(ホームから路上までの距離が短く、段差がない出口はブロンプトンには便利なのです)
横須賀線の北鎌倉駅で下車し、梶原方面への坂道をのぼります。
ところで、北鎌倉駅は今どき珍しく対面プラットホームなのに跨線橋も地下道もありません。
下りホームにも上りホームにも改札はついていますが、下りホームのそれ(東口)は申し訳程度(普通の改札機と簡易式改札機が各1台)の機能しかありません。
メインのバス通り側改札口(西口)へゆこうとすれば、自分たちが乗車してきた列車をやり過ごして、踏切が開くのを待たねばなりません。
また、駅舎とプラットホームには段差があるため、西口へは階段をおりる必要があります。
そこで、さっさと東口から出てしまい、電車が発車していなくなるまでにブロンプトンを展開してしまい、円覚寺の前の踏切を渡った方が人混みを避けることが出来ます。
バス通りに出たら大船方面へと少しだけ戻ります。
北鎌倉西口の前を通り過ぎ100m先のコンビニ付近で左折します。
しばらくは閑静な谷間の住宅地を走り、右手に田んぼが見えたあたりから坂道がきつくなります。
鎌倉ってお米をつくっているところがあるんだ。
鎌倉米としてブランド化したら成功しそうですが、あの耕地面積では売るほどつくっていないでしょう。
谷の奥のつづら折りは、ゆっくりなら漕いで登れるレベルです。
左側にテニスコートをみて、坂を登りきった場所が葛原岡神社の入口になります。
ここからは神社までは350mほどの尾根上の細い道です。
車一台がやっと通れるほどの細道ですが、実は週末や祝日、祭礼が実施される日の10時から17時を除いて、車両が通行できます。
このブログを読んでいる人だけに教えますが、八幡さま(鶴岡八幡宮)前の交差点から北鎌倉の駅まで渋滞がつながっているとき、週末でも10時前であればこの道を通れば銭洗い弁天の前を通って鎌倉駅裏とか六地蔵に出ることができるのです。
私が知っている鎌倉への抜け道はここともう二か所ありますが、そちらは軽自動車、或いは二輪車しか通れませんので、事実上普通車が通り抜けられる唯一の抜け道です。
ただ、鎌倉へ車で来ても域内は大渋滞で駐車場も満車の嵐ですから、折りたたみ自転車のほうが数倍良いと思います。
なお、葛原岡神社手前で富士山を望むことができます。
葛原岡神社(くずはらおかじんじゃ)は付近の源氏山公園とあわせて桜の名所です。
ここは後醍醐天皇による鎌倉幕府討幕のために味方を募って捕らえられ、鎌倉で処刑された日野俊基を祀った神社です。
といっても、明治維新後に南朝(吉野朝廷=後醍醐天皇方)が正当な皇室の系図と認められた後の創建のため、創建は明治20年と新しいのです。
葛原岡神社から東側をみると、亀ヶ谷(かめがやつ)を挟んで鎌倉アルプスの山並みが見渡せます。
ここからみると、山また山で開発が進む前の姿を想像できます。
葛原岡神社を後にして、源氏山公園を通り抜けます。
尾根上の道を注意深く選択して、山を下りないように注意しながら南西方向へ向かいます。
講演を抜けてしばらくゆくと、鎌倉市街の向こうに材木座海岸や逗子マリーナを遠望できる場所を通ります。
午前中ですと逆光になって海が輝いています。
その海にウィンドサーフィンの小さなセールが左右に行き交うさまが見て取れます。
こちら側の山から海を見ることが少ないせいか、見慣れた鎌倉の海もここからだと新鮮です。
その先、道路の左手には「佐助二丁目27」右側には「梶原五丁目14」という住居表示がかかったY字に分岐した場所で舗装路は切れます。
右に進めば一向堂跡で山を降りてしまうので、道を左にとります。
すると、車の走れる幅の道路が途切れるお宅の玄関先に無農薬のレモンが無人販売されていました。
これを齧りながらブロンプトンを押し歩きしたら、それこそ昔の青春ドラマみたいだと苦笑しながら過ぎると、すぐ先に「自転車・バイク乗り入れ禁止」の表示が。
いよいよ源氏山ハイキングコース突入です。
ここから先は、たとえ平らであっても自転車には乗りません。
ハイキングコースに入ってすぐ、「右 桔梗山」の標識があります。
たしか大船駅や藤沢駅から桔梗山行きのバスがありましたが、本当に山頂があるとは知りませんでした。
入ってみたいけれど、今回は尾根の探索が目的なので直進します。
ハイキングコース内はアップダウンがかなりあって、結局踏み入れてすぐに衣張山同様ブロンプトンを担ぐ羽目になりました。
登りはいいとして、下りで足場が悪いと自転車ごと転んでしまいそうです。
(左の道へブロンプトンを担いでゆきます)
(担いでおりるのも慎重に)
要所に道標があって、大仏までの距離と源氏山からの距離が表示されているため、スマートフォンの地図アプリを見なくても、ハイキングコースのどのあたりにいるのか分かるようになっています。
長くて階段のような下りを降り、源氏山公園から700m、大仏まで1.9㎞の道標がある地点で佐助稲荷神社、長谷(住宅地方面)の道が左に分かれます。
これは長谷大谷戸の東側、新佐助隧道の上を通り、鎌倉文学館や甘縄神明寓へ続く尾根の道ですが、海まで続く主尾根ではないので、右の道を選択します。
(源氏山―大仏ハイキングコースの樹間から稲村ケ崎と鎌倉パークホテル付近を望む)
さらに進むと、稲村ケ崎へ続く尾根と、由比ヶ浜の端、そして伊豆大島が木々の間から見えるところが途中に一か所だけありました。
計画ではあの尾根上を進むつもりでいるのですが、背後からみてもかなり痩せて(=尾根が切り立って細いこと)います。
踏み跡だけでもあればブロンプトンを置いて探検するつもりでいますが、背後から眺める限り、道はなさそうです。
地図上にもまったく線が引かれていません。
やがて源氏山公園から1.1㎞、大仏まで1㎞、すなわち源氏山ハイキングコースの中間地点で樹(ITSUKI)ガーデンという名の喫茶店の看板を見かけました。
下の車道からだと延々と階段を登ってたどり着くことで有名なこのお店も、尾根側からは苦労なくするりと入れそうですが、これから道なき道をゆこうという人間が、冒険旅行に出る前の英国紳士みたいに優雅にお茶というわけにもゆかないので、通過します。
その先も、自転車を押し歩くというよりはほとんど肩に担いで歩くという状態が続き、いよいよ大仏トンネルの上を通過かと思ったら、ものすごく急で長い下り階段が現れました。
階段とは名ばかりで、ほとんど急斜面です。
ムム、スキーを履いていればこんなくだり斜面自転車を担いでいたってどうってことないのですが、あいにくただのウォーキングシューズです。
下からのぼってくる人が途切れるのを待って、もったいないと思いながら階段を一歩一歩踏みしめてくだりました。
到着したところは、大仏トンネルのすぐ上ですが、尾根からはだいぶ下ってきてしまいました。
すこし平らな場所に家が建っているのですが、車が入れない場所にあるせいか、住んでいる人はいないようです。
あの賑やかな大仏のすぐ近くに、こんな廃屋があるなんて、近未来の日本を暗示しているような気がしました。
そして目の前にはまた登り返すための長い階段が2つそびえています。
右は大仏切通しへ続く階段で正面は道標なしなのでどこへ行くのかわかりません。
尾根上に復帰するにはどちらへ行ったものか迷います。
とりあえず、切通しは尾根のうえで、経験則からいうと頂上で尾根の道と十字に交差していることが多いため、大仏切り通しへの階段を登ります。
ところが尾根の上に戻っても、そのまま向こうへ下る道だけで、ちっとも横へ入る道が見当たりません。
仕方なく、ブロンプトンを担いで今登った長い階段をくだり、正面の階段を登ることにします。
この道標なしの階段、明らかに観光客の侵入を拒絶しているようでもあり、それに途中カーブしていてものすごく長いのです。
ああ、軽い気持ちで冒険心を起し、こんなはずではなかったと後悔するいつものパターンです。
しかし、後悔といいながら未体験ゾーンに突入するワクワク感はおぼえているのです。
とにかく、この階段を登らねばと、ブロンプトンを担いで取りつくのでした。(つづく)