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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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海街Diaryのロケ地にブロンプトンをつれて Where is the scene of the movie Umimachi Diary?(その4)

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(極楽寺門前の萩)

御霊神社から由比ガ浜の海辺に出ます。
「ゆい↗がはま」ではなくて「ゆい↘がはま」です。
まずは次女がつきあっている男性と海に向かって並んで腰掛けていたカフェです。
麻心で「まごころ」と読むのですね。
お店のホームページによると、麻の実や麻の粉、麻衣などを使った料理って、麻って食べられるの?と思ったのですが、実は七味唐辛子の中に堂々と入っているのだそうな。
調べるとよく問題になる大麻には違いないのですが、食用のそれは多幸感を引き起こすTHCTetrahydrocannabinol)が低く抑えられた品種だそうです。

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食用でも大麻草にはかわりありませんので、たとえ成分が違う種類であっても日本国内での栽培・採取は禁止されています。
だから食用材としての麻は加工輸入食品に頼っているのだとか。
かなりむかしに、富山県礪波市にあるニチマ倶楽部という製麻工場跡を利用したホテルに宿泊したとき、パネルに食用麻のことが書いてあった気がします。
麻って繊維としては当然に有用であるし、「大麻」と聞けばステレオタイプに薬理作用を想像するのはおかしいということでしょう。
もちろん、今話題になっている医療用だの嗜好品としての大麻には、関心もありませんが、言葉狩りみたいな日本の風潮は変です。
 
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(二階の道路に面した席が映画に登場しました  Cafe "Magokoro"35.310346, 139.538166 )

全然映画と関係ない話から入ってしまいました。
国道を挟んだ由比ガ浜へと出てみましょう。
山猫亭で亡き父親の面影に触れた四女は、同級生の男の子に自転車を押し歩きしながらそのことを話します。
わかるなぁ。
姉妹にも話せない家族のことを友だちなら話せる場合があります。
しかし、そんなことにまったく気づかず「お姉ちゃんたちに話してみたら」と言ってしまうクラスメイト。
これが最後のほうで山猫亭のマスターから、「お父さんのこと聞きたかったら、いつでもおいで」と囁かれる伏線になっています。
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そして海辺の砂浜に出た四女は、海岸に打ち上げられる桜の花びらを拾いながら、
「もう散ってしまうんだ。山形ではこれから咲くというのに」と呟きます。
お父さんに先立たれて天涯孤独となり、東北から出てきた異母妹の四女は、山形出身ということになっているのです。
でもね、お父さんが働いていた温泉と、四女がよく連れて行ってもらった展望台は岩手県の花巻市(鉛温泉)だし、三姉妹が四女を鎌倉に誘う駅での別れのシーンはわたらせ渓谷鉄道の足尾駅(栃木県)です。
(映画の中では「河鹿沢温泉駅」として登場しました。
そんな名前の温泉は無いことは、温泉マニアならご承知でしょう。
同音で「鰍沢駅」なら山梨にありますけれど。)
なお、映画の撮影であっても、本作のように車両を動かして撮る場合はきちんと専用臨時列車として運行計画を出しておかねばなりません。
もちろん定期列車も走っているなかでの運用ですから、余剰の車両の手配ができる鉄道会社で足尾駅のような待避線のある駅を使わざるを得なかったのだと思います。
せめて北関東ではなく東北のローカル線を使用してほしかったところですが、贅沢をいっていられないのでしょう。
 
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(Yuigahama  35.309646, 139.541728 )
お話を由比ガ浜に戻します。
寂しげな四女を励まそうと、同級生は自転車の後ろに彼女を乗せて、通称「桜のトンネル」(ロケ地は静岡県沼津市)へとゆきます。
これだけは鎌倉はおろか、静岡県までゆかないとありませんでしたか。
たしかに由比ガ浜の近所で桜並木といえば、段葛か八幡さまの源平池、源氏山公園、あとは大倉幕府跡のある清泉小学校付近しか思い浮かびません。
そこを自転車で走り抜けられるとなると、時間帯も含めてなかなか難しいと思います。
しかし、鎌倉霊園にも桜のトンネルはあるし、鎌倉山から笛田にかけても長い桜並木の下り坂はあったと思います。
県内に広げればもっと候補はあったと思うのですが、映画のようにカーブを切って下ってゆくとか、ほかに人が映ってはまずいとか、車で並走しながら撮影しなければならないとか、色々な条件があったのでしょう。
 
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なお、桜の美しいそのシーンは、桜が四女の存在を祝福しているかのようです。
映像美としてとても映画の中で印象に残るシーンだと思います。
そのうちYoutubeでご紹介しますが、桜のトンネルを自転車で走り抜けるって、とても気分良いですよ。
とくに目線の高いブロンプトンに乗っていると、桜の花を間近にみることができるので、迫力が違います。
なお、桜のシーズンは春霞がかかって、なかなかすっきりと青空になる日が少ないのです。
そこへきて、ソメイヨシノの開花期間はせいぜい1週間から10日以内です。
沼津でロケを行ったときも、お天気のために予備日とかがあったのではないでしょうか。
大昔の角川映画「時を駆ける少女」のワンシーンに、青空に映える桜花の構図があったように記憶していますが、あんなの狙って撮れるものではないと思います。
 
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(滑川に架かる木橋)

四女は家族を捨てた父が設けた子として「自分の存在がほかの人たちを傷つけている」と思い込んでいるわけです。
その彼女に、江の島にある海猫食堂の女主人、佐知子さんは、「あなたのような宝物を残せたお父さんとお母さんが羨ましい」と呟きます。
どんな出自であっても、みな尊い存在には違いがないという信念が、さりげなくさしはさまれています。
次に、その佐知子さんが余命いくばくもないことを知って「すごく腹立つな、神さまってやつに」と次女が勤め先の信用金庫の上司と話すシーンです。
砂浜に架かる橋の上で海を見ながら話しているわけですが、どこでしょう。
鎌倉の由比ガ浜と材木座海岸を隔てるのは滑川という川なのですが、この川に夏の間だけ木橋が架かります。
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これに対して材木座海岸の東寄りに、豆腐川という名の川が海に注いでいまして、河口付近の砂浜にコンクリートの橋が通年でかかっております。
この橋の名は「豆腐川海岸管理橋」といいます。
映画で二人はこの橋に腰かけて話しているのです。
やるせない表情の次女に、「遺言をつくるのをお勧めしよう」と淡々と応じる上司。
与えられた条件のなかで、できることは何かないだろうかと冷静に考えるところは、さすがです。
こういう人が仕事場で身近にいると、自分の心を映す鏡のようでとても助かるのです。
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 (Seaside Bridge of Tofu-gawa  35.304027, 139.551725 )

この映画、話の流れに大きな盛り上がりもなく、淡々とした日常を切り取っているようです。
しかしそのいっぽうで、登場人物の内面をさりげなく演出していて、押しつけがましいところがありません。
映像に合わせて、音楽も割とシンプルで練習曲のようなピアノ曲をつけています。
そこに江ノ電の踏切音や、トンビや蝉の鳴き声、波の音などを入れていて、むかしの鎌倉の雰囲気がよく出ていると思います。
鎌倉には和洋折衷のお屋敷があちこちにあって、そこから聞こえてくる音はバイオリンでもフルートでもなくて、たいがいはピアノでした。
それも、ソナチネやソナタなどの練習曲ばかりだった記憶があります。
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夏の音に限ると、今は少なくなってしまっているのかもしれませんが、鎌倉の蝉の鳴き声といえば、むかしはツクツクボウシだったのです。
横浜ではアブラゼミが優勢だったのですが、鎌倉は地質のせいなのでしょうか、ツクツクボウシの割合が多かったのでしょう。
それがちゃんと最後のお葬式のシーンで入っています。
欲をいえば、夕方のヒグラシの音も入れてほしかったかな。
三女が夏の夕暮れにカレーを作っているシーンがあるのですが、山が近いロケーションの家なら、音は絶対にヒグラシでしょう。
なお、鎌倉の朝の音として山鳩の鳴き声(「デーデー、ポポー」)もあると思います。
 
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さて、海街Diaryのロケ地について、とりとめもないことを色々書いてまいりました。
次回は映画の中でも一番重要だと思われるシーンだけについて、ブロンプトンでの行き方も含めて解説してこのシリーズを終わりにしたいと思います。

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