考えてみれば、ブロンプトンと電車の組み合わせは、スキーというウィンタースポーツがヒントだったわけですから、冬の方が似合って当然かもしれません。
スキーだって春になって温かくなってくると、山の上でも暑くて汗だくになり、やっぱりやるなら雪がしまっている厳冬期だなどと感じてしまいます。
冬のスポーツはやらない人からみれば、「わざわざ寒いのに外へ出て運動するなんて考えられない」でしょう。
しかし、やる人からすると、「家に閉じこもっているよりは、ずっと気持ちいいのにもったいない」感覚なのです。
それでは前回からの続きで、冬に寒さを感じずにブロンプトンに乗るための条件に付いてまとめてみます。
●乗る前後にはストレッチを
今の時期、寒さで体が硬くなっていますから、ほぐしてから乗った方が良いです。
通勤や通学などに乗っているのでそんな時間はないという方は、信号や踏切待ちの間にでも踵や背中、首や腕などできるところはストレッチしておいた方があとあと楽です。
意外と忘れがちなのは降りた後。
温まった体がもとに戻る前に、首を回したり、つま先を中心に踝を回したり、椅子に座ったまま膝を伸ばして上半身を前へ倒したりなどして、筋肉をのばしておいた方が後々体を硬くせずに済みます。
●どんな道を走るか
これは路地裏に限ります。
冬に狭い道路を走ると、街中などは風よけにもなります。
信号も少なく、狭い道のなかでも優先道路を選べば一時停止の数も少なくできます。
坂道を選ぶ際には、短くて急な坂より、長くてゆるい坂を選びます。
途中に踊り場のような平坦な部分の多い長い坂なら、さらに良いと思います。
朝夕のこうした道は、通学路であったり、自動車進入禁止になっていたりするので、車やバイクなどとの無用な接触を回避できます。
そして何よりも、路地裏には発見が多いのです。
わたしは腰に下げたカメラで、気が付いたものをあれこれ撮ってゆくことが楽しくて、その時間を大切にしています。
●向かい風を避ける
スキーやスノボをやっている方ならご存知だと思うのですが、冬の向かい風というのは体温とともに体力を奪ってゆくのです。
一日中吹き曝しの北向き斜面でスキーなどやった日には、翌日動けなくなってしまいます。
スキーのアルバイトをやっていたとき、暴風雪がひどい時は南極のペンギンみたいに円陣組んで風に向かって背を向け、なるべく体力を温存したものです。
雪山で遭難したとき、雪洞を掘ってビバーク(野宿)するのも同じ理由です。
この前話題に出た「八甲田山死の彷徨」じゃありませんけれど、一晩中吹雪の雪山を動き回ったら、どんなに体力のある人でも確実に遭難します。
自転車でそこまでということはないですが、そこは方向を変えられるブロンプトン、今の時期は旧東海道なら西から東へ、東横線なら渋谷から横浜方面へ、鎌倉から横浜へ走るより、横浜から鎌倉へ走った方がかなり楽です。
●大きな川の土手は避ける
サイクリングコースといえば、川の土手にあります。
急な坂もなく、信号もないし、車やバイクも入ってきませんから自転車天国のように感じられることもあります。
けれど、上記2つの理由から浪馬は個人的にお勧めしません。
関東の場合、利根川のような大河川でもない限り、川の流路というのはけっこう湾曲しているものなのです。
すると、場所によっては風を受け続けることになります。
景色が単調になりがちで、あちこち発見しながら走りたい自分としては避けるようにしています。
●どんな風に走るか
低速から中速の間でメリハリをつけて走ります。
見通しのよい、歩行者の少ない道では速度を高めに(といってもせいぜい25km/hまでですが)、見通しが悪く、通勤・通学の人たちが多い場所では、歩行者プラスアルファ程度の速度で走ります。
低速ギアであせらずに、一歩一歩進むように走ります。
後ろからスタンディングで加速するクロスバイクやマウンテンバイクに追い抜かれても、決してついて行ってはなりません。
ペースを乱すだけです。
山登りの要領で、ゆっくりと着実に走りましょう。
ブロンプトンの6段変速車の場合、ギア比の幅がかなり広いので、低めのギアで足の回転をわざと多くして走るのがコツです。
先に見える信号が赤の時は、間合いをとりながらゆっくりと走って行き、交差点を止まらないよう通過することもひとつの知恵です。
こうすることで、身体はかなり温まります。
たまにどうしようもなく信号待ちでとまってしまう時でも、バイクのように「寒い!」という感覚はありません。
別のところでも書きましたが、短距離走を何本も繰り返すよりも、ジョギングを一定時間以上続けた方が、脂肪燃焼効率もよくて、からだもよく温まるのです。
●どんな格好で走るか
冬にブロンプトンに乗る際には、なるべく軽くて暖かい格好をしています。
軽い服を選ぶのは動きやすいようにするためです。
比較的暖かい日なら薄手のジャケットを、寒い日や朝晩に乗る際にはダウンジャケットを着て乗ります。
逆に重たくて保温性のない着衣は敬遠しています。
カウチンセーターやダッフルコートは、ファッションとしてはOKなのでしょうが、長時間自転車に乗るのには向いていません。
(ブロンプトンの場合、途中から電車に乗ったりもしますから、あまり運動を前面に押し出した格好をするのも嫌だという気持ちは分かりますが)
首回りが開いている外套は、せっかく温めた身体の熱を逃がしやすいので、避けるようにしています。
また、マフラーをして乗るのは荷物が増えるだけなのでやめています。
スポーツをしている人なら、発汗後に身体を冷やさないよう気を配ることは大事だとご存知のことと思います。
また、運動していると、最初に体のどこから汗が出てくるのか、さいごまで汗をかかない部分はどこなのかも分かります。
これもウィンタースポーツに親しんでいる人には常識ですが、防寒と発汗によるムレ対策を両立するため、防水透湿素材というものが開発されてきました。
ゴアテックスが代表格ですが、ほかにドライテック、エントラントなどがあります。
薄くて軽くて保温効果があり、かつ汗による湿度を外へ逃がすことのできる素材ほど、高価になりますが、冬山へゆくわけではなく、街中で着るのですから、値段と相談して応分なものを選んで着ています。
これから3月になって、アウトレットで冬物一掃バーゲンが行われるときなど、狙い目です。
足は短めのブーツを履いていますが、これはそれほどスピードを出さない前提で乗っているからです。
手袋は以前書きましたけれど、多少高価(10,000円~20,000円程度)でも薄手で暖かい皮手袋を使っています。
ブロンプトンをたたんだり展開したりするたびに、いちいち手袋を脱ぐのは大変ですから。
身の回りの物を持ち運べ、電車の中ではブロンプトンをおさえるベルトにもなり、かつ防寒になるので、ブルックスのバービカン・ショルダーバッグはこの季節には手放せません。
革製品が多いため、家に帰ってきてブルックスの革サドル用のオイルなどを塗っていると、冬もいいものだと思います。
いずれにしても、南関東に住んでいると、風は強くても晴天日が連続します。
走りすぎかなと思ったときは、いつでも電車に乗って帰ることができます。
つまり、夏よりも利用に調節が効きやすいのです。
こうした条件を味方につけることができ、コートやジャケットを着て走っていても、暖かいどころかときには汗だくになってしまう冬ほど、ブロンプトンに乗るには絶好の季節ではないかと思います。