ここは個人の庭なので、詳しい場所をご紹介できないのですが、ブロンプトンで走っていてバラ園を見つけたときの話を書きたいと思います。
あるとき、ブロンプトンで走るのに適当な道を地図上でさがしていると、とある路地に目が留まりました。
そこは川の暗渠をさかのぼっていった住宅街の奥で、ちょうど谷間の行き止まりといった雰囲気の場所です。
同じ谷には県道が走っていますが、その道が谷をのぼって丘を越える唯一の道路で、他に路地は見当たりません。
もちろん車は走れず、人が一人やっと通れるくらいの通路です。
最初は行き止まりかと思っていたのですが、よく見ると数段の階段をのぼれば、最後は県道に出ることができるようでした。
いつも脇の県道は通っていて気になっていたものの、忙しくてその細い路地に入ってゆくことはありませんでした。
先日、路傍の花がきれいだなと思い、写真を撮りながら近くを走っていて、ふとその路地のことを思いだし、探検気分でブロンプトンに乗って入ってゆきました。
すると、玄関先に見事な薔薇が咲き乱れる家があって、尋常じゃないくらい花の芳香が漂っています。
まるでデパート地階の香水売り場のようなレベルの匂いです。
さらに脇に路地が続いていたので奥へ入ってゆくと、その家のお宅の庭はまさに薔薇の園になっていました。
山下公園の沈下花壇や、港の見える丘公園の隣の英国領事館跡にもバラ園はあるけれど、こちらの方が、密度が濃くて、繚乱状態でした。
それに誰もいないし。
品評会のポスターが貼られていましたので、おそらくは園芸品種とよばれるバラを、接ぎ木などして育種をされているのだろうと思います。
ガーデニングには全く興味がない私でも、ここまでバラにかけているお庭を見てびっくりしてしまいました。
身近なところに意外な物事を発見する楽しみは、ブロンプトンに乗ってからしょっちゅうあります。
もちろん、日常生活から離れれば離れるほど、違う文化に出会う形にはなるものの、旅というものを、未知なる場所での邂逅であると定義すれば、家からの距離はあまり関係ないというのが実感です。
ブロンプトンにまたがったら、ぜひ近場でも下車したことのない駅や、近所でも入ったことのない路地に入って行ってみてください。
ひょっとすると、びっくりするような景色が広がっているかもしれませんよ。