東急東横線の旅も残すところあと一駅となりました。
このシリーズ、50回も続けてきたのだと気が付いて、ちょっとした感慨にひたっています。
さて、今日は反町駅から横浜駅へ向かうわけですが、いちばん楽で安全な方法をご紹介しようと思いました。
まだ東横線の横浜駅が地上にあったころ、この区間には高島山トンネルという隧道がありました。
東横線は代官山と反町という両端で丘陵をトンネルで越えていたのです。
東横線の開通時は、このトンネルを抜けてカーブをきり、東海道線と並行したあたりに神奈川駅があり、そこが国鉄、京急、市電の暫定ターミナル駅だったそうです。
つまり、東横線敷設時からある古いトンネルなのです。
2004年1月末に東横線がみなとみらい線と直通するにあたって横浜駅が地下化した際、東白楽駅の先から横浜駅の手前までの線路跡が東横フラワー緑道として整備されたことは、前々回にご紹介したとおりです。
緑道はトンネルにも及んでいるため、そこを自転車は押し歩きしながら通過できれば、反町側から横浜へ抜けるには、車の来ない緩い下り坂のみで高島山の下をパスできるのです。
ところが…。
反町駅南側の緑道入口には、こんな表示がなされています。
『東横フラワー緑道内は自転車の進入及び持ち込み禁止 神奈川土木事務所』
神奈川土木事務所って、前回も三ツ沢せせらぎ緑道で自転車の進入を禁止してう回路も表示せず国道1号線の小学校校門前の歩道を走れといわんばかりの態度をとった行政です。
まぁ、それくらいなら事務所に自転車でヒヤリとした歩行者が怒鳴りこんだとか、車両なのだから公園内で自転車(車両)に乗るのは禁止できるのですから、法的な根拠に基づいているので仕方ありません。
ここで大問題なのは『持ち込み禁止』と表示してしまったことです。
自転車は降りて押し歩きしている限り、歩行者なのです。
これはエンジンを切ったオートバイを押し歩きしている限り法的には歩行者になるのと同じことです。
つまり、自転車もオートバイも自走しておらず、動力を切って押し歩いている限りは車両ではなく単なる「物」にすぎません。
にもかかわらず『持込禁止』としてしまったら、たとえば「キャリーバッグを持ち込んでの通り抜けを禁止します」とか「赤い服を着ている人の通行を禁止します」と公共の場所の出入りや公道の通り抜けを持ち物で禁止しているのと同じことになります。
あまりにもひどいので、神奈川土木事務所に電話で確認したところ次のような趣旨の回答でした。
「押し歩きを許可しても目を盗んで乗ってしまう人が多いので、警察署や町内会からの依頼で表示している。禁止をする根拠となる法令や条例は無い」
あれま、公僕が根拠条文もなしに持ち物で選別して歩行者の通行を禁止するなんて、すごくまずいと思うのですが、自分のところで責任を取ろうとせず、警察署や町内会に頼まれたからなどと言い訳するところはもっと悪いと思います。
仮に私がそちらに尋ねたとして、「お願いはしたけれど強制はしていない」なんてどこかで聞いたような対応を期待しているようでもあり、住民を馬鹿にしています。
もちろん、私個人は走行禁止の場所を人の目を盗んで走ることもしません(そんなことをするくらいなら、迂回します)し、うっかり見落として注意されたら謝ってすぐに自転車を降りているつもりです。
たとえば公園内での野球を禁止できるとしてもバットやボールの『持込禁止』とは表示できないことくらい、公務員ならイロハのイで知っていることでしょう。
しかも当該事務所は公園のプロじゃないですか。
堂々とこんな回答をする公的管理者には、呆れてものが言えません。
私がなぜここまで問題にするかというと、このトンネルを通り抜けずに緩やかな道を迂回しようとしたら、東側にしろ西側にしろ、交通量の多い4車線道路の車道か通学路にも指定されている歩道を走らざるを得なくなるからです。
車道にはいつも違法駐車の車がいて、横浜駅が近いためバスも複数系統が頻繁に走り、いっぽう歩道にはバス停もあって人の通行や滞留が多く、自転車は車道を走れば危険に晒され、やむを得ず歩道を走ると今度は歩行者から煙たがられます。
いくら禁止を無視して乗る人がいるからといっても、行政が自らルールを破ってしまっては、却って逆効果だと思います。
たとえば緑道にFRP製の固定コーン(赤白の道路でよく見るものです)を設置するとか、路面を色分けすることによって、歩行者と自転車を分離するとか、もっと前向きなアイデアを出せないのでしょうか。
緑道整備の際に盛り込めばたいしてお金もかからないし、出入り箇所の少ない線路跡の緑道だからこそ出来るはずです。
にもかかわらず、東横フラワー緑道には時間外通行を制限するための鉄柵(おそらくは浮浪者対策)や、監視カメラなどはバッチリと設置されています。
そんなに歩行者が信用できないのなら、いっそのこと全面通行禁止にして別の用途を考えたらどうなのでしょう。
たとえばトンネルをワインセラーとバーにして賃料を取るとか。
昨年の11月末に、横浜国道事務所が主催して「かながわまちづくりシンポジウム」が行われたそうです。
そこでは、大和市などが自転車専用レーンの整備について発表したものの、横浜市は放置自転車対策の進捗状況を説明するにとどまったとか。
パネリストも携帯電話やスマホを操作しながらの自転車運転がどうのこうのって、それは自転車の問題ではなく、人間の通信機器の扱い方の問題でしょうに。
横浜という土地はもっと先進的で新しい試みをとりいれるのに意欲的だと思っていたのですが、心底がっかりしました。
昨年になってこっそりと山下公園内の自転車走行を全面禁止にするとか、その代わりに公園前の車道に自転車レーンを設置するような措置は一切せず、あとは自転車の方で何とかしてくれと言わんばかりの態度を見るにつけ、横浜市では自転車に対してよそへ行ってやってくれ的な方向に進んでいる気がします。
では、ブロンプトンに乗る私はどうしたらよいでしょう。
たたんだブロンプトンを曳きながら、「禁止できるものなら禁止してみろ」という挑発的態度でトンネルを歩いて通り抜けるべきでしょうか。
いえいえ、ネガティブに行動しても、不法行為に反抗しているだけでは精神的によくありません。
おかしな行政は彼らの問題ですから放っておいて、前向きで合法的かつ安全に高島山を越える方法を考えてみましょう。
高島山(住所名では高島台)という山は南北に500m~600m、東西に770mほどの丘で、反町駅の標高が7m程度に対して頂上は40m以上あり、両側が切れています。
東側は旧東海道の青木橋であり、国道1号線が走っています。
前回登場した多米氏が城を構えたのも、東海道を見下ろす高島山の東端です。
西側は沢渡交差点で峠を越えるように横浜駅西口正面からの市道が、国道1号線のバイパスへ向けて伸びています。
どちらの道も交通量が激しく、裏道がないため歩道を走らざるを得ないことは前述したとおりです。
そこで陰影段彩図化された地形図を拡大してよく確認してみましょう。
高島山は代官山同様に、南の横浜側は壁のような急斜面、北の反町側にはいくつかの谷を抱えています。
崖線の緩急の違いについては、形成にヒントがあるという話を代官山のところで書いたとおりです。
ただ、東京都内の丘陵や谷間に対して、なぜ横浜のそれのほうがより急で切り立っているのかについては、私は仮説を読んだことがありません。
おそらくは、浸食谷の形成が神奈川県側の方が進んでいて、より深くなっているということなのだと思います。
さて、反町側から高島山に登る場合は、この谷間を上手に利用してジグザグにのぼることです。
斜面を直登する道よりも、横切る道の方が傾斜は緩いはずですから、短い直登路と長い斜面横断路を組み合わせることができれば、自転車でも登れる道を見出せるわけです。
そうして作成したルートを実際走ってみますと、多少頑張れば難なく高島山の頂上まで辿り着くことができました。
今回は東横フラワー緑道の考えられない表示の話(正直『緑道』の存在を一切無視しようかどうか迷いました。でも東横線の線路跡ですし、一応横浜市民ですし、誰も声をあげなければそのままだと思い、敢えて指摘させていただきました)で長くなってしまいましたので、次回高島山の上をご案内し、横浜駅へと滑りこみたいと思います。