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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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TY17妙蓮寺駅

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菊名駅と妙蓮寺駅の中間、西寄りの丘の上にある篠原八幡神社((35.505282,139.623353))から、妙蓮寺駅へと向かいます。

神社の参道鳥居の正面の坂を下ってゆきます。

途中案山子がたっている畑などがあって、のどかな雰囲気の住宅街です。

東横線というと、東京と横浜を結ぶ大都市間私鉄というイメージが強くて、今でこそ車窓はどこまで行っても建てこんだ住宅街という雰囲気ですが、40年くらい前は全く違いました。

電車が渋谷を出て中目黒を過ぎるあたりから住宅街になりましたが、多摩川を越えるともう田んぼや畑の広がる田園風景で、春先などはレンゲなどが畔に咲いておりました。

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(篠原八幡神社)

それが白楽駅付近からふたたび住宅が増えて、東白楽駅を過ぎたころに遠くに港に立ち並ぶクレーンが見えてきて、反町駅の先でトンネルをくぐると突然大きな横浜駅に到着という雰囲気でした。

あのころの車窓の方が、わずか40分の移動の間に様ざまに変化があって面白かったと思います。

今こうしてブロンプトンで沿線散歩をしていても、わずかなスペースにかつての面影を見つけるくらいですから。

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(五九郎丸さんという、なにやらラグビー選手のようなお名前の案山子さん。このポーズは…)

もっと昔、東横線が敷かれたころには都立大学から南はずっと竹藪の中を走っていたといいます。

今の東横線が、文字通り藪の中を疾走していたら、それこそSF小説みたいです。

『あるとき電車の中でスマホからふと眼をあげて外をみると、両側の車窓は薄暗い竹林がどこまでも続いていた。

自由が丘という駅で降りると、駅前広場はやはり竹林に囲まれて、そのなかの細い路地を進んでゆくと、鶴亀千年堂という和菓子店がぼうっとあらわれ、なかの店員はなぜか十二単を纏ったまま忙しく菓子を売っているのであった』

そんな私小説をもとに、竹をモチーフに和菓子を創作してもらえないでしょうか、万年堂さん(笑)

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(旧綱島街道にある酒屋さん もう営業しておりませんが、かつては杉玉がさがっていました)

冗談はさておき、篠原八幡宮の正面のゆるい下り坂をおりてゆくと、1kmほどで旧綱島街道に突き当たります(35.502217, 139.633805)から右折して妙蓮寺駅方面に向かいます。

旧綱島街道に出てすぐ右側に、古い酒屋さんがあります。

五年前までは営業されていて、軒に杉玉がつるされておりました。

杉玉は酒屋さんの印です。

というのも、旧東海道の旅で得た知識です。

 
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なお、この酒屋さんから妙蓮寺駅にかけてあたりが、菊名駅~東白楽駅間の旧綱島街道でいちばん高い場所、すなわち峠になります。

地形図を見ればわかるのですが、東横線は菊名から横浜に向ってたいへん複雑な地形の谷間を縫うようにして走っており、菊名から妙蓮寺に向っては鶴見川の支流をさかのぼる形をとり、妙蓮寺と白楽の間ではいったん子安へと流れる入江川上流の谷間へ出て、ふたたび白楽駅脇で掘割のかたちで、神奈川宿へと流れる滝野川の谷へ出るという、敷設時の土木技術として精いっぱいのルート選択をしています。

地理に興味があれば、妙蓮寺駅の渋谷側手前と白楽駅のホームあたりで2つのピークを越えていることが車窓からもわかると思います。

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(菊名橋交差点。左右に交差しているのが水道道です)
 

さて、旧綱島街道に出て南へ220mもゆくと、菊名橋交差点(35.500260, 139.633290)です。

その手前左側が菊名池です。

この池は灌漑用として平安時代からあった池なのだそうです。

そんなに歴史が古いとは思ってもみませんでした。

昔は水道道をはさんでプールのある菊名池公園となっている部分までが池でした。

平安の昔では弘法大師伝説とかあるのかしらんと思っていたら、現在公園に祀られている弁財天は、もともと龍神社だったようです。

龍神といえ水の神さまで雨を呼ぶといわれています。

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この場所は高地といいましたが、高いところに水を貯めてそこから分水するのは今も昔も変わっていないようです。

たとえば、玉川上水を走った方ならわかると思うのですが、途中武蔵野市にある境浄水場は、23区内最高地点のすぐそばにあります。

玉川上水もそうですが、水は高い場所に貯めたり流したりして、そこから勾配を使って落とすという方法が、揚水施設のない時代はいちばん効率的だったのでしょう。

この菊名池も、近隣に分水するための水として大切に扱われてきたのだと思います。

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(春の菊名池)

池の周りは自然が残っていて、ここは生物の宝庫ともいわれています。

トンボに代表される水生昆虫がたくさん生息しています。

ふだんはカルガモやバンがのんびり泳いでいます。

バンは池の真ん中に浮島のように残された葦の生えている部分で子育てをしているのを眺めることもできます。

カルガモの方はずいぶん人懐こくて、ベンチに腰かけて本を読んでいると足元に寄ってきたりしますが、野鳥ですから餌をあげてはいけないのだと思われます。

10月から4月にかけては、渡り鳥のキンクロハジロを多く見かけます。

宅地化が進む中で、この池はいつまでも残してほしいものです。

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(夏の菊名池)
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(バン)
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(キンクロハジロ)

龍神ついでに妙蓮寺駅から電車に乗って西武池袋線のひばりが丘までゆき、そこからブロンプトンで田無神社~境浄水場~仙川~二子玉川~二ヶ領用水~元住吉と走ってみるのはどうでしょう。

龍だらけの田無神社は、田無の地名の由来がわかりますし、境浄水場は前述の通りです。

仙川はお隣の野川同様上流部には自然が残っていますし、二子玉川の多摩川河川敷には兵庫島公園があります。

川を渡って二ヶ領用水を東横線沿線まで戻れば、水利を考えるポタリングになるのではないでしょうか。

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(秋の菊名池)
 

旧綱島街道に話を戻します。

菊名橋交差点で交差するのが横浜水道道です。

近代水道発祥の地としての横浜の歴史がこの道にはあります。

開港後の横浜は、港湾部の埋め立てによる人口の急増に伴い、それまでの丘陵部からの湧水では上水が賄えなくなりました。

コレラの流行もあって、相模川から導水管を敷設して近代水道をひくことに決定し、1883年から2年間をかけて、イギリス陸軍工兵少佐 HSパーマーの指導を仰いで、上水道を完成させました。

資金は横浜の商人、原善三郎や大倉喜八郎など18人が出資して水道会社を設立したそうです。

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(冬の菊名池)

水道道は当初の鋳鉄管(ちゅうてつかん)はグラスゴーから輸入したそうで、こんな場所にもイギリスの影響が残っています。

この辺のいきさつは、保土ヶ谷区にある横浜市水道記念館・水道技術資料館に詳しいですが、両館はご多分に漏れず高い場所にある西谷浄水場に併設されているので、相鉄線の上星川駅からブロンプトンで行くと上り坂となります。

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(踏切の向こうに見えるのが妙蓮寺山門)

水道道を挟んで菊名公園プール(屋外;夏季のみ)があります。

市営施設ですが、流水プールがあって、東横線沿線の公営プールとしては子どもたちに人気のある場所です。

妙蓮寺駅から徒歩で5分とかからないので、暑い中を歩いてゆかない分気軽に行けます。

夏になったら水着を背負ってブロンプトンでプールに行くのも面白いかもしれません。

ちょっとトライアスロンみたいですが。

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(妙蓮寺駅は上下線のホームが地下道でつながっているものの、それぞれに改札があるため、階段を使わずにホームへ行ける、ブロンプトンにとっては便利な駅です)
 

菊名橋交差点から商店街を抜けて240m先の十字路左側すぐが、妙蓮寺駅です。

駅前に踏切があって、その東側には日蓮宗の長光山妙蓮寺の山門がすぐにあります。

もともとこの場所には蓮光寺という小さなお寺があって、明治後期に東神奈川にあった妙仙寺が横浜線の敷設によって移る際にこの地を選び、両方のお寺から一字ずつとって妙蓮寺になりました。

妙仙寺の創建は1350年ですから、南北朝時代です。

かたや蓮光寺の創建は天正年間ですから戦国時代後期です。

妙蓮寺って、合併してできたお寺だったのです。

なお、大正15年に東京横濱電鐵が妙蓮寺の境内に鉄道を敷設する際、ときの住職は快諾し、

無償で土地を提供したといいます。

まさに、お寺あっての妙蓮寺駅です。

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(妙蓮寺)
 

この駅は、上下線のホームそれぞれに改札があり、しかもプラットホームまでは階段を利用せずスロープだけでゆけます。

だから、これまでにご紹介してきた東急東横線の駅に比べて格段にブロンプトンをつれての利用がしやすい駅です。

くわえて、上りホームには空調設備の整った待合室まであります。

(東横線には珍しいのです)

しかも上り方向であれば次の菊名駅で特急や急行の接続が必ずありますし、時間によっては始発電車に乗ることも可能です。

私も横浜で用事があった際はここまでブロンプトンで走ってきて、夏場であればクーラーの効いた部屋で水分補給してから電車に乗ることがよくあります。

自分の下車駅までなら、横浜駅から乗車するより運賃も40円安くて済みますから、プチ・お得感と運動している感双方が味わえますよ。

 
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次回は妙蓮寺駅から白楽駅へをご案内いたします。
 

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