お寺のお手伝いをしていますと、エクセルを扱っている際に考えたこともない計算式を使うことがあります。
たとえば年齢ですが、厄年や享年を表すときは、満年齢ではなく数え年を用います。
数え年なんて勘定する機会がなかったから、私は「生まれた日を1歳として、次の年がきたら2歳とする」という説明を漠然と聞いていて、満年齢より1歳繰り上げて考えればいいのでしょうと考えていたのです。
だから数え年をだす計算式も=datedif(生年月日のセル番号,today(),"y")+1
だと単純に思っておりました。
式の最後にある+1はお母さんのおなかに入っている期間を加算するという意味合いです。
しかし、これはよくある勘違いだそうです。
「次の年がきたら」というのは、「お正月がきたら」という意味であって、「その人の誕生日がきたら」ではないのです。
つまり、12月31日生まれの人は、実質的には生後2日にもかかわらず、生まれたその日が1歳で、翌日の元旦には既に数えで2歳になっているということになります。
お年を召した方からは、そんなの常識だろといわれそうですが、昭和を20年以上生きていた私くらいの年齢でも実生活において満年齢以外を用いることはありませんでした。
どうりで初もうでの際に寺院や神社で見かける厄年の年齢と、自分の生まれた年の整合がつかなかったわけです。
気分は12月31日の深夜にお参りしているわけですから、体内カレンダーはまだ新年の感覚がなく、余計に惑わされます。
けれども、そうなるとお正月をお祝いする意味もだいぶ変わってくる気がしますけれどもね。
上のエクセルの計算式を訂正するのであれば、
=datedif(生年月日のセル番号,date(year(today()),12,31),"Y")+1
が正解になります。
享年を求めたいときは、
= datedif (生年月日のセル番号, date(year(逝去年月日のセル番号),12,31),"Y")+1
となるわけです。
要するに、誕生日から12月31日までの期間は満年齢に1をプラスし、1月1日から誕生日までの期間は満年齢に2をプラスすると覚えておけばよいのではないでしょうか。
だからお誕生日が暮れに近ければちかい人ほど、年末に数え年がトントンと立て続けにあがってしまうし、2をプラスする期間も人より長くて損した気分になるはずです。
ただでさえ「今年はいよいよ○○歳だね」、と年齢を意識するお正月に、満年齢に2を加えるなんて、アンチエイジングにいそしんでいる現代人は「ご無体な、年のはじめから精神的苦痛を賜るか…」とそれだけで老けた気分になってしまいます。
わたしなんか再来年の元旦に数え年を四捨五入したら、ア~ラ還暦(駄洒落)ですからね。
昔の人は短命だったから、少しでも年齢を高くみせようとしていたのでしょうか。
しかし、人の生命をどこからカウントするのかを考えてみると、数え年も案外と合理的な気がします。
最近の研究によれば、お母さんのおなかの中にいる胎児の能力は、従来考えられていたよりもかなり発達しているようで、触角は妊娠8週から、聴覚はおよそ20週から、視覚も明暗は28週目くらいからわかるようになるそうです。
臨月が近くなると、お母さんとお父さんが喧嘩していると、雰囲気が胎児にまで伝わるから自重しましょうなんて育児書に書いてあったりしますから。
赤ちゃんがいるいないにかかわらず、喧嘩はしないほうがいいと思いますけれどね(笑)
だからおなかの中にいる胎児を0歳以上1歳未満とカウントすることのほうが、誕生の時点を0とする満年齢カウントよりも、理にかなっています。
法律など勉強しておりますと民法で胎児の権利能力という項目を学習します。
権利能力とは、私法上の主体となり得る資格のことで、民法は3条1項で権利能力は出生にはじまることを明記しています。
しかし例外が設けられているのです。
よく試験に出てくるのは不法行為に基づく損害賠償請求権です。
たとえば、胎児のお父さんが交通事故で死んでしまった際に、まだ生まれていないその子に損害賠償請求権はあるか?というお話しです。
この場合、「胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす。」(721条)として例外的に胎児にも権利能力を認めています。
他に相続(886条1項)、遺贈(965条)があって、3つ合わせて「イソップ」なって語呂合わせで覚えるのです。
その辺までだと一般教養ですが、法学部や法律専門の試験となると、その理屈まで勉強します。
どうしていまだ出生していない胎児に権利能力を認めるのかという理由について、停止条件説と解除条件説があります。
前者は出生前の胎児の権利能力は否定されているものの、胎児が出生した瞬間に権利能力が発生し、その効力が出生前にも遡及(さかのぼる)するという説です。
後者は逆に胎児の権利能力は肯定されていて、死産になった途端に権利能力がさかのぼって否定される(権利がなかったことにする)という理屈です。
判例は前者ということになっているわけですが、なぜこんな違いを強調するかというと、前述の例でいえば、母親がまだおなかの中にいる赤ちゃんの代理人になって、損害賠償請求ができるか否かという話にかかわるのです。
停止条件説だと出生するまでは権利能力がないのだから、胎児でいる間は請求はできません。
解除条件説に立てば、死産になった場合にのみさかのぼってなかったことにするわけで、胎児の権利能力を認めるのだから、まだ生まれていなくても代理人を立てて請求できることになります。
法律は曖昧をゆるさないもものだから、そこまで考えねばならないわけで、同じ0歳以上1歳未満に対する扱いでもずいぶんと趣を異にします。
条件の覚え方は、
停止条件:大学に合格したなら毎月仕送りをします。
解除条件:大学に合格するまでは毎月仕送りを続けます。
だったっけな。
懐かしい。
あれ、数え年の数式をエクセルに入力していただけなのに、なんで停止条件と解除条件の違いになってしまったのでしょう。
なお、数え年という考え方は東アジア特有のもので、英語では“East Asian age reckoning
”といい、「生まれた時点を1歳として、お正月がくるたびに加齢してゆく」(Newborns start at theage of one year, and at the New Year's Day one year is added to the person'sage.)といえば済むそうです。
この文章を書いた晩、神社の厄年の早見表を外国人に英語で説明しながら「数え年ってどうやって説明すればいいんだ~」と夢でうなされました。
あとでしどろもどろにならないように、書き留めておこう。