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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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横浜の山手地区へBromptonで坂道をのぼる(その11)

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(左;谷戸坂 はっきり言ってきついです 右;見尻坂 スロープないので担がないとのぼれません)

横浜へ観光で来た人たちは、元町から尾根上の山手地区へのぼるのに、大概はフランス山公園脇の谷戸坂(35.440628, 139.652628)か、外国人墓地の東隣にある見尻坂(35.440881,139.651668)を利用すると思います。
しかし、元町公園の脇を尾根筋へとのぼる貝殻坂は、のぼりきるとちょうど山手資料館の真正面に出ますし、春は桜を見上げながら階段脇のスロープを、自転車を押しながららせん状にあがる格好となるので、この付近ではもっとも「絵になる坂道」だと思います。
車も来ませんしね。
函館の八幡坂、長崎のオランダ坂みたいに港は見えないけれど、横浜らしい坂じゃないかなと思います。
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(左;これからは紫陽花の季節ですね 右;こんな風にらせん状にカーブしてます)


乗ったまま登りたいがためにわざわざ遠回りして来たのに、今更何をと言われそうですが、恋愛をモチーフにしたドラマや映画って、なぜか自転車を押して歩く男女の姿が描かれることが多いじゃないですか。

(特に免許の取れない年齢の人たち)
単なる「刷り込み」なのかも知れませんが、Bromptonって押して歩いても雰囲気がある自転車なので、デートで来たならぜひのぼってみてください。
若い人たちに限らず、免許を返納したお年寄りのカップルが、ブロンプトンで横浜の坂をゆっくりとのぼってゆく情景なんて、クールだと思ってしまいますよ。
『乗ってよし、畳んでひくもよし、押し歩きもこれまたよし哉ブロンプトン』なんちって。
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(左;坂の上部からみなとみらい方面を望む 右;坂上正面は山手資料館です)
 
さて、その東隣にある横浜外国人墓地(35.439531, 139.652398)ですが、日本の「墓地」につきまとう暗く陰湿なイメージがあまりありません。
子どものころから西洋のオバケってどことなく陽気でカラッとした乾いたイメージだった気がします。
きっと死生観の違いなのでしょう。
日本の幽霊がなにか怨念のようなものを背負って「うらめしや~」と呪うのに対して、狼男にしろ、ドラキュラにしろ、フランケンシュタインにしろ、怖いには違いないのですが、弱点もあって、どこかにコケティッシュさを秘めている憎めない存在でした。
それに対応するように、西洋のお墓ってどことなく乾燥した感じがして、死者が集まって陽気にパーティでも開いていそうな気がします。
でも、西洋のお化けのイメージも、1970年代の映画「エクソシスト」とか「オーメン」が出たあたりから、だんだんと「洒落にならない」方向へ傾いている感じも受けます。
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(桜の下の貝殻坂。お墓としては一等地ですね)
 
横浜外国人墓地は、ペリーが前年に渡した国書の返答を求めて再来日した1854年、事故死した水兵を埋葬する場所が欲しいと要求し、当時この山の麓にあったお寺の境内の一部を提供することで合意したのがそのはじまりです。
その後、開港後に相次いだ攘夷派による外国人襲撃事件の犠牲者が葬られるたびに墓区は広がってゆき、今からおよそ150年前の1864年に横浜居留の各国公使との間に正式に覚書が取り交わされ、高台の上にまで墓域が広がりました。
維新の後、新政府から「これまで通り墓地は無償で貸すが、維持管理費用は各国領事団で負担して欲しい」と申し出があり、以降は墓地の管理委員会を設けて維持にあたることになりました。

その後、関東大震災によって現在の元町プラザ付近にあった寺院が全壊して移転したのち、外国人墓地だけが管理委員会の手によって保守されて今に至ります。

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(外国人墓地は夏より冬、昼間より黄昏時がお勧めです)
 
外国人墓地は3月~12月の週末は、財団法人横浜外国人墓地と名前を変えた管理委員会によって、週末は一般公開されています。
一口200円の寄付をすると、どこに誰のお墓があるのか示した図をもらって、墓地の上部をぐるりと一周できます。
公開していない日でも、時間内であれば入口を入って右手にある資料館には入れますので、見学してみてはいかがでしょうか。
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(朝は早すぎると門自体が閉まっていますし、昼間よりも・・・)
 
外国人墓地と見尻坂の路地を挟んで東側の一段高い場所にそびえるのが、横浜地方気象台です(35.440007,139.652725)
こちらは外国人墓地とは逆に、平日の9301700に建物内部の一部を公開しています。
建物自体が昭和2年の竣工で、外観はいかにも大正から昭和にかけてのモダニズムを感じさせます。
山高帽子にロイド眼鏡を掛けて、革の書類鞄を抱えた当時の職員が今にも出てきそうです。
いわゆるモボ・モガファッションでブロンプトンに乗っても似合いそうですよね。
自分がやったら仮装大賞の予行みたいになって、冗談っぽくなりそうですが。
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(夕方の方が美しいです。西斜面だからでしょうかね)

入口の両側の石積みは「ブラフ積み」といって、この地区独特の石積み遺跡です。
改めて説明するつもりですが、煉瓦でいうフランドル積み(フランス積み)という、施工が面倒くさい積み方をしていて、明治の前半までにしか見られない珍しい石積みなのです。
(ちなみに石は房州石とのことですから、鋸山あたりの石かも知れません)
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(横浜地方気象台。入口両側の石積みがブラフ積みです)
 
気象台と山手本通りを挟んで斜め向かいにあるのが、岩崎博物館(ゲーテ座記念)です(35.439426,139.653514)。
ここはもともとゲーテ座という芝居小屋が明治の中ごろに開かれました。
私も長いこと勘違いしていたのですが、ゲーテ座のゲーテって、あの「若きウエルテルの悩み」を著した文豪のお名前ではなく、英語の“Gaiety”からきているのだそうです。
カタカナに直すと、「ギョエテ座」ではなく「ゲィティ座」です。
そのゲーテ座が関東大震災で倒壊してから69年後の1992年、横浜駅西口にある裁縫の専門学校、岩崎学園が経営する服飾関係の資料や収集品を展示する博物館として、岩崎ミュージアムが開館しました。
展示品の中にはかつてのゲーテ座の遺構もあります。
また、シェークスピア等を上演していたゲーテ座を記念して、110席の小さなホールが1階に設けられています。
岩崎博物館の裏手が横浜インターナショナルスクールで、平日の朝など、このシリーズのなかでご紹介した陣屋坂方面へ子どもたちがゾロゾロと歩いてゆきます。
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(左;山手本通り沿い側から 右;増築した時に出てきた古井戸の遺構と、気象台の庭にある観測機器。そういえば、昔はどこの小学校にもあった芝生のコーナーに設けられた百葉箱、最近は見ませんね。屋上の電子センサーにとって代わられたのでしょうか。だとすると気象ロマンの無い話です)
 
岩崎博物館の30mさきが港の見える丘公園です(35.440418, 139.654753)
山下公園と並んで、横浜の公園の中では全国区の知名度を誇る公園です。
しかし、開園は意外と新しくて1962年です。
ということは、公園としては新参者で、これまでご紹介してきた山手公園や元町公園の方がずっと歴史や由緒があるのです。
にもかかわらずこの公園が有名なのは、歌の題材として取り上げられてきたからだといいます。
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(岩崎博物館。クリスマスの時は入口がこんな感じになります)
 
この文章書くために、戦後の流行歌「港の見える丘」をYoutubeで聴いてみたのですが、同じころに流行った美空ひばりさんの「リンゴの唄」なら知っているのに、こちらの曲はさっぱり分りませんでした。
世代によっては、この公園で思い浮かべる歌といえば「ブルー・ライト・ヨコハマ」でしょうか。
いま歌詞だけ読むと、愛に飢えた「くださいさん」がちょっとお酒でラリッっているようにも読めるのですが、作詞者の記事を読むと背景が全く違います。
当時の海外へは行けない普通の日本人が、横浜の港と進駐軍向けのバーやホテルなどで海外との接点を求める、いつぞやの「スターダスト」の雰囲気が街全体を覆っていた頃の横浜を知らないと、この歌の雰囲気はつかめないみたいです。
いしだあゆみさんは、自分の中で「北の国から」のお母さんだったり、東急田園都市線沿線に住んでいて、金曜日にご活躍する人妻だったりするので、無理かな。
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(左;ようやく谷戸坂上の港の見える丘公園前に到着です。右;「港の見える丘」の歌碑。あまり気付く人はいません)
 
あ、私の世代だと歌でいえばオフコースの「秋の気配」もありましたね。
小田和正さんは金沢文庫のご出身だから、「港の見下ろせる小高い公園」っていったらここを指しているのでしょう。
(あの歌も要は「飽きの気配」ってオチですが…オフコースのファンの方ゴメンナサイ)
ダメですね。
せっかくカップルで来たら貝殻坂をのぼってという話ではじまったのに、恋愛系の話になると、結論を茶化してしまうのでした。
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http://hamarepo.com/story.php?page_no=0&story_id=2940 こちらの記事を読むと、今の横浜にブルー・ライト・ヨコハマのイメージは無いそうです。開園当時の港の見える丘公園の下に広がる景色に、呆然としました)

 

次回は港の見える丘公園の中と、ワシン坂の方をちょっとご紹介してこのシリーズを終わりにしたいと思います。

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