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冒険というとお金と時間と体力が必要と思っていらっしゃる方も多いと思います。
しかし、近所で小さな冒険はできます。
高校の頃に読んだ新田次郎先生の小説『孤高の人』は、登山家、加藤文太郎の物語でした。
なんで読んだのかというと、スキーの帰りの急行電車の中で、お向かいのボックスシートに座った山帰りの大学生が、その本を読んで泣いていたからです。
主人公は最後に後輩と槍ヶ岳の北鎌尾根で遭難死するのですが、天候急変の描写がリアルなほかは、泣けるような場面はありませんでした。
彼の登山家としての素質を養ったのは、住んでいた神戸の街の裏手に広がる六甲の山々でした。
若いころ、朝早く家を出た彼は六甲山を縦走して日に100㎞も歩いたといわれます。
まるで天台宗の千日回峰行並みです。
旧東海道を日に50㎞ほど歩いて足を痛めた経験のある身としては、山道を一日100㎞なんて、山岳マラソンのようなものかな(実際の加藤氏はきちんと装備して山へ入っています)と思ってしまうのでした。
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そこまでは無理としても、近郊の山、というか丘でハイキングコースのない(というところが冒険です)道なき道を縦走するということをやってみようと思いました。
アクセスにブロンプトンを使い、迷ってもいいように住宅に囲まれた低山として、三浦半島か房総半島の山を最初は想定しました。
しかし、実は双方とも迷うとけっこう厄介な場所もあることは、オフロードバイクで走破して、林道からの登山を経験しいるので知っています。
それに、特に房総半島の山々は地形が複雑なのです。
そこで、日帰りの範囲で安全にということで、普段自転車で走り回っている鎌倉の山を対象に、今回はブロンプトンを使った(本当は必要ないかも?)プチ冒険を試みてみました。
鎌倉程度の距離であれば、山道や階段でもブロンプトンを担いでしまえば何とかなります。
それが無理なら、たとえば山道の入口にブロンプトンを停めておいて、往復して戻ってきたり、一度麓へ出て谷を回って戻ってくることも可能です。
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さて、その鎌倉を囲む山々です。
鎌倉でハイキングというと、真っ先にあがるのが鎌倉アルプスで、建長寺から天園へのコース(別名天園ハイキングコース)をいいます。
半僧房(147m別名勝上献=「献」の字は山冠がつきます。読みは「しょうじょうけん」)から、鷲峰山(127m)、大平山(158m)、天園を経て瑞泉寺裏手の天台山(141.3m)まで、文字通り鎌倉のアルプスを縦走します。
たかだか標高150m程度の丘と馬鹿にしてはいけません。
足場が悪く、かなりきついアップダウンでふだん運動不足の人は確実に顎を出すと思います。
鎌倉を京都に見立てるならば、嵐山から北山にかけての山々でしょうか。
でも、整備されたハイキングコースですから探検気分は味わえません。
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これに対して先日も話題にした衣張山(121m)から名越切通しにかけての山は、京都でいえば東山にあたります。
衣張山からまんだら堂跡にかけては、鎌倉アルプスに比べれば人出は少ないものの、やはり道標もあって整備された山道です。
ということで、鎌倉を囲む山々の中で、唯一「あそこはどうなっているんだ?」という疑問を常々感じているのが西側の山々なのです。
そこは京都であれば西山にあたる山となります。
京都の西山とは、山陰道の南、向日町から長岡京にかけての西側背後の山を指します。
「北山杉」とか「東山三十六峰」という言葉は聞いたことあると思いますが、京都の西山って前はかなりマイナーでした。
それがJR東海のCMに善峰寺が出てきてから急に人が増えました。
では、鎌倉における西側の山とはどこでしょう。
おそらくは、銭新井弁天の上、葛原岡神社から大仏の裏手の山になるでしょう。
そこには源氏山ハイキングコースがあるのは知っています。
たしか佐助稲荷の奥にも道標がありました。
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けれども、大仏切通しから南の山はどうなっているのでしょう。
そのまま尾根筋をたどれば、長谷観音の裏手の山から極楽寺切通しに出るはずですし、極楽寺の谷戸を避けて西へ迂回すれば、鎌倉山をかすめて稲村ケ崎の駅裏に出るはずです。
でも、鎌倉に住んでいる人でさえ、そのあたりの山がどうなっているのか知っている人はごくわずかです。
ところで、鎌倉にあって京都にないものに海の存在があります。
京都を囲む山を歩いても、さいごに海辺に出ることはできませんが、鎌倉なら山歩きの後に季節が良ければ火照った足を海に浸けることも可能ですし、水が冷たくてかなわない季節でも、最後は海をぼんやりとながめることができます。
衣張山ハイキングコースの愉しみは、最後に山から眺めていた海に出られることなのです。
これ、鎌倉で育った人にしかわからない感覚なのです。
だから、山歩きをした後に稲村ケ崎の海に出ることを想定してみたのです。
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ところが、いくら情報を集めても大仏切通からさき、山道をたどって極楽寺や稲村ケ崎へ出るコースの情報はありません。
(谷筋ならあるのですが)
ということは探検気分が味わえる分、ルートファインディングの勘を養うチャンスです。
幸い、真冬なので藪漕ぎも何とかなりそうですし、凶悪な虫にも出会う可能性はほぼありません。
現代はスマホもあるし、位置情報さえわかれば何とかなるだろうと思い、ブロンプトンをつれて北鎌倉駅へ向かうのでした。
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