橋に始まり橋に終わる旧東海道。
今回はその下を流れる川の長さに着目してみました。
起点、日本橋の下を流れるのは、神田川の放水路であり、江戸中心部の水運の要でもあった日本橋川です。
しかし、なかば人工的に付け替えられた日本橋川の長さは、神田川との分岐点である三崎橋から隅田川までのわずか4.84㎞。
もう一方の起点である三条大橋の下を流れるのは、ご存知鴨川です。
こちらは京都市の北東端に近い桟敷ヶ岳(標高895.9m)を源流とし、京都の南、鳥羽付近で桂川との合流点まで長さは31㎞です。
ランキングを調べるにあたって、このような長さが50㎞以下の短い川は有名であっても除外しました。
除外した主な川を東から順にあげますと、鶴見川(42.5㎞)、酒匂川(46㎞)、狩野川(46㎞)、黄瀬川(30㎞)、太田川(静岡県-44㎞)、境川(愛知県-39.8㎞)、員弁川(37㎞)、鈴鹿川(正確には渡河していない-38㎞)などがそれにあたります。
また、源流部の山の高さで谷の深さを、流域面積で谷の広さを推し量ってもらえればと思い、併せて調べてみました。
では、ランク下位からみてゆきたいと思います。
14位:境川(東京都・神奈川県)河川長52.1㎞ 流域面積210.69㎢
東京都町田市の最西部にある草戸山(標高365m)に端を発し、町田市を東流してから南下し、江の島付近で相模湾にそそぐ境川の全長は52.1㎞。
旧東海道は藤沢宿の東の入口、遊行寺の門前で渡りました。
13位:安倍川(静岡県)河川長53.3㎞ 流域面積567㎢
見た目に反して短いのが府中宿(静岡)を出て丸子宿に向かう際に渡る安倍川です。
山梨県境の安倍峠付近や赤石山脈の南端にある大谷嶺(標高1999.7m)から、駿河湾まで53.3㎞しかありません。
安倍川橋と遊行寺橋は長さが全然違うので、橋梁長と河川長が比例していません。
安倍川は流域面積も境川に次いで狭いのですが、流量は比較にならないと思われます。
それだけ流量は多いのに、この川にはダムが一基もありません。
12位:瀬田川(淀川)河川長75.1㎞ 流域面積8,240㎢
草津宿と大津宿の間、瀬田の唐橋で渡る川です。
この川はちょっと特殊です。
長さは琵琶湖の出口から宇治川、淀川と名前を変えて大阪湾にそそぐまでを指しています。
琵琶湖やそこへ流れ込む川の長さまでカウントしたらずっと長くなると思います。
その証拠に、流域面積は断トツの第一位になっていますから。
(琵琶湖に流れ込む川のうち最長のそれは、旧東海道に沿っている野洲川=65.25㎞)
11位:豊川 河川長77㎞ 流域面積724㎢
愛知県北東部にある段戸山(鷹ノ巣山とも。標高1,153m)から三河湾に至るまでの距離は77㎞。
吉田宿(豊橋市)を出て、豊橋を渡るときに見る川は、放水路と合わせてかなりの流量に見えるのですが、長さは大したことありません。
10位:庄内川 河川長96㎞ 流域面積1,010㎢
岐阜県恵那市の夕立山(標高727m)から南西に流れて三河湾にそそぐ庄内川は、100㎞にちょっと足りない長さです。
多治見市より上流の岐阜県内では、土岐川と呼ばれています。
下りの東海道新幹線に乗っていると、名古屋駅を出てわりとすぐに渡る川ですが、旧東海道の旅では佐屋街道の岩塚宿と万場宿に挟まれていました。
9位:相模川 河川長109㎞ 流域面積1,680㎢
平塚宿の手前、馬入橋で渡るこの川は、神奈川県民にとってはもっと長く感じます。
なんといっても、水源は富士山の麓にあり、五胡のうちでいちばん高いところ(標高980m)にある山中湖ですから。
そこから富士吉田市、大月市、相模原市、厚木市と迂回するように流れているため、100㎞ちょっとしかないといわれると拍子抜けします。
8位:矢作川 河川長117㎞ 流域面積1,830㎢
中央アルプスの最南端にある大川入山(標高1,907.74m)が源流で、三河湾までほぼ一貫して南西に流れている川です。
旧東海道の旅では、岡崎宿の西の出口で渡りました。
蜂須賀小六と日吉丸(豊臣秀吉)の出会いの像が右岸にありました。
7位:揖斐川 河川長121㎞ 流域面積1,840㎢
岐阜県と福井県にまたがる越美山地の冠山(標高1256.6m)から流れ出て、木曽三川のうち濃尾平野のいちばん西側を南流してくるこの川は、佐屋街道の旅で桑名宿に到達する直前に渡る際には、長良川と合流してしまっているので、単独で見分けがつきません。
ところで揖斐川の「揖斐」の語源ですが、川から田に水を引く際の樋の「井樋」からきているそうです。
6位:富士川 河川長128㎞ 流域面積3,990㎢
熊本の球磨川、山形の最上川とともに日本三大急流に数えられる富士川も、長さは128㎞しかありません。
源流は南アルプス北端の鋸岳(標高2,685m)です。
八ヶ岳(標高(赤岳)2,899m)を源流とする立場川を長野・山梨県境付近で、山梨県の北東端にある甲武信ケ岳(標高2,475m)を源流とする笛吹川を甲府盆地の南端で合わせ、富士山の西を南流します。
旧東海道の吉原宿から岩淵の立場へ到着する直前に渡る頃には、流量が膨大になっていたため、雁堤(かりがねづつみ)の人柱という話が登場しました。
甲府盆地を抱えているため、流域面積は広いものの、現在は工場が発電のために途中で取水して他へ放流しているため、流れはさほどの量ではありません。
5位:多摩川 河川長138㎞ 流域面積1,240㎢
東京の南、神奈川との県境を流れる多摩川は、横浜、川崎両市民にとってはお馴染みの川です。
通勤でも通学でも東京と行き来するときは必ず渡りますから。
源流は山梨・埼玉県境にまたがる笠取山(標高1,953m)です。
都のもう一方の北端を流れる荒川に比べて、護岸がコンクリで固められていない部分も多く、また岸辺に高速道路などがはしっていないため、より自然を感じることができます。
旧東海道の旅では、六郷橋を渡る際に東京(江戸)を後にしたという実感が湧く川です。
4位:長良川 河川長166㎞ 流域面積1,985㎢
両白山地南部の大日ヶ岳(標高1708.87m)が源流です。
自分のような関東近辺の人間にとって、両白山地あたりは地理に暗いのですが、行ったことはないにせよ、大日岳(現・ダイナランド)とかひるがの高原というスキー場の名を聞けば、ああ、中京圏の人たちがゆくあのあたりかと想像がつきますし、長良川鉄道・越美南線に沿って郡上八幡を通過し、岐阜城のある金華山の北を流れているあの川かと想像すれば見当がつきます。
前述の通り、佐屋街道で渡河するときは揖斐川と一緒になっているのでわかりにくいのですが、河川長が166㎞もあるということは、濃尾平野の懐が深いことを示しています。
因みに関東では荒川の河川長が173㎞なのでほぼ一緒ですが、流域面積は荒川の方が1.5倍と広いのでした。
(長良川)
少し長くなりましたので、ベスト3は次回に持ち越したいと思います。