を比較した場合、同額はあり得ても「きっぷ<IC」はあり得ないのです。
表をご覧になれば、それがよく分かると思います。
この表をみると、割引率がいちばん高いのは410営業キロの運賃帯だとわかります。
このほかに、山手線と特定区間といって東京地区の私鉄線と競合しているような区間には、さらに安い運賃が設定されているのですが、それまで取り上げると話がややこしくなるのでここではふれません。
それにしてもJRの運賃体系って重層かつ複雑すぎます。
昔はもっとシンプルだったのに。
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但し、電車特定区間は意外にも狭いので注意が必要です。
だいたいの感覚で申し上げるとE電(全然定着していない言葉ですが、旧国電のことです)が走っている範囲とほぼ同じと考えればよいと思います。
より広範な大都市近郊区間と混同しやすいのが難点です。
図をみればわかりますが、東海道本線なら大船まで(横須賀線は全線)、中央線は高尾、青梅線や五日市線は全線、東北本線や高崎線など北方面は大宮まで、常磐線は取手まで、房総方面は千葉、京葉線は千葉みなとまでになっています。
つまり、この外側では電車特定運賃は適用されず、幹線扱いです。
たとえば、相模線の茅ヶ崎駅と北茅ヶ崎駅について、営業キロは1.3kmしかないので、切符の運賃が140円に対し、IC運賃が144円と高くなります。
箱根からダウンヒルをしてきて早川漁港で食事をして、早川から小田原までJR線に乗って、そこから小田急で帰るような場合も、早川駅と小田原駅の間は2.1kmなので、全く同じです。
もっとも、ブロンプトンを持っていたら4円の差額を気にして切符を買うよりも、小田原城を横目に見ながら自転車で小田原駅まで走ってしまい、140円そのものを節約してしまうと思います。
要は、電車特定区間に含まれない近郊区間においては、ICカード運賃の方が切符よりも安いという思い込みは捨てたほうがよいということでしょう。
窓口氏にしろ改札係にしろ、あの人たちとのやり取りが無くなったのは寂しいのですが、一方で人件費を節約できたわけだから安くしてくれているのだろうという思い込みは、こちらの甘えなのでした。
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(小田原城址の濠にて)


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