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那珂湊の魚市場での人出に驚いたまま、JR勝田駅に向かいます。
海を背にして街中へ入ってゆきます。
ここ那珂湊は1994年までは市制を敷いていました。
勝田市と合併して現在のひたちなか市が誕生しました。
市場の裏は車の渋滞が物凄いことになっていました。
街中の車列が殆ど動かないのです。
おそらく、押し寄せる車に対し、駐車場の供給が追い付いていないのでしょう。
いま、ゴールデンウィークを前にして、海浜公園のホームページは公共交通機関の利用を、那珂湊のおさかな市場は迂回路の利用を呼び掛けています。
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ひたちなか海浜鉄道湊線は、地図で確認すると阿字ヶ浦駅から那珂湊駅までは海沿いに南下し、そこからV字を描くように北東へ一直線、勝田駅方面に向かいます。
この線路に沿うために、できるだけ昔からある道を選び、中根駅方面へ向かいます。
なぜ線路沿いを走るかといえば、あらかじめ指定券を購入した特急に間に合う湊線の接続列車を確認しておき、途中でアクシデントがあったり、時間が押したときに利用するためです。
(ローカル線を眺めてみたいという事情もあります)
本当は線路沿いをゆきたいのですが、途中中丸川を渡る橋が無いために、南に迂回します。
途中、小さな祠の前に芝桜が咲いていました。
先ほどの人ごみから一転、人知れず咲いている小さな花に癒されます。
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やがて国道245号線を渡ったあたりから、広々とした谷間に広がる水田をゆきます。
ちょうど連休の時期は田に水を張り、早いところでは苗が植えられています。
ただ、苗もまだ小さいため、水田に青空が移り、田んぼの中の一本道を進むブロンプトンにまたがっている私は、まるで水面を進むような気分です。
するとそこに、湊線の列車がやってきました。
三両編成のうち、先頭の二両はかなり古いタイプの気動車です。
色も昔の国鉄の頃の塗装です。
カタン、コトンと音を響かせながら列車がその姿を水田に映しつつ通り過ぎてゆくとき、どこかで見たような気がしました。
宮崎アニメの「千と千尋の神隠し」にそんなシーンがありましたかね。
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いやいや、小さいころ磐越東線沿いにあった親戚の家の庭で見た風景かもしれません。
水田に列車が映りこむ風景は、いたるところで見られました。
高校生のころまでは、ああいうローカル線の車両に乗って、北海道を一周し、またはひとりスキーを抱えて雪国を移動したものでした。
荷物も多くてのちに移動の手段になるマイカーよりも大変でしたが、やはり列車の旅は季節感が深く出てよいです。
ところで鉄ちゃんが三脚抱えて構えていそうな雰囲気なのですが、どこにも見当たりません。
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周囲には車もなく、ところどころ田んぼで農作業している人がいるだけで、列車が去ってしまえば静かで長閑な連休の午後です。
ふと見ると、田んぼの中に大きなタニシが。
このあたり、もう2か月もすると夜はカエルの大合唱になるでしょう。
月明かりの中、夜に水田の一本道を走ったら、幻想的かもしれません。
列車も宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」みたいになりそうですし。
それなら、前泊して夕食後に軽く運動がてら田舎道を走るというのも、ふだんはなかなかできない経験のように思えてきます。
こんな風に想像力を働かせるところが旅の楽しさです。
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それにしても、道は農道のせいか、簡易舗装はされているものの、お世辞にも路面状況がよいとはいえません。
ただし、こんな水田の道は、小学生の頃は自分の家の周りにもたくさんありました。
あの頃は小さかったので18インチ(ブロンプトンは16インチ)の自転車に乗っていて、凸凹道でよくお尻が痛くなったものです。
いまは腰を浮かせてゆっくり乗っていますので、気になりません。
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そして背の高い菜の花が道沿いにずっと咲いている場所にやってまいりました。
海浜公園の中のように、整備されたサイクリングコースの道端に、花壇として植えられた花を愛でるのもそれはそれでよいのでしょうが、私はこんな感じで野に咲いている花の中、野道をゆく方が性に合っているかもしれません。
昔から旅をしてきて、人為的につくりこまれたものにはあまり感心しないのです。
たとえば、某夢の国なんて、不自然極まりなく感じ、あんな場所に何度もゆく人の気が知れないと思ってしまいます。
チケットを売る側でしたから、そう思っても決して口には出しませんでしたけれど(笑)
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ところで、この辺りには「中根八景」と呼ばれる江戸末期から明治にかけて選定された景勝地があります。
「○○八景」というのは、東海道赤坂宿の大橋屋さんのところで紹介しました。
幕末の頃、水戸藩の徳川斉昭公が水戸八景を選んだそうです。
水戸学の関係なのでしょうか、各景それぞれに和歌や詩吟、詩舞等も決められ、藩校の生徒が健康増進のために八景巡りという徒歩きをおこなっていたといいます。
これにに刺激されて、湊八景、中根八景、勝倉八景などが登場しました。
この広々とした谷の北側には「宿の内の夕照」という中根八景のひとつがあります。
谷を挟んでお向かいの台地に沈む夕陽の美しさが選ばれた理由だそうです。
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さらに川上に向って自転車を進めると、やがて谷が徐々に狭まり、山の端が近づいてきたら、その斜面になにやら奇妙なものを見かけました。
アートのようでもありますが、何かを模しているようでもあります。
「あぜみち文庫」という看板が出ているのですが、本は見当たりません。
その先には「しじみ放しています」という看板も出ています。
目を凝らしてその脇の囲われた水路を見ましたが、巻貝のタニシばかりで二枚貝は見つかりません。
それにしても、暖かくなって水温が上昇してきたせいなのか、タニシは元気に動き回っています。
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そこから北側の斜面をのぼり、勝田駅に向かいます。
この辺りから雪の積もった谷間を見おろしたのが、前述の中根八景のうちの「長者ヶ谷津の暮雪」です。
この谷戸が「長者ヶ谷津」と呼ばれるのは、ここに昔長者が住んでいて、八幡太郎義家に攻め滅ぼされた伝説があるからです。
「長者」という言葉は、単なる経済的なお金持ちということではなく、その土地の有力者とか豪族という意味があるようです。
源義家は平安後期の武将で、たびたび奥州征伐に出ていますから、その際に滅ぼされた土地の豪族がいたということなのでしょう。
さらに走ってゆくと、駅近くにツツジがきれいに咲いている公園がありましたが、みな海浜公園に行ってしまったのか誰もいません。
勝田駅到着は13時32分。
帰りの特急が13時47分発で、切符は既に購入しているので15分前到着だから余裕は十分です。
常磐線の特急など滅多に乗車しませんから、記念撮影をしてから車内に入ります。
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ところが、せっかく壁際に席を取っておいたのに、席後ろのスペースにはすでにキャスター付きのバッグが2つ入っています。
お向かい側も同様です。
これではブロンプトンを置くスペースがありません。
最後尾だったので車掌さんに相談したのですが、「ここは誰のスペースでもないので早い者勝ちなのです」とのこと。
しかし、これでは私の席はリクライニングもできません。
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置いてあるキャスターバッグはそんなに大きくないので網棚に載せることが可能です。
辺りを見回すとガラガラの車内はわたしの他に中央部に年寄りのグループが4人だけ。
彼らはこちらをチラチラ見ています。
仕方ない、きっと肩が悪いとか手が届かないという芦有で網棚に荷物を載せられないのでしょう。
そこでブロンプトンを実験よろしく網棚に載せ、天井と挟むように固定してみたのですが、勝田駅を発車後、次の水戸駅に進入する際に車両が大きく揺れて、頭の上にブロンプトンが降ってきました。
痛がっている私を横目に、年寄りたちは知らんふりをしておしゃべりを決め込んでいます。
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さすがに少々腹立たしくなりましたが、網棚に載せるのは危険だとわかりましたので、車掌さんに一言ことわってから、空いている隣の席の足元に置きました。
結局終着の品川まで隣の席は空いていたので、ブロンプトンは問題なかったのですが、彼らが松戸で下車する際に荷物を取りに来たとき、一言の礼もありませんでした。
昔は譲り合って列車のスペースを共有しあったものですが、私が荷物の上げ下げをしてあげればよかったのかな、今度からもっと早くに駅に戻ろうなどと思っていたら、列車は終点の品川に到着しました。
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常磐線が品川発着になって間もなくのことでしたが、便利になったと実感しました。
品川から京浜東北線に乗って大井町で東急大井町線に乗り換えれば、そこからは大岡山でお向かいのホームに来る目黒線に乗り換えることで、階段の上り下りなしで最寄り駅まで帰れますから。
振り返ると、海浜公園のネモフィラよりも公園の外の閑散とした海のほうが、そして人で溢れる那珂湊の魚市場よりは、その裏に広がる田んぼの方が、印象に残る旅でした。
ブロンプトンは、こうした人目に付かないのんびりとした風景を愛でる方が合っているのかもしれません。(おわり)
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