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Channel: 旅はブロンプトンをつれて
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旅行会社の破たんについて思うこと

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今日は旅行者の責任について、旅行会社との関係から書いてみようと思います。
比較的大きな旅行会社が破たんして、社会問題になっていることが新聞に出ていました。
わたしも一応旅行会社に勤めていた身として、お客さまたちが旅先で遭遇した困難について、さぞかし大変だったろうなと思います。
また、せっかく楽しみにしていた旅行がふいになったばかりか、経済的な損失までこうむれば、悔しくて当然です。
ただ、新聞の記事は相も変わらず、旅先で直面したトラブルにどう対処するかと、旅行代金の返還請求、そして危なくない旅行会社(?)の見分け方です。
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(今回はブロンプトンで走っているときに撮ったスナップで、写真と本文は関係ありません)
 
事情を知っているから書きますが、新聞社って旅行会社のことをそんなに悪くは書けないのです。
だって、いまどき珍しい相当な優良クライアントですから。
毎週末になると、全面、中にはカラー刷りで中高年向け旅行ツアーの広告がうたれているではありませんか。
現在、あんな巨大広告を新聞へ定期的にうてるのは、旅行会社と通販会社くらいです。
あそこで募集されているツアーの中身をよくご覧ください。
軒並み高付加価値のついた高い旅行代金のツアーばかりで、募集対象も中高年以上の方々です。
よく見ると、ツアー毎、出発日毎にコード番号がついていますよね。
複数の新聞を見比べればわかることですが、同じ旅行会社の主催する同一旅程・日程のツアーであっても、新聞社の紙面毎にコードが違うのです。
ちゃんとどの新聞の広告を見て募集に応じたのか、旅行会社が把握できるようになっています。
むかし数値を見たことがありますが、これが世論誘導に使われたらと考えると、マスコミって怖いわと感じました。
それに大手新聞社が文化事業としてその傘下に主催旅行を催行する会社をもっているのも、それが美味しい商売だと知っているからです。
大手の旅行会社・新聞社傘下のエージェントが主催しても、中小の旅行会社が募集に協力していますから、規模の大小にかかわらず、新聞社にとって旅行会社は顧客なのです。
(今回の場合は新聞広告に頼ったことがひとつの仇になったみたいですが)
 
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旅を主催する側からすれば、大枚をはたいて新聞の一面を使って募集するのは、ちゃんと広告宣伝費が回収できると踏んでいるからです。
エージェントには部内見積り(通称「うちみつ」)というのがあって、商社みたいにきちんと旅行原価を計算し収入率が一定を超えないと、稟議が通らずにパンフレットを刷ったり、参加者を募集したりできないのです。
この見積もりは、企業や学校など法人から依頼されて計画する手配旅行よりも、広告宣伝をして個人旅行客を募集する一般募集型の旅行の方が、より厳格になりますし、募集しても集客できなかったら企画自体がこけるわけですから、競争も激しく価格設定と収入率の板挟みに陥りやすいのです。
 
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だからこそ、大手の旅行代理店ともなりますと、広告宣伝部門は花形です。
旅行会社自体のイメージを良く保ち、集客に寄与するために、たいそうなイメージ戦略を行っています。
それだけでなく、事故や災害対策でもその情報収集能力をいかんなく発揮していました。
たとえば不幸にして海外で日本人旅行客がテロや事故に巻き込まれて死傷者が出た場合、広報室のお仕事は、留守家族対策に次いでマスコミ対策なのです。
「こんなところに連れて行って、こんな目に遭わせて、いったいこの旅行を企画、募集、手配した奴は誰だ」というお話にならないよう、きちんと現地の情報を収集し、それをマスコミに伝えると共に、旅行者の家族の要望(たとえば一日も早く現地に行きたい)をかなえ、逐一アップデートすること、それを目に見える形で世間に説明すること。
これを上手にこなして乗り切った社員は、社内でも評価され後に昇進します。
これが中小の旅行会社なら、海外のあちこちに支店や駐在員などを置く余裕はありません。
現地で何が起こっているかも把握できず、オロオロした姿を見せようものなら即アウトです。
(最近では、この戦略のノウハウを販売する部門すらあります)
なんでこんなことを書いたかといえば、個人旅行をして「トラブルがあっても自分でできる限りのことをしよう、それを楽しむくらいでなければ」という意識を体現したいなら、この大手旅行会社の広報部門対応は、旅先でのトラブル対処に見事なお手本を示していると思うのです。
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新聞媒体を使った一般募集の主催旅行に話を戻します。
ネットリテラシーの低いお年寄りを対象に、新聞広告募集型のツアーを企画する手法は、旅行会社にとって収入のあがるドル箱だったのです。
「だった」と書いたのは新聞を取り巻く状況が変わってきているからです。
破たんした旅行会社も時代の趨勢に押し流されたようですが、新聞が売れなくなっていることと、こうした商法によるツアー販売が収縮していることと、無関係ではないと思います。
いま、新聞を主たる情報源として頼りにしている人たちは、人生の半分以上をネットの存在しない時代に生きた最後の世代です。
なかには健康などの理由でお金はあっても旅行に出られない人もたくさんいらっしゃるでしょう。
だからネット募集型の主催旅行に切り替えたが、うまくゆかなかったというのが破たんした旅行会社の分析でした。
新聞媒体とネット媒体では、応募してくる人が全然違うのでしょう。
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ブロンプトンをお持ちになっている、あるいはこれから購入して旅につれてゆこうという方は、お分かりかと思いますが、トラベラーとツーリスト、旅と観光旅行は違うのです。
何度も書きましたが、トラベルの語源はラテン語のトラベイユ、すなわち苦労するという意味なのです。
だから、あなたがツーリストではなくトラベラーなら、それが自分で手配した旅行であれ、会社を介して手配した旅行であれ、旅の責任について、最後は自分で引き受ける覚悟が必要です。
旅の責任についてお金を支払って回避することは、一部はできても全部は無理です。
お金というものは、外国へ出てみればよく分かりますが、限定的な力しかないのです。
旅先でのトラブルをすべて他人のせいにしようとしても、「ならなぜ旅に出たのだ」という質問には理由がつけられません。
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自分で責任を負うということについて、重苦しいイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそういう面ばかりではありません。
トラブルに遭った時、その場でベターではなくてもワーストにならないような対策を考える。
とにかく、今できる限りのことをして、あとはじっと待つ。
自分で対策が思い浮かばなかったら、同じような境遇で困っている人を探して、文殊の知恵を絞る。
ひとりでできないと思ったら、冷静に協力者を探して助けを求める。
以上のようなことを少しでも主体的に考え、行動に移せたなら、実はとても自信になるのです。
これまでの旅行を振り返って、スムーズにいった旅ほどさして印象には残らず、困難に直面して絶体絶命だと思ったときこそ、記憶に残る旅になっているのではないでしょうか。
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そして、旅はトラブルに見舞われた時こそ、他人の親切に触れるチャンスです。
トラベラーであるあなたが、胸襟を開いて相手に助けを求める時、多くの現地の人は善意を発揮してくれます。
あなたがブロンプトンを引いてひとり旅をしているような御仁であれば、尚更です。
それが「どこの国のひとであれ、人間の本質は善である」という信念につながります。
そういう経験を繰り返すうちに、言葉は通じなくても信頼してよい相手と、信じてはいけない相手を見分ける目利きがきくようになります。
面白いことに、「他人をみたら泥棒と思え」と信じている人ほど、プライドが邪魔をして自分の窮状をオープンにできず、騙そうという意図をかくし、表面上親切に接してくる人に結局はついてゆくような寓をおかすものです。
そして、「やっぱり他人は信用できない」という考えを強化してしまいます。
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こうした行動は旅をひな型にすれば、人生の指針になると思いませんか。
人生に責任をとれというとおおごとですが、旅先での自分に責任をとるなら、限定的ですし旅が終われば済んでしまったことになります。
日本の学校では、遠足にしても修学旅行にしても、この旅先で責任を負うことの素晴らしさを教えてこなかったことが、残念でなりません。
学校が親御さんから「旅先で何かあったら先生の責任ですからねっ!」と言われるような状況では、仕方のないことかもしれません。
親が人間不信では、子どもに人への信頼を教えることなどできるはずがありません。
子どもの前で、旅程がうまくゆかなかったことを、人や社会のせいにするなんて、控えておくことに越したことはありません。そして、昔から言うではないですか、「かわいい子には、旅をさせよ」と。
本当は、旅を他人任せにすることによって、教育の機会を失っているのです。
これ、家族旅行でも個人旅行でも同じことですよ。
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もしあなたが主体的な旅をしたいと思ったら、自分で旅を企画、手配することが基本です。
旅行会社なんぞ利用するなと申し上げているのではありません。
全部他人任せにするのではなく、旅行会社を上手に利用することです。
つまり、自分のできそうなことは自分でやって、自分ではどうしてもできないと思うところを旅行会社に頼むのです。
餅は餅屋ですから、旅先における情報はたくさん持っています。
私だって、「週末に鎌倉へ行くのなら、有名どころは午前11時までが勝負」とか、「いま七里ガ浜は長期にわたって護岸工事の最中」という知識があって、はじめてTPOに合わせた鎌倉案内ができます。
聞かれれば、こんど自分で来る時はこうするといいですよというアドバイスもします。
そして何かトラブルに見舞われた際にも、すべてを旅行会社や他人任せにせず、自分で動いてみることです。
多少出費は嵩むかもしれませんが、経験と学習のチャンスです。
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すくなくとも、たとえ新聞媒体に募集されるような、あるいはお手軽を強調してネットで募集されるようなツアーに応募したとしても、いざという時に備えるつもりで、「この旅を自分ひとりでやりぬくとしたら」と想像してみるのはどうでしょう。
(そういう人は、特別な事情でもない限り全行程添乗員付きの至れり尽くせりの旅行には参加しないでしょうが)
主体的に調べていつでも自分で動けるように準備しているお客さまには、旅行会社も襟を正して接するものです。
逆に「上げ膳据え膳が当たり前」「こっちはお金を支払っているのだから、全部そちらでやれ」なんて態度をとられると、仕事とはいえこちらも人間ですから、「この方は何がしたくて旅に出たのだろう」と感じてしまいます。
また、旅に関心が無ければ、旅先に関心を向けてみるのはどうでしょう。
むかしのガイドブック「地球の歩き方」には、端の方に「ここへ行くならこんな本を読んでゆくといい」という記事が掲載されていました。
予備知識なしで目的地に赴くのと、予め関連の本を読んでゆくのでは、旅の印象は全く変わります。
旅から戻ってからでも遅くはないです。
それが「この次はあそこへ行こう」という原動力になり、そのためには何をしたらよいかという動機付けになります。
 
わたしも海外旅行の手配業務を行っていたことがありますから、ホテルや航空券の予約手配から購入、現地における確認など、アナログでできる方法も含めて機会をみつけて「自分でできること」をブログに載せようとおもいます。

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