先日、富士山を眺める機会がりました。
秋の最後の週末を利用して柳沢峠へいったのです。
実はその前の週も同じ場所へ行ったのですが、その時は高曇りで富士山は見えたものの、バックが少し白かったのです。
1週間後は雲ひとつない晴天に恵まれました。
ただ、2日前の夜に雪が降ったらしく、日影は積もったままになっていました。
たった1週間でもずいぶん違った印象を持ちました。
そのときに感じたことを書きます。
富士山って、何回登頂とか、ダイヤモンド富士とか、登ることや写真を撮ることにこだわる人は大勢いるのですが、それに比べていつ、どこから眺めるかという点にこだわりを持つ情報はあまりみかけない気がします。
でもよく言うではないですか。
富士山は登る山ではなく眺める山だと。
それに、北斎の富嶽三十六景とか、広重の富士山十六景とか、むかしの人は様々な場所からそれぞれの季節に見える富士に、並々ならぬ想像を掻き立てていたように思います。
現代でもその時々、あらゆる場所から富士山を観ると、あの山は特別なのだとますます実感します。
このブログを読んでくださっている人に、まさか「富士山なんてどこから見たって同じだよ」なんて野暮なことを言う方はいらっしゃらないでしょう(笑)。
そこで、いつ、どこから富士山を眺めて愛でるのか、ブロンプトンでゆく旅を考えてみましょう。
まず時期です。
ここのところ急に冷え込むと同時に、山頂に僅かだけだった冠雪がいっきに下の方へ伸びました。
東海道をゆくとき、往復の新幹線の車窓も含めて季節ごとに富士山を眺めて参りました。黒富士とか赤富士とか、色々ありますが、やはり富士山は雪をいただいていないとさまにならないのです。
そもそも夏場は富士山に近い富士市にいても、まったくお山が見えないという「お隠れあそばす」日が多いのです。
それに、太陽の位置が天頂より低い位置にある秋から冬にかけての方が、光線の差し込み具合から真夏よりもきれいに見えるようです。
これは、背景の空が乾燥していて青く抜けていることも影響していると思われます。
ではどこから見るかについて考えてみましょう。
方角を考えてみます。
富士山は純粋な円錐形をしているわけではないことは、観たことのあるひとならご存知かと思います。
とくに、東海道新幹線の下り列車車窓から見ると、三島から新富士にかけて宝永火山の方が手前に目立つので、瘤付きに見えてしまいます。
また、西側には大沢崩れという亀裂のような崩落がほぼ上から下まで入っており、見方によってはかなり無残な姿にも見えます。
旧東海道屈指の景勝地薩埵峠からだと、離れているので目立たなくなるのですが、それでも大きな崩落が目に入ります。
ということで、消去法でいうと、とくに東南と西は避けた方がよいということになります。
では、残った方角について検討するにあたり、富士山に近い場所、すなわち、眺めている場所と富士山の間に何も無い方がよいのか、何か挟んだ方がよいのかも含めて考えてみます。
まずは、東側からの眺め。
間近で眺めるなら、御殿場や裾野、少し下がって対する山にあたる箱根から眺めると、やはり宝永火山が視界に入ります。
御殿場市内や乙女峠からの富士山はかなり均整がとれていると思いますし、富士山の斜面が自衛隊の演習場になっていて、ほとんど人工物がないのですっきりしています。
ただ、特に箱根の西側外輪山のうえからだと、左の方にぽっかり火口が開いているのが目に入ってしまうかもしれません。
なんか富士山が左向いて空に向かって叫んでいるような感じなのです。
東名高速道路下り線の都夫良野トンネル出口から見る富士なんかもインパクトはあるのですが、こちらは僅かな間のみになります。
もっと遠くで関東平野から見るとどうでしょうか。
関東地方、特に富士山に近い神奈川県にお住まいの方ならご存知でしょうが、手前に丹沢山地や奥多摩、秩父の山々があるので、あまり山際に寄ると富士山は隠れて見えません。
横浜あたりからでも、富士山は上の部分しか見えないので、山の向こうに頭だけ出しているという感じになります。
東京湾フェリーに乗船し、あるいは房総半島までゆけば真ん中より上が見えますが、今度は離れすぎて富士山自体が小さくなってしまいます。
お勧めは稲村ケ崎や江の島からの富士山でしょうか。
ここなら相模湾の湾曲した浜を手前に、箱根の向こうに大きく富士山が見えます。
実は一か所だけ、ちょうど酒匂川の谷間を通して富士山が下まで見える場所を知っていますが、それはまたの機会に。
(東京湾フェリーから見る、冬の朝の赤富士)
南からの眺めはどうでしょう。
三島から原あたりまでは、手前に愛鷹山がありまして、特に東側ではかなり富士山を隠します。
また、富士川の方まで移動しても前述の通り宝永火山が目立ちます。
先日もブログに書いたとおり、駿河湾、田子の浦あたりからは、海から立ちあがった富士山を眺めることが可能です。
ただ、手前の東海道沿いには製糸業をはじめとする工場が多いので、その辺をどう評価するかによると思います。
お馴染みの「富士と桜と新幹線」のように、日本を象徴するアイテムを重ねて観るのならこちらでしょうけれど、人によっては「人工物の添え物は嫌。富士そのものを眺めたい」という人もいらっしゃるでしょう。
その場合は南側からならかなり富士山の近くまで寄らねばなりません。
いまは新東名が山裾を横切っていますから。
ちょっと長くなりましたのでここで切ります。
次回は北からの眺めについて考察したいと思います。(つづく)