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旧東海道へブロンプトンをつれて 34.吉田宿から35.御油宿へ(その2)

豊橋魚市場(34.789341, 137.369537)の先で旧東海道は少しずつ坂をのぼり、のぼりきったところの高橋(34.792086, 137.368454)で豊川放水路を渡ります。
歩いた時は、JR舞阪駅からこの先の名鉄国府駅まで30㎞を歩いたのですが、このあたりまで来ると足が痛くなって、放水路土手への上り下りでも辛かったことを思い出しました。
高橋で豊川放水路を渡ったら坂を下り、左側にある冷凍食品会社の入口先の木立の下にあるのが「子だが橋」の石碑(34.794296, 137.366619)です。
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(豊橋魚市場前から豊川放水路土手への坂道をのぼる)
 
言伝えによると、およそ1000年前、この先にある菟足神社の例大祭の初日に、最初にここを通った若い女性を生贄に捧げるという習慣があったそうです。
贄狩りという役目をしていた村人が早朝に待ち構えていると、ひとりの若い女が橋の上で立ち止まりました。
みればわが子で、どうしようかと悩んだ末に神の威光の尊さに、「子だが止むを得ん」と彼女を捕えて神にささげたのが「子だが橋」の由来だそうです。
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(豊川放水路に架かる高橋)

久々に人身御供の話が登場しました。
富士川東岸以来かな。
ここでのお話はわが子を神に差し出したというところがかわっています。
それって、ちょっと捧げる主体と対象を入れ替えると、イエス・キリストの話になってしまいます。
神は尊いひとり息子を捧げるほどに、私たちを愛されたというあれです。
わが子を生贄に捧げた親は、ここで子どもを逃がしても、代わりに誰かが犠牲になることに耐えられなかったのかもしれません。
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(「子だが橋」の跡碑)
 
子だが橋の碑から100mさきで小坂井バイパス入口を渡り、才の木信号(34.795672, 137.365194)を越えると、小さな上り坂にかかります。
さらに280mゆくと、先ほど人身御供の話題になった菟足神社(34.797368, 137.365860)が右側にあります。
いまはさすがに人間を捧げるわけにはゆかないため、12羽のスズメを生贄にしているそうです。
それでも可哀想ですが。
菟足神社には武蔵坊弁慶の言い伝えがあって、彼が東へ下るときにこの先の今橋(豊橋)が通行止めになった時に七日間この神社に滞在し、大般若経600巻を書き写して奉納したというものです。
いまでも弁慶の書と伝えられる585巻の経文が、国の重要文化財として残されているそうです。
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(坂をのぼってゆくと右側に菟足神社の入口があります)

神社の先170mでJR飯田線を踏切で渡ります。
踏切の右側、100m先には小坂井駅(34.797701, 137.363207)が見えています。
飯田線は豊橋と長野県の辰野を結ぶ長大ローカル線です。
もとが私鉄だったため、距離の長さもさることながら駅数が異様に多いので有名です。
何といっても、197.5㎞の総延長に94の駅があり、平均の駅間距離は2.1㎞しかありません。
だからといって、沿線に沿って散歩するのはちょっと難しいと思います。
途中道路もないような山の中を走りますし、電車の本数も極端に少ない区間があるので。
だから秘境駅なるものが存在し、乗り鉄ファンからは支持を得ているようです。
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(血なまぐさい話をきいたばかりなので、神社の石畳が赤茶けているのが妙に気になります)
 
ただ、小坂井駅のあたりは電車の本数も比較的多く、1時間当たり最低でも34本はあります。
お隣の牛久保駅近くの寺町には今川義元の墓のある大聖院(34.811094,137.384897)や、同じ時期の武将山本勘助の墓のある長谷寺(34.813647,137.379199)もあります。
どちらもテレビの時代物で有名ですし、ブロンプトンなら片道だけ電車に乗るという芸当もできますので、時間に余裕がある場合は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
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(家が密集してくると、飯田線の踏切を渡ります)
 
なお、仮にこの付近で旧東海道の踏査を中断して豊橋へ引き揚げる場合、小坂井駅(飯田線)、伊奈駅(名鉄本線)、西小坂井駅(東海道本線)と、どの場所へ走って行ってもたたんでカバーをかけたブロンプトンを電車に載せて帰れるわけですが、どの駅が適当でしょう。
あまり詳しくない旅人にとっては、東海道本線の西小坂井駅が一番列車本数は多そうに思いますが、さにあらず。
西小坂井も伊奈も時刻表を見れば分かりますが、毎時2本しか列車が来ません。
これに対して飯田線は上述の通り、1時間あたり3本から5本あります。
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(JR飯田線の小坂井駅)
 
これは鉄道マニアならご存知のことと思いますが、名鉄本線の伊奈-豊橋間の一部と、JR飯田線の小坂井-豊橋間の一部は、同じ線路を共有して使用しているのです。
しかも名鉄とJRがそれぞれ単線を所有し、複線として共有・使用しているため、運航本数は毎時6本に制限されています。
そんなわけで、これから先名鉄線に乗って豊橋駅へ戻ろうとすると、大半の列車は伊奈駅止まりで、毎時2本の急行と、伊奈駅は通過する特急のみが豊橋まで直通するということになります。
これは、帰りに名古屋まで行って東海道新幹線ののぞみに乗って帰宅するか、豊橋駅に戻ってやはり毎時1本しかないひかりに乗って帰るか、その判断にも影響するところなので、名鉄線の優等列車停車駅と併せてあらかじめ調べておきましょう。
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(左;西小坂井駅に停車する東海道本線の各駅停車 右;豊橋駅に入ってくる名鉄線の普通列車)
 
さて、この小坂井付近から旧東海道はこれまでずっとつかず離れずで並行してきたJR東海道本線とは別ルートをたどり、名鉄本線に沿ってゆきます。
これまで、戸塚―藤沢間(大坂)、小田原―三島間(箱根越え)、府中(静岡)―藤枝間(宇津野谷越え)と、山越えの地形上、鉄道敷設にあたってやむを得ず迂回し別ルートになったというものでした。
ここでは、旧東海道はこれから名鉄本線に沿って宮の渡しちかくまで60㎞も離れたままになります。
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(踏切から見る小坂井駅)
 
理由は東海道の宿場が蒸気機関車の走る鉄道を忌避したという説もあるのですが、実際はこれから先岡崎にかけて越える地峡の勾配が、蒸気機関車には不利だったからというのが本当のところらしいです。
げんにブロンプトンでこれから岡崎方面へ越える峠は、名前はついていないものの、距離が長いために結構きついものがあります。
そう考えると、前方彼方に見える三河山地の山々がちょっとだけ壁のように見えてきました。
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(右は地境を示した五輪塔。よく勝手に動かされて争いのもとになったそうです)
 
飯田線の踏切を渡ってから商店やガソリンスタンドがちらほらと並ぶ集落をぬけ、宿西という名の信号(34.802097, 137.361815)を越えてゆくと、左側に大きな駐車場のあるスーパーマーケットが見え、その150mさき(飯田線の踏切からは1,150m)の左側に、石碑が2つと由緒書きが立っています。
ここは伊奈の立場跡で立場茶屋(茶屋本陣)だった加藤家の跡(34.807111,137.357108)です。
向かって右側が松尾芭蕉の句で左側が加藤家の出身で、京で医者をつとめていた謙斎の句です。
加藤謙斎(1670-1724)は医家であると同時に芭蕉の門人でもあり、烏巣(うそう)道人と号していました。
二つの句を並べてみましょう。
 
『かくさぬぞ 宿は菜汁に 唐が羅し』芭蕉
『ももの花 さかひしまらぬ かきね哉』烏巣
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(スーパーが見えてくれば、その先に立場茶屋跡があります)

 

芭蕉の句は、この門人の家に泊まった際に出された汁椀が質素であったことから、弟子の飾らない暮らしぶりを歌ったものといわれています。
これに対し、烏巣の句は隣家とだの境に咲く花を楽しむのに、樹がどちらの所有とかは関係ないという心情をあらわしているそうです。
加藤謙斎という人は、医書なども著わしているほど名声の伴った医者だったようですが、お金や財産に執着のない、素朴な人だったようですね。
 
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次回は伊奈の立場茶屋跡から西へ向かいたいと思います。

旧東海道ルート図 (二川駅~本宿駅入口)

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