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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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旧東海道へブロンプトンをつれて 39.池鯉鮒宿から40.鳴海宿へ(その4)

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国道1号線の桶狭間古戦場伝説地への入口交差点(35.060895,136.980697)から、旧東海道を京方向へ向かいます。
信号の30m先を斜め左方向へ分岐しているのが、旧東海道です。
このあたりを境に道は緩い下り坂にかわります。
路地に入って一つ目の角を左折して坂をのぼって900mゆけば、桶狭間の戦いで今川義元の本陣があったというおけはざま山(35.055020, 136.972586)へたどり着けます。
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旧東海道は340m先で国道1号線に復帰するので、230m進んだ大将ケ根交差点(35.063161, 136.974811)で国道を横断し、今度は右斜め前へ入ってゆく愛知県道222号線に入りましょう。
また、この辺りが豊明市と名古屋市の境になります。
関東からずっと旧道を自分の足ですすみ、名古屋市に入ると「ついに名古屋まで来てしまったか」という気持ちになる場所です。
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(大将ケ根交差点)
 
大将ケ根という地名は、信長が義元を襲撃するにあたって、頃合いを見計らっていた場所として信公記に登場する地名です。
222号線は県道といっても、旧国道1号線=旧東海道ルートで大型車は通行禁止になっていますから、のんびりと下ってゆきます。
すぐ先の松野根橋という小さな橋の先からは、一方通行の逆走になりますが自転車は除外されています。
とはいえ、こういう場合は左右の路地から出てくる車は、自転車が車の流れとは逆から坂を下りてくるとは予測していない場合が殆どなので、カーブミラーなどに注意しながらゆっくり走った方が無難です。
もちろん、一方通行路の逆走であっても自転車は左側通行です。
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 松野根橋の先には電柱がなく、左右に商家の続く宿場然とした風景に変わります。
ここが間の宿である有松です。
名古屋市内を通る旧東海道のうち、もっとも古い街並みを残している場所です。
そして奈良県橿原市今井町、長野県南木曽町妻籠と協力して、1974年に全国町並み保存連盟が結成された町でもあります。
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市の都市景観重要建築物に指定された、連格子の入口に塗漆喰の壁をもつ200年前からの商家の街並みをゆくと、なかから客を呼び込む声が聞こえてくるようです。
もし、名古屋市内にはお城を除いて観光旅行をしてみるべきものがないと思われている方のうち、有松宿に行った経験が無い方がいらっしゃったら、ぜひ一度訪れてみてください。
これまで宿場をいくつも見てきましたが、有松の風景は愛知県内において二川宿本陣や御油の松並木と並んで必見だと思います。
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(歩いたときはまだ電線の地中化前でした―山車会館前)
 
有松のあらましは、およそ以下のようなものです。
家康によって東海道が整備されて間もなく、徳川御三家の筆頭でもある尾張徳川家は、荒れ地だった有松に、名護屋城下防衛の意味もこめて、知多半島から住民を募ってこの地に入植させました。
いわば江戸前期のニュータウンだったわけです。
もちろん、当時は愛知用水なんてないですから、水不足のこの地は農業には適していませんでした。
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また、鳴海宿と距離が離れておらず、ここを宿場にすることもできず、間の宿(昼食場所)として繫栄させることもかないませんでした。
そこで、竹田庄九郎という住人が、名古屋のお城を築城するため(当時は江戸幕府開府直後ということもあって、家康は西国大名の力を減退させるために、参勤交代とともに天下普請と呼ばれる、御三家大名の城普請をさかんに命じていました)にここに滞在していた、九州から来た大工たちの使っている豊後絞りの手ぬぐいに目を付け、街道を行き交う人たちにお土産として絞り染めの手ぬぐいを売り出したのが、有松・鳴海絞りのルーツです。
これを、尾張藩が特産品として保護・宣伝につとめたため、東海道を行き交う大名行列や商人、お伊勢参りの人々の土産物として人気を博しました。
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では、伝統工芸である有松絞りとはどのように制作されるのでしょう。
大将ケ根信号から500m、旧街道を京方面に向かって右側にある、有松絞り会館(35.066303, 136.971016)に立ち寄ってみましょう。
施設は商工協同組合の運営する販売所(1階)と無料の展示コーナー(2階)からなっていて、希望すれば有料で絞り体験教室も開かれます。
2階の展示をみると、その工程の多さにびっくりします。
 
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①図案作成:柄を決めます
②型紙制作:小刀やハト目抜きなどで模様が切り抜かれた型紙をつくります
③絵刷り:型紙を布の上に置いて、刷毛で青花を刷り込みます
④くくり:ここが絞りの所以です。様々な方法があってオリジナリティの出る工程です。太めの糸だけ、あるいは縫って布をくくる、巻き上げ台を使ってねじる、かぎ針を使うなど、大きく分けても8種類あるそうです。絞り会館にあるビデオを見ると、おばあちゃんがすごい手際の良さでくくっています。
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(重要なくくりの工程)


⑤花抜き:ぬるま湯につけて青花を落とします。
⑥染色:染料を溶かした湯釜に絞った状態で浸します。溶液の色、濃淡、引き上げのタイミングなどで染め上がりに差が出るそうです。
⑦糸抜き:くくっていた糸を抜きます。
⑧仕上げ:糸抜きした布に裏から蒸気をあてて、引き伸ばします。
 
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(染色)

名古屋のお土産といえば、ういろうか味噌系の食べ物とおもっていましたが、手ぬぐいとは竹田庄九郎さん、ナイスアイデアです。
だって手ぬぐいなら嵩もはらず、軽いから旅の荷物に負担をかけません。
それに、制作工程の中には力仕事というよりは、アイデアや熟練の技術の方が付加価値のつく部分がたくさんあります。
これなら、労働力としての年齢は関係なく、むしろお年寄りの方が高付加価値をつける商品を製造するのに有利になります。
ここには、高齢化してゆく日本が観光産業と地場産業をともにどう振興させてゆくのかについて、ヒントがたくさんあると思うのです。
 
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たとえば、観光立国としては大先輩格のスイスを考えてみましょう。
お土産として人気があるのは時計や刺繍の入ったハンカチでした。
わたしはヨーロッパを往復するのに、目的地が東欧だったためよくスイス航空を利用していましたから、帰りのお土産はチューリッヒで買うことが多かったのです。
中央駅から駅前通りをまっすぐ歩いて湖を望む公園の手前、立派な石造りのビルの1階に老夫婦の経営する刺繍製品のお店がありました。
そこのおばあさんは、学生でバックパッカーのわたしにも、ひとつひとつ刺繍の入ったハンカチをケースから出して、丁寧に説明してくださりました。

住所をノートに書いておいたら、カタログを添えた手紙をいただきました。

地域の産品について誇りをもって外国人である私に解説する姿に、土地の品を買うということは、その土地に生活する人たちとのコミュニケーションなのだと思ったものです。
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(竹田嘉平商店付近)


 有松宿に話を戻しますと、座敷や机とテーブルが用意されて、反物などをひとつひとつ説明しながら商談するスタイルのお店が、今でもなかには存在しています。
スイスのハンカチのように、手ぬぐいでそれはかなわないかもしれませんが、絞り会館を見学した後に、お店に行って絞りの手法と製品の違いについて話をききながら品定めをしてみるというのはいかがでしょう。
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いまは手ぬぐいや反物だけでなく、シャツやバッグからタオルや財布、ポーチなどの小物まで、アイデア商品がたくさんあり、色柄も江戸時代から続く定番から、かなり華やかなものまで幅広く存在します。
中には絞り教室を行っているお店もあるので、天候が不安定な季節の観光などにも利用できると思います。
町並み保存地区は名鉄の有松駅からすぐの場所にありますし、名駅から準急で15分程度の場所です。
 
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また、保存地区のなかには、背の高い山車を格納する車庫があります。
これは10月の第一日曜日に開催される有松祭りにて曳かれる山車が保管されています。
商業で栄えた街らしく、明治に作られた山車はからくり人形を載せた豪華なもので、絞り会館手前の山車会館に、常に3台のうちの1台が展示されています。
軒の低い旧東海道を、背の高い山車が曳かれてゆく様子を、一度はみてみたいと思ってしまいます。
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(祇園寺)

 

有松絞り会館から150mほどの信号(35.067497, 136.969996)を右折すれば、駅前広場までは100mです。
旧東海道はそのまま直進します。
その先も、町並み保存地区は続き、会館から260mさきの左側の長屋門のある家が、竹田嘉兵衛商店(35.067754, 136.969047)で、ここが有松絞りの元祖にあたります。
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(平部北交差点。常夜灯は宿場の入り口を示します)

210m先の曹洞宗祇園寺(35.068983,136.966972)付近で古い町並みは終わり、すぐ先に見えている(これが美観を著しく損ねています)名古屋第二環状高速道路の下で名鉄線の踏切を渡ります。
踏切の後で鎌研橋で手越川を渡り、さらにゆるいくだりを1㎞ほどゆくと左手に常夜灯のある平部北交差点(35.073621, 136.956287)で、ここから先が東海道40番目の鳴海宿となります。
次回は鳴海宿をご案内したいと思います。
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旧東海道ルート図(知立駅入口~金山駅入口)
http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=451c126d388a124117f3f8b94d995a6f&mode=silve



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