これは、日本人である私たちが外国旅行をするとき(=アウトバウンド)のことを考えてもらえば分かると思います。
一時期、イル=ド=フランス(Île-de-France)と呼ばれるパリの周囲や、オックスフォード・ケンブリッジなどロンドンから日帰り往復が可能な学園都市が観光ディスティネーションとして人気になっていました。
ヨーロッパであれば、ロンドンやパリ、アメリカであればロサンゼルスやニューヨークなど、海外から直行便で入る街(=業界用語でGateway都市って呼ぶのですけれど)から日帰り圏内にあるリゾートは長期滞在に向いているのです。
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最初は団体旅行などに参加して、都市から日帰りでゆける観光地をみて、「ここ、いいところだなぁ」などと思うわけです。
旅慣れた人ならば二回目からは個人旅行にして、かつて団体旅行で滞在したようなシティホテルにはあえて泊らず、そこから日帰り圏内の郊外あるいは田舎にあるホテルに長期滞在し、のんびりと海辺や山岳リゾート、あるいは田園を満喫し、滞在中に雨が降ったり田舎に飽きたりしたら、公共交通機関を使って大都市に出て、博物館めぐりやショッピングを楽しむという、いわばグループツアーの逆張りをやるわけです。
私は団体旅行に添乗したことはあっても、プライベートでは初めてゆく国であってもそれをやっていました。
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(上野;国立科学博物館)
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こうした旅が出来る素質のある人というのは、好奇心旺盛で、地元の人の普段の生活に触れてみたい、観光客向けではないその国の人の素顔に接したいという願望がある人だと思います。
いつかも書きましたが、たとえば道に迷ったり、間違えて逆方向の列車に乗ってしまったりしても、そうしたハプニングを心から楽しめる人です。
しかし、素質が無くても、ロンドン・パリ・ローマ7泊9日団体旅行を何度も繰り返し利用する人なんていませんよね。
訪日外国人観光客も同じです。
長期滞在するのに、東京のような大都市は飽きなくて面白いかもしれないけれど、何日も滞在しているうちに疲れてしまうものです。
特に私が知っている外国人は、都心に半日もいると目が回って座り込んでしまうと、30年も前からこぼしておりました。
それに、特に日本のように四季がはっきりしている場所では、都会よりも田園に滞在した方が四季それぞれに表情が違って、時期を違えてゆけば同じ場所に複数回滞在しても飽きがこないのです。
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(新宿駅西口)Clik here to view.

それから、長期滞在というのは毎日高級な食べ物を食べているわけにもゆかない点にも注意が必要です。
とんでもない富豪でもない限り、旅行中におけるエンゲル係数は、ショッピングや滞在中の交通費と負の相関関係にあるのではないでしょうか。
そこへゆくと、田舎の方が安くて新鮮、美味しい食べ物にありつける可能性は格段にあがります。
そして田舎の食事に飽きたころ、都会に出て高級な料理や自分の国の食事にありつくというのが、経済面だけではなく身体にも優しいと思うのです。
さらに、インバウンドに人気の温泉だって、一日や二日滞在して入浴したところで効果はありません。
湯治がそうであるように、温泉は農閑期に週単位で逗留し、自炊しながら入浴を繰り返すことで疲労回復や健康増進をはかるものでした。
だから温泉は少なくとも7日以上滞在して日に複数回入浴するのが正しい温泉の利用法です。
また、万が一滞在中に怪我や病気をしたときに、大都市圏に日帰りで行けるというのは心強いものです。
こんにち、東京のような世界有数の大都市にゆけば、どこかに同国人がいるでしょうし、大使館だってそろっています。
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(中禅寺湖畔)Clik here to view.

では、東京から日帰り圏内にある、インバウンドの長期滞在客に向いているリゾートとはどこでしょう。
山岳リゾートなら箱根、軽井沢、伊香保、日光、那須。
海辺のリゾートなら三浦・湘南、房総半島があがると思われます。
けれども、インバウンドにとっての日帰り圏内というのはもう少し遠いのです。
なにしろ、相手は長期滞在客。
週末の休みに渋滞を押して海水浴や温泉に行くわけではありません。
それに、東京に限っていえば新幹線という日帰り圏を飛躍的に伸ばすインフラが、文字通り四方に伸びています。
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ということで、上にあげた場所のさらに外側、東海道新幹線(は、運行密度からいって特別ですが)なら名古屋あたりまで、北陸新幹線なら長野市を中心とした善光寺平まで、上越新幹線ならトンネル向こうの越後湯沢まで、東北新幹線なら福島市付近までが該当するのではないでしょうか。
新幹線の走っていない地域でも、たとえば山梨県の富士五湖や峡北地域、群馬県の草津・四万温泉、福島県いわき市など浜通地方も入ってくると思われます。
そう考えると、東日本大震災に際しての原発事故は、本当に大変なことだったのだと思います。
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(東京は富士山が近いのも魅力のひとつです)
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お次は3番目の条件、「文化があること」について書きたいと思います。