前回、なぜツアーバスは高速道路に全部乗らずに、区間を分けて一部だけ利用したのかという疑問が出たところまで書きました。
(http://blogs.yahoo.co.jp/brobura/39769058.html)
「そんなの経費節減と時間調整に決まっている」と断じる前に、その中身について確認してみたいと思います。
まずは経費の部分です。
全部高速に乗る場合と、一部だけ乗る場合の特大車の高速料金を比較してみましょう。
行程の通り高速に乗り降りすると、料金合計は深夜割引をきかせて合計5,460円。
対して練馬から豊田飯山まで同様に深夜割引がきくので10,570円。
およそ倍近くかかり、普通車に比してえらく高いと思われるかもしれませんが、そこは40人が乗っている貸切バスです。
一人当たりで割ると、40人ならその差額は128円、半分の20人乗車でも256円でしかありません。
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(東京駅八重洲口の高速路線バスターミナル―今回も本文と写真は関係ありません)
次に所要時間についてです。
NEXCO(旧道路公団)のホームページで計算すれば分かるのですが、練馬から豊田飯山までの所要時間は2時間37分しかかかりません。
これでは原宿を23時に出ると、ゆっくり走っても午前3時過ぎには斑尾高原に着いてしまう計算になります。
もし現地6時半の到着に合わせようとしたら、こんどは東京を午前2時ごろの集合・出発になってしまいます。
ここが、高速道路網が整備されかつ混雑しないという点で、スキーツアーバスの環境が、バブル時代と大きく変わった点なのです。
つまり高速の利用制限は、高速料金の節約というよりは、時間調整の意味合いの方が濃いのです。
ただ、今回はバス会社が公示運賃下限割れの19万円で受注していたことから、たとえ額が僅かでも節約しようとしていた可能性は否めません。
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そして、ライバルである鉄道との比較です。
まず、鉄道は夜行列車がありません。
それどころか、信州方面については碓氷峠で在来線は切れてしまっているため、よほどの乗り鉄マニアでもなければ、斑尾高原へは北陸新幹線を使うことになります。
当然、新幹線も夜は走っていませんから、6時半ごろに東京駅を発つ1番の列車に乗って飯山駅で下車し、そこからシャトルバスに乗ってもゲレンデ到着は9時過ぎになり、完全に不利です。
これに対して復路はバスと同じ17時頃に現地を出発して、東京駅到着は20時ですから、それほど時間的なアドバンテージはありません。
それを念頭においてバス運賃との比較をすると以下の通りになります。
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(ハイデッカーの観光バスタイプだと、通路に補助席もあるためブロンプトンを持っての車内移動が容易ではなく、また足元に置くと二人分のシートに1人しか座れません)
正直言って、鉄道がバスに負けてしまうのも頷ける気がします。
しかし、それならなぜ貸切バス運賃は利益の出ない構造になっているのでしょう。
原因は、ツアー業者間の価格競争だと思います。
もう、かなり前のバブルの頃から、ツアー価格自体を安価に抑える競争が行われてきました。
私が大学生のころですら、この手のツアーが薄利なので大手の旅行会社は子会社をつくっていましたし、その頃に有名だった会社はウィンタースポーツ人口の減少に耐えられなくて倒産しています。
通常はバス運賃に宿泊費やスキー場での割引サービスがついていくらの価格になっているので、ツアー代金からバス運賃のみの利益率は見えにくいのですが、事故が起きた該当の旅行会社は片道夜行の日帰り斑尾高原往復ツアーをリスト一日券付きで9,800円にて販売していました。
リフト一日券を差し引くと、バスの原価は8,000円を割り込んでいたものと思われます。
ということは、バス1台20名乗車では採算がとれず、40名乗車でもかなりの薄利になっていたはずです。
この状況を打開するには、ツアー価格を適正な額まで引き上げるしか方策はないのですが、これまた消費者はただ安全のためといっても値上げに納得してくれません。
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(長野電鉄湯田中駅。かつては上野からこの駅まで夜行を含む複数の直通列車がありました)
うーん、浪馬としては付加価値をつけてその分ツアー代金を安全な旅程に見合ったところへ引き上げたらどうだろうと思うのです。
前述したとおり、バスの乗車人員を減らして車両をグレードアップするのもひとつの方法です。
これはJR各社がいま取り組んでいるクルーズトレインのツアーバス版です。
私はそのうちキャンピングカーのように、バス内で就寝のできる超豪華クルーズバスという市場が出てくるのではないかと予想しています。
風呂や食事を供し、電源を供給する役目を日帰り温泉施設に負わせれば、それほど値段を釣り上げないでもツアー企画が可能な気がしています。
そこまでゆかなくても、自分も含め中高年世代には「多少高くてもゆったりと旅がしたい」という需要があります。
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(自分が高校、大学生の時に利用していた当時は賑わっていた湯田中駅のバス乗り場)
それ以外にも、ツアーの日程をいじる方法があると思います。
たとえば、都心での集合時間を19時にしてしまいます。
そして、全区間高速を利用し、スキー場到着を24時前にしてしまうのです。
この場合は厳密にいえば夜行バスではありませんから、乗車定員は40人でも構いません。
所要時間は減るので、その分の原価は下がりますが、人件費は変わりません。
バスは現地についたら乗客を宿泊施設に入れ込んでしまいます。
宿泊施設はお風呂の用意もせず、布団も自分で敷いてくださいということにして、宿泊費1泊分の6割程度までをツアー原価に加算します。
そしてツアー代金自体は夜行日帰りの料金を1泊程度の料金に、1.5泊の料金を2泊分以上の価格に値上げするのです。
こうすれば、バス運賃の部分も値上げが可能ですし、乗務員の運行行程もずいぶんと楽になるはずです。
宿泊施設側は到着日には1泊分の6割しか取れないかもしれませんが、2泊目以降がある客からはその後の宿泊について正規の部屋代をいただけばよいですし、たとえ1泊しかしなくても、「今度はゆっくりとした日程でこの宿に滞在したい」と思わせれば、リピーターの獲得につながるのではないでしょうか。
宿泊施設側は到着日には1泊分の6割しか取れないかもしれませんが、2泊目以降がある客からはその後の宿泊について正規の部屋代をいただけばよいですし、たとえ1泊しかしなくても、「今度はゆっくりとした日程でこの宿に滞在したい」と思わせれば、リピーターの獲得につながるのではないでしょうか。
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(夏のスキー場は寂しいものです-志賀高原高天原スキー場)
鉄道で同じ旅程を組もうしても、現地でのスキー場までの公共アクセスが終了してしまっているのでタクシーなどを使用する分かなり割高になります。
(それは高速路線バスの場合も全く同じです)
(それは高速路線バスの場合も全く同じです)
また予め服や板など荷物を現地へ宅配便で送ってしまえば、たとえ19時集合でも会社帰りに間に合うはずです。
なお、自家用車で行けば時間は自由になりますが、若い頃ならいざしらず、自分も東京長野を運転して往復はきついと感じるようになっているので、多少高くても週末などを中心にツアーバス需要があるのではないかと思うのです。
深夜に自家用車を運転し続けるのは、とても危険な行為ですからね。
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(現在は昼間に新宿駅発着の特急が1往復だけ残っている白馬駅。こちらも往時は夜行を含む複数の急行や特急が乗り入れ、中には関西方面からの直通列車もありました)
旅行者側の健康面についても、日程がゆったりしていた方が安全です。
「体力には自信があるのでとにかく安く」という方には酷かもしれませんが、自分は自転車に乗るときもスキーをするときも、前の晩に少しでも横になって眠れているかどうかが、翌日の体調にかなり影響を及ぼす中年なので、たとえツアー料金が上昇しても、一晩中バスに揺られているよりは、ホテルへ夜半に到着する方を選びます。
寝不足のままでスキーやスノボをするのは、実はけっこう危険なのです。
指導資格を取るときにデータを見ましたが、スキー場における怪我や事故の発生率は、夜行で到着した日の午後にかなり集中していました。
寝不足のままでスキーやスノボをするのは、実はけっこう危険なのです。
指導資格を取るときにデータを見ましたが、スキー場における怪我や事故の発生率は、夜行で到着した日の午後にかなり集中していました。
それに、宿泊需要がひっ迫していた過去ならいざ知らず、今のように部屋が空いている状況であれば、宿泊施設側は少しでも代金をもらって部屋を埋め、稼働率を上げた方が良いはずです。
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(八方尾根スキー場。スキーをはいているときはなんとも思わないのですが、こうして写真で見ると結構怖いですね-私、実は高い所苦手だったりするもので。夕方で風が強いと雪面はカリカリに凍っているし、転ぶと痛いし止まらないのですよねぇ)
実際に自分の車でスキーに行くときは、宿の方に符丁を決めておいてもらい、夜中に部屋に入って寝てしまい、朝食時にチェックインするということをずいぶん前からやっています。
また、じゃらんなどの宿泊予約サイトをみても、レイト・チェックインが可能な宿はじわじわ増えています。
(それに対してレイト・チェックアウトが増えないところが悲しいですが)
宿泊施設側のマンパワーをどうするかという問題があるかもしれませんが、ヨーロッパやカナダのリゾートではもうずいぶん前から宿泊と食事が別になって共存共栄しています。
日本にも少しずつB&B(Bed and Breakfastの略)が増えてきているし、そうした宿はインバウンドのお客さんが上手に利用しているので、その辺から構造が変わってゆくかもしれません。
宿泊施設側のマンパワーをどうするかという問題があるかもしれませんが、ヨーロッパやカナダのリゾートではもうずいぶん前から宿泊と食事が別になって共存共栄しています。
日本にも少しずつB&B(Bed and Breakfastの略)が増えてきているし、そうした宿はインバウンドのお客さんが上手に利用しているので、その辺から構造が変わってゆくかもしれません。
こうして、バスツアーも旅程の選択について幅が広がれば、利用者の幅も増えてゆき、スキー場への顧客回帰の一翼を担うことができると思うのです。
このブログを読んでくださっている相応の年齢の方たちは、中年から熟年は外へ出て運動をしないなんてジンクスを破っていただける方たちばかりだと信じておりますので。とまぁ、安全なバスツアーについてかなり自由な発想で書かせていただきました。
会社にいたときに商品企画のノウハウも見ていましたから、いま現在ツアーとして存在しない商品をつくるのは、そんなに簡単な話ではないことを百も承知のうえで、人の命には代えられないので、最初は大変かもしれないのですがそんなツアーが出てきてくれればと思うのです。
(あ、やっぱり最後はお前がつくれって話になりますよね)
(おわり)
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(旅程にゆとりをもたせた場合との比較)Clik here to view.