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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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大笹街道にブロンプトンをつれて(その1)

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本ブログを読んでくださっている方々の中には、わたしがいかに楽をして自転車に乗るかに血道をあげているように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、自分の中にはどこかにスポ根大好きな部分があって、ときには無謀ともいえるチャレンジを敢行してしまうことがあるのです。
今回は、そんなお話です。
イメージ 1
(通常、峠へは当然のようにバス利用します-渋峠にて)
 
ブロンプトンを買って1年目の10月中旬、わたしは志賀高原の麓、長野電鉄の須坂駅前におりました。
時刻は午前10時ちょっと前。
手には5回のうち1回分だけを残した青春18きっぷ。
今日中に横浜に帰るつもりでした。
まだ午前なので、時間には余裕があります。
予定では長野電鉄で長野まで出るか、当時はまだJR信越本線の一部だった三才駅か北長野駅までブロンプトンで走り、篠ノ井線で松本に出て、そこから中央線の鈍行で八王子まで乗り継ぎ、横浜線に乗り換えて帰るつもりでした。
そうすれば、青春18きっぷのもとはじゅうぶんにとれます。
昔の信越線回り(横軽経由=しなの鉄道になっていて、長野県内について青春18きっぷは使えません)より距離はあるものの、時刻表で乗り継ぎを調べたら17時30分には菊名に着けるのでした。
イメージ 2
(長野電鉄小布施駅)
 
偶然、駅前に停車している仙仁(せに)温泉行きのバスが目にとまりました。
これに乗って終点まで行き、大笹街道をブロンプトンで菅平までのぼり、そこから鳥居峠を越えて、吾妻線の大前駅まで出られないだろうか…。
ふと、そんな考えが浮かびました。
地図と時刻表が頭に入っていると、ついそんな無鉄砲な想像をしてしまうのです。
大笹街道というのは、須坂から菅平を越える国道406号線のことです。
まだ上信越道のないころ、マイカーで北信方面へスキーに行く人たちのなかには、交通量の多い国道18号線を敬遠し、こちらを走るアウトローがいました。
ただ、近道とはいえヘアピンカーブの多い3桁国道の峠道なので、積雪のある冬季はとくに、腕に自信のあるドライバーしか使えないのでした。
あの頃の映画「私をスキーに連れてって」でも、「5時間かけてフラれに行くんじゃバカだよなぁ」と呟いた主役とか「凍ってるね」と言ってストップウォッチを作動させたお姉さんとか、冬期に志賀高原方面から万座へ行くルートは、菅平越えの大笹街道が最短だったのです。
もちろん私も何度か車で走っていて、およその距離感はつかんでいました。
イメージ 7
(これね、「ブロンプトンを新幹線でスキーに連れてって」・・・ってどうすんじゃい)

吾妻線はといえば、近年八ッ場ダムの建設のため、線路の付け替えが話題になりましたけれど、上越線の渋川から分かれるローカル線で、東京の人が四万温泉、草津温泉、万座温泉などへ電車で行く場合、この路線を利用します。
但し、乗り鉄なら知っていることですが、1つ手前の万座・鹿沢口駅でほとんどの列車は折り返してしまい、終点の大前駅まで往復する列車は一日5本しかありません。
つまり、万座・鹿沢口駅と大前駅の間の3.1㎞は、乗り鉄でもない限り用が無ければ利用しない超のつくローカル線なのです。
げんに、わたしも上野方面から長野原草津口までは何回か来たことがありますが、そこから先は電車に乗ったことがありませんでした。
イメージ 3
(当初予定していたルート=ブルーと、思いついたルート=赤+黄)

かの宮脇俊三先生も、著書「時刻表2万キロ」の中で、足尾線の足尾-間藤駅間と併せて、関東で乗り潰しにくい線区としてこの区間をあげていました。
時刻表を確認すると、午後に大前を出る高崎方面行き列車は134017122013の3本のみ。
それぞれの武蔵小杉到着は18:25、21:24、0:51(上野・川崎経由)
13時40分に間に合えば松本回りと大差なく帰れます。
乗り換えは中央線回りが6回に対して、吾妻線経由ならわずか1回。
しかもこちらは追加料金を1,000円弱支払えば貧乏旅行を是とする私でも高崎から湘南新宿ラインのグリーン車に乗れるというおまけつき。
それに、山越えでブロンプトンを駆って大前みたいな到達難易度の高い駅に滑り込むなんて、電車に乗りっぱなしよりも冒険心をくすぐります。
イメージ 4
(長野電鉄信州中野駅)

うーん、はたして間に合うかしらん。
今から目の前のバスに乗って仙仁温泉到着がたぶん1030分くらいです。
仙仁温泉の標高は700m弱で菅平高原まではプラスで600m以上の標高差があります。
まぁ、コツコツと登れば1時間くらいでしょう。
11時半までに菅平にあがって、速攻でご飯を食べます。
12時前に菅平を出て長野群馬県境の鳥居峠に向かうとします。
この区間は国道406号線~国道144号線を経由するといったん菅平口まで下ってそこから登り返さないといけないのですが、四阿山の中腹をちょうど横切るように県道182号線が通っていて、これを利用すれば上り下りなしで行けそうです。
(菅平の国道最高点の標高が1,322mで鳥居峠の標高は1,362mですから、この区間の標高差は40mしかありません)
鳥居峠の到着予想時刻は菅平から30分強として1230分くらい。
そして鳥居峠から吾妻線の大前駅(標高804.4m)までは、標高差マイナス500m強
浅間山北麓の国道をひたすら下るだけですから、40分もあれば楽勝だと、こんなふうに大雑把な計算をしました。
それにこの山越えは進めば進むほど下りになるので、ふだんヒルクライムなんてやろうとしない自分にとって、体力的にも何とかなりそうです。
イメージ 6
(今回は記述に正確性を期すため、当時に近い時刻表を引っ張り出してきて確認しました)
 
ということで、お客さんの全くいない(午前中に須坂の奥座敷にあたる仙仁温泉にあがる人なんて、誰もいません)バスにブロンプトンを抱えて乗り込みます。
すると運転手さんが、「それで菅平まで登る気?あはは、仙仁から2時間コースだね」と仰るではありませんか。
2時間かかったら菅平到着は12時半で、既に1時間以上計算が狂います。
でも、この運転手さんがチャリで大笹街道を登った経験があるわけでなし、万が一間に合わなかったら大前駅の3㎞先にある万座・鹿沢口駅始発なら15時53分発があるから大丈夫さ。
そんな風に考えて、バスの一番前の席にブロンプトンを抱えてでんと腰かけました。
 
イメージ 5

何も知らないということは、ある意味思い切った行動をとれるわけです。
でも、人間は結末を予め知ってから行為にうつるわけではありません。
かの哲学者プラトンも「プロタゴラス」の中でソクラテスをして皮肉交じりにこう言わしめています。
『恐ろしいものと恐ろしくないものについての知恵が真の勇気なのか?』と。
その結果がどうなったかについては、次回開陳することにいたしましょう(笑)

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