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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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夏の気温対策-涼しい場所に移動して自転車に乗る(その1)

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先日、時間をずらすというテーマで書きましたが、今回は場所を移すという方法について書きたいと思います。
簡便な折り畳み機構をもち、公共交通機関に載せて移動しやすいブロンプトンが、いちばん得意な分野だと思われます。
まずは、都内が殺人的な暑さに見舞われている頃、そこから日帰りないしは1泊程度で行ける範囲内で、涼しい場所はあるかというところからみてゆきましょう。
テレビのニュースなどをみていると、全国的に猛暑だと印象操作されそうになりますが、そんなことはありません。
イメージ 1
(志賀高原の丸池付近。午後1時くらいで気温は22度です)
 
メソスケールモデルの気象情報から、8月のある天気のよい日中午後2時の気温データを地図で見ます。
左が午後0時、右が同じ日の午後2時です。
朝には比較的涼しかった気温も、お昼が近づくにつれてぐんぐん上がり、関東平野では濃いオレンジ色(およそ摂氏30度以上)が広がってゆきます。
関東平野を取り囲むように連なっていた山岳部の気温の低い場所ですが、あちこちで暑い空気に分断されて、一日で最も気温の高い午後2時ころには45か所くらいの島状になります。
イメージ 2

 
これだけだとわからないので、気温の彩色図に地図を重ねてみます。
こうしてみると、都心から高崎線沿いにかけてがもっとも気温の高い地域であることがわかります。
これは東京湾を北上してきた海風が、都区部の熱を乗せて北西方向へ流れてゆくからといわれています。
こうした空気の流れを知れば、なぜ埼玉県や群馬県の北西部で積乱雲が誕生するかもよくわかります。
冷たい空気と暖かい空気がぶつかるところに山肌を駆け上る風も手伝って、(暖かい空気が軽いために)上昇気流がおき、これが雲を発生させるメカニズムですから。
イメージ 3

 
では、日中を通して涼しい場所はどこでしょう。
相模湾・伊豆半島側から時計回りに、①丹沢山地(最高峰である裏丹沢の蛭ヶ岳周辺)、②富士山とその周囲、③南アルプスの主脈である赤石山脈と、そこから南に派生する東の巨摩・身延山地及び西の弓張山地と、それらに囲まれた大井川源流部、④山梨、埼玉、長野の三県境にそびえる甲武信ケ岳を中心とした奥秩父山地、⑤八ヶ岳連峰と、その北西の背後に続く筑摩山地、⑥軽井沢付近から、浅間山、鳥居峠、志賀高原を含む上信国境の中央分水界をたどって、三国峠、尾瀬、日光連山までをつなぐ利根川源流をぐるりと囲む関東平野北西部の山々です。
イメージ 4

 
もちろん、全部山岳地帯です。
標高が100mあがるごとに、気温は0.6度下がるわけですから、単純計算すれば、1,000m6度、2,000m12度気温は下がるわけで、夏に涼しい場所は当然山になります。
これをもとに、道ということで考えると、林道マニアだった私なら涼しい道はすぐに導き出せます。
たとえば、①の丹沢山地なら、丹沢湖からユーシン渓谷を通って玄倉川(だいぶ前にキャンパーの集団水難事故があった場所です)に沿って丹沢山直下の箒杉沢まで遡る玄倉林道(斜面崩落のため歩行者も含め通行止め)や、同じく丹沢湖から道志川沿いの青根まで抜ける、通称犬越路と呼ばれる神之川林道(現在は路面があちこちで崩落して通行不能です)があげられます。
③の大井川源流なら、井川湖から畑薙湖を経て二軒小屋まで遡る東俣林道、⑤なら大河原峠から国道289号線の八千穂高原まで下る、大河原峠林道(落石によりもう20年以上通行止め)です。
イメージ 5
(中央線を走る長野カラーの電車の乗ると、山へ行く気分になります)
 
若いころにオフロードバイクで走り、またはマウンテンバイクで通り抜けたこれらの林道は、確かに涼しかった記憶があるのですが、ご覧の通り現在は通行不能になっていてほぼ全滅です。
東俣林道だけは通行できるようですが、林道までのアプローチに難があります。
(大井川鉄道井川線は災害で終点まで開通していないし、静岡駅からのバスは乗り継ぎ便利用のため、二軒小屋宿泊が必須)
また、リニア新幹線のトンネル工事がはじまっていますから、そのための通行止めもあるかもしれません。
それに、目の前に落ちてきたら確実に死ぬような大岩や倒木があちこちで酒盛りを開き、地割れがそこかしこに口をあけているこうした林道は、マウンテンバイクでも通行が難しいと思います。
また、たとえ通行できる林道があったとしても、未舗装路を延々とブロンプトンで走るのは、下り一辺倒の道のりであっても、物凄く神経を使います。
正直言うと、ゆっくり走っても両腕がしびれますよ。
イメージ 6
(アサマ2000スキー場の夏)
 
「志賀高原にブロンプトンをつれて」の記事でも書きましたが、本州中部の亜高山帯における道路環境はかなり過酷で、舗装路でも毎年相当の補修が必要です。
ましてや道路規格の低い林道などは、維持費がもっとかかります。
学生時代、こうした山奥の林道がどれくらい環境に影響を及ぼすのかを調べているとき、林業振興、水源涵養林保全を名目として、林道の復旧工事に毎年莫大な資金と人力が投入されていると知って、あまり利用しないほうがいいのかなと思ったこともありました・。
目立たないけれど山の中にも利権がらみの道路ってたくさんあるのです。
いま、高度経済成長期からバブルにかけて建設されたこうした道路が、メンテナンスのための費用を捻出できず、こうして崩壊したまま放置されているのを知ると、あの時代は何だったのだろうと思います。
イメージ 7
(山でも麓は暑いのです-上林温泉付近)
 
なお、オートバイで様々な林道を走破した経験からいわせてもらうと、林道自体はそんなに景色のよい所はないのです。
もともとが山での作業用につけられた道であり、観光客の誘致を含めた地域振興のために設けられたスーパー林道も、現在ではそれぞれの用途によって県道に昇格したり、廃道になって打ち捨てられたりと様々です。
ただ、地域に観光客を呼び込むとしてつくられた道路は、マイカーは引きよせたものの、その対価としてローカル鉄道や地域のバスを衰退に追いやりました。
結局、地域の交通弱者は足がなくなり、車がないと何もできないという状況に追い込まれたわけですが、なぜあの車がバンバン売れた時代にこうした未来を予見することができなかったのでしょうか。
ブロンプトンで地方を走っていると、ことさらにそのことを思います。
イメージ 8
(箱根は標高が1000mもないせいか、さほど涼しくありません)
 
ということで、高所にブロンプトンをつれてゆくには、以下のような条件がある場所を選択した方が良いと思います。
1.その道路に公共交通機関が存在していること
2.その交通機関で高度が稼げること
3.道路を走ることが目的ではなく、山越え、登山、湖沼や滝、沿道の名所旧跡見学など、あくまでも手段という位置づけで利用すること
4.最低限、簡易舗装がされていること
5.自転車が通行できること(山岳有料道路の中には自転車通行禁止の道路が多いのです)
6.交通量が少なく、トンネルが多くないこと
 
次回は、以上のような条件に当てはまる場所を、具体的に考えてみようと思います。

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