関東地方の銭湯における、男湯のペンキ絵の定番と言えば、海と富士山です。
(女湯は違うらしいのですが、見たことが無いからわかりません)
しかし、あの絵はどこから見た富士山なのでしょう。
地理オタク、景観オタクの血が騒ぎます。
わたしは必要に迫られない限り銭湯にはゆきませんが、「銭湯 ペンキ絵」で画像検索すると、富士山の絵がたくさん出てきます。
たいていは正面に富士山があって、手前が海です。
そして松島や九十九島のような松をのせた小島が海に浮かんでいるという構図と、向かって左右に背後に松原を控えた砂浜が湾曲しているという構図が代表的なようです。
前者のような場所は、ちょっと思いつきません。
宮城県にある松島の正面に富士山がくるわけがないですし、富士山の角度からして北面からのようですから、山中湖や忍野八海、河口湖を海に置き換えればこんな風にみえるという想像ではないでしょうか。
後者は砂浜が富士山に向かって右手なら三浦半島西岸から湘南にかけてと、西伊豆の雲見から大瀬崎をはさんで三津付近までになると思います。
逆に左手なら富士川より西の太平洋側、有名な三保の松原や大井川河口から御前崎にかけてあたりが、富士山がそのようにみえるかもしれない場所になると思います。
ただ、あれはすべて想像上の景色で、「こんな風景があったらいいな」という願望だということです。
しかし、絵ではなくて本物が見たいという方もいらっしゃいますよね。
露天風呂から海と富士山両方がご覧になりたい方は、ネットで探してみてください。
意外とありそうでないのです。
特に縁起が良いとされる赤富士をお風呂から見たければ、沸かし湯ではかっこうつかないから早朝にも入れる自噴温泉が良いですよね。
手軽なところでは江の島の岩本楼(アイランドスパ)や城ヶ島京急ホテルがあります。
西伊豆で有名なのが富岳群青です。
部屋ごとに露天風呂がついていますが、お値段もすごいことになっています。
西伊豆には海の向こうに富士の見える露天風呂をもったペンションもありますので、まめに探してみてください。
焼津温泉にも松風閣という旅行会社時代にはよく名前をきいた宿の露天風呂から、見ることができるそうです。
では、ブロンプトンでくだる坂道から海と富士山が見えるような場所はあるのでしょうか。
これまでブログでご紹介した中に、旧東海道の薩埵(さった)峠がありました。
あそこは紛れもなく東海道随一の景勝地だと思います。
京都(興津宿)から江戸(由比宿)方向へ走れば、正面に富士山、手前右手崖下に駿河湾を望むことができます。
ただ、ブロンプトンで走るにはちょっときついものがあります。
なにせ本物の山道ですから。
因みに、「薩埵」とは、サンクスリット語のサットバの音写です。
その意味はひとつが衆生、もうひとつは菩薩(求道者)ということです。
当地は難所でもあったから、二番目の意味からきているのかもしれません。
箱根の西坂にも国道1号線に富士山と海がのぞめる場所があります。
ただ、車がビュンビュン走る国道です。
どこかに海に向って下る坂道の向こうに富士山が見える道はないものか・・・。
西伊豆の達磨山付近でストリートビューなどを眺めているのと、絶景があります。
しかし、バスで山の上にゆくにしても、修善寺から戸田へ行くバスは本数が少ないうえに、途中までしかゆきません。
そこからの登りは山岳道路でシャレになりません。
西伊豆の海岸線にもお目当ての景色はあるものの、あそこだってリアス式海岸の道ですからね。
もっと気軽に行ける場所で、海と富士山が同時に見える場所はないかと、かなり以前から思案しておりました。
先日、三浦半島でショートカットするための道を実走しようとしたときのことです。
それは海岸線から台地へとあがる長い坂道で、ストリートビューで見る限りは軽自動車が一台やっと通り抜けられる幅しかありません。
これはブロンプトンで確かめるしかないと思い、機会があったので運動がてら登ってみたのです。
ところが、工事中の現場を通過しようとしたところで、とめられてしまいました。
仕方なく、迂回して国道を走りました。
(おかげで、約束していた先輩の家に到着するのが15分も遅れてしまいました)
こういう場合、リベンジをしないと気が済まないのが私の性分です。
先輩の家からの帰り、今度は台地から海へ下る形で問題の路地に上から突入。
馬の背のような尾根上に続く坂道を、鼻歌交じりにブロンプトンでくだってゆくと、いきなり正面に富士山、手前に海という景色が飛び込んできました。
求めよ、さらば与えられん。
さがしていれば、こういう景色は向こうからやってくるものだというのは、ブロンプトンに乗ってから何度経験したことでしょう。
写真を撮ってから、狐につままれたような顔をして私の背中を見送る工事現場のガードマンを尻目に、さらに大根畑の道を進むと、ふたたび海と富士山が正面に見える道に出ました。
こんな景色があったとは…跪いて神に祈りたい気分です。
なお、三浦半島から富士山が良く見える時期は11月後半から3月中旬くらいまでの間です。
だからストリートビューで見ていても富士山の位置は分からなかったのです。
(よく見れば、うっすらと確認できます)
対象の時期は風が強いので防寒対策は必須ですが、かなりアップダウンがある地域のため、自転車に乗っている限り、寒くて震えるようなことはありません。
そして、本音で言うとこの場所の詳細はブログで教えたくはありません。
ここがずっと心の中で描いていた景色で、見つけるのは簡単ではなかったからだと思います。
それにしても外国人観光客を連れてこの坂を下ったら、とても喜ばれそうな道なのでした。
勝手に「海と富士山を愛でる坂道」と心の中で名前を付けました。
勝手に「海と富士山を愛でる坂道」と心の中で名前を付けました。