いきなり伊豆箱根鉄道の駿豆線をドローンで撮影した絵に、サウンド・オブ・ミュージックの“My Favorite Things”(『そうだ、京都へ行こう』のcm曲)をつけて、???でした。
正直言って一泊の温泉旅行が偽装新婚旅行って、いつの時代の話でしょう。
熱海や箱根、伊豆が新婚旅行のメッカだった頃は、昭和も20年代後半から30年代前半の話だと思います。
そのうち旅行先が九州になって、ハワイになって、タヒチやフィジー、カリブ海沿岸、北米、ヨーロッパとバラエティに飛んでいったと思ったら、最近では地味婚を反映して、また関東近辺の温泉宿が見直されているらしいです。
これもデフレを一度経験したからでしょうか。
当時の温泉旅行と大きく違うところはファシリティ(施設や設備)面の進化でしょう。
バブルになる前、まだ熱海や伊豆、箱根の大型旅館は昭和の集団新婚旅行の面影を残していました。
パリー風呂だのローマ風呂だのと名づけられた大浴場へゆくと、なにやら色の着いた蛍光灯に照らされた湯船の真中に、ミロのビーナスがでんと構えていて、もしや女風呂はミケランジェロのダビデじゃないだろうなと勘ぐってしまうのでした。
あの俗悪な雰囲気は一掃されて、何やらセレブのコンドミニアムにでもお邪魔している気分になれるのが、いまの高級旅館です。
数ある伊豆の温泉から、修善寺温泉を選んだのは、おそらく協力する鉄道と旅館の関係だと思います。
渡月荘は確かに歴史がありますが、事情があって施設を一新してしまって昔の面影はありません。
もし同じ修善寺で由緒正しい老舗に泊まるのでしたら、新井旅館ですよ。
伊豆という場所は、温泉旅館の激戦地ですが、頭に高級がつくところは、東京から近いこともあって、かなり宿泊料が張るのです。
最低でもおひとり様二万円台後半からです。
つまり二人で泊まったら1泊2食付きで5万円超です。
ところで、ロケに出てきた露天風呂付客室についてですが、今でこそ高い宿泊費を覚悟すれば部屋に露天風呂がある宿泊施設は多くなっているものの、昔は貴重でした。
いくらお金があって施設をつくろうにも、温泉の泉温がある程度高くて、かつ湯量が豊富じゃないと、各部屋まで温泉は引湯できません。
結果、お風呂に入っていると壁の向こうでゴーッと(加温しているのでしょうが)ボイラーの音がするなんて、笑えない話もききました。
いまは温泉を掘る技術もすすみ、安価になったため、自噴の源泉を所有している旅館も多いのです。
では、誰に聞けば「ここなら宿泊料に対して満足度の高い施設とサービスを提供する」旅館を教えてもらえるでしょう。
私の場合は、大手旅行代理店に入って4年から8年目くらいまでの独身女性社員でした。
彼女たちはわりと時間もあるし、研修という名であちこちに泊まっているし、何よりもカウンターで宿泊したお客さまの感想を聞いているのです。
旅行会社にいたころ、よくお客さまから「伊豆の高級旅館へ行きたいけれど、どこへ泊まったらいい?」と聞かれました。
会社の経営者や学校の校長先生といった、ある程度お金のある方たちでしたし、まだゆとりのある時代でした。
そんなとき、同じ会社の女子社員の中で共通して評価の高い宿を紹介しておけば、まず後から感謝されることが多かったのです。
今回はこのブログの読者さんに、その時に答えていた「伊豆においてまず間違いのない旅館」(つまり、満足度の高い質とサービスを提供する宿)を教えましょう。
もう20年も前の話ですから、事情は変わってしまっているかと思いきや、ホームページを見る限り相変わらずの鉄板ぶりなので、大丈夫だと思います。
なお、ブロンプトンは持って行っても周囲を少しだけお散歩する際に使いましょう。
これだけの温泉旅館から出て行って外で過ごしたらもったいないです。
以下順不同です。
嵯峨沢温泉ときいて、伊豆のどこにあるかすぐわかった人は、宿泊経験者だと思います。
国道のすぐわきにあるのに、本当に目立たない、なおかつ閑静な宿ですから。
中伊豆の修善寺から湯ヶ島、天城にかけてなら、ここは間違いのない宿です。
部屋付きの露天風呂はありませんが、サービスがしっかりしています。
建物は、明と暗、開いた空間と閉じた空間のメリハリをつけているように感じました。
料理も季節感を出した、かなり手の込んだ京料理を出してきますので、外国からの客さまにも受けが良いと思います。
吉田松陰が下田渡海事件を企図して潜伏していた村山邸のすぐそばにあります。
広いお庭を囲むように低層の和風建築が建っていて、まとまり感のある宿です。
むかしは「湯畑花月亭」という名前で、とにかく湯量が豊富(毎分190ℓ)です。
もちろん露天風呂のついているお部屋が複数あります。
また下田港で水揚げされた海の幸をふんだんに使った夕食は、定評があります。
谷津温泉なんて聞いたことないですよね。
でも、伊豆急の河津駅からすぐの場所にあるのです。
この旅館は本物の隠家的存在です。
まず、旅行代理店に部屋出しをしていません。
旅館は旧華族の別荘だったとかで、全室が離れで露天風呂がついています。
しかも、大露天風呂は池かと見紛うばかりに大きく、プールかと思うほど深いのです。
(源泉は2本で合計毎分280ℓ!まさにジャブジャブという感じです)
夕食も、普段食べられないあれやこれやを、これでもかと繰り出してきます。
夕食の量を別にすれば、ある程度年齢のいった方にお勧めです。
あ、話を「逃げ恥」に話を戻しましょう。
主人公たちは往復とも伊豆箱根鉄道の電車に乗っていました。
ということは、横浜市内の自宅から新横浜まで行き、新幹線に乗って三島で下車して乗り換えたことになるのです。
もし、特急踊り子号で行ったなら、あの車両はあり得ませんから。
ところが、修善寺からの帰り道のことです。
彼らの乗った電車が伊豆仁田駅を通過しているではありませんか。
しかも下り電車で修善寺へ向けて走っているし。
「あと一駅。あと一駅。永遠に着かなければいいのに」と相思したあの電車は、撮影のために特別運行した車両で、後ろに乗っている客たちも、全部エキストラだとわかってしまう乗り鉄の悲しさなのでした。
お金かかっているなぁ、このドラマ。
でも、よく考えたら当たり前です。
電車が終点の三島に到着しキスをしたあの場面、普通だったら高校生とかがドヤドヤ乗り込んできて、お芝居だとしても大変なことになっちゃいますから。