自転車をスキーやスノボのように使えないだろうかと、ブロンプトンに出会う前から考えていました。
ブロンプトンを入手して、夏の八方尾根で実験した結果は以前レポートした通り、かなり悲惨な結果に終わりました。
(http://blogs.yahoo.co.jp/brobura/38450069.html)
(素晴らしい景色は眺められましたけれども)
あれから、関東を中心に索道でのぼって普通の自転車でゆっくりと降りてこられる場所を探したのですが、なかなかありません。
くだってくる道がないとか、あっても自転車通行禁止だとかがほとんどです。
かりに自転車が通行可能な下山路があったとしても、その道が眺望や植生などを楽しめるとなると、全国的に見てもここと阿蘇ぐらいしか思いつきません。
その両方とも、今年に入ってから噴火の危機によって楽しめなくなっているのは、まことに残念というほかはありません。
ただ、草津温泉に宿泊する人のアクティビティとしては、じゅうぶんに楽しめる内容だと思います。
さて、前回からの続きで白根火山ロープウェイに乗ります。
まずはブロンプトンにカバーをかけ、切符を買いましょう。
片道900円で、スキーシーズンのような一日券、回数券は存在しません。
何回も反復して乗車することが考慮されていないので、当たり前ですが。
昨年までは手荷物券(200円)があり、これを支払えば全く問題なく連れて乗ることができました。
(写真では乗車券とは別途に手荷物券を購入したので、カバーをかけていません)
(写真では乗車券とは別途に手荷物券を購入したので、カバーをかけていません)
今年になって、手荷物券がなくなったのは登山客がいなくなってしまったからでしょう。
ウィンターシーズンの客が少しずつ持ち直してきたのに、グリーンシーズンがこんなことになってしまい、なんとかこの危機を乗り切ってほしいものです。
索道も鉄道も同じですが、災害でいったん放棄されてしまったら、いまの経済的な状況からしてもう一度復活させるのは容易ではありません。
結果、さらなる観光客離れや過疎化を招きます。
埼玉県の秩父地方にある三峰神社が良い例だと思います。
いまはサンデードライバーも減っているし、高齢者にとっては山道の運転はしんどいですから、マイカー族でカバーできないと思うのです。
さて、切符を購入して改札を抜け、乗車口まではすべてスロープになっています。
これは冬場にスキーブーツをはいたまま手に板を抱えて並ぶために段差がないのですが、ブロンプトンにとっては転がしながら移動できるのでありがたいのです。
ウィンターシーズン同様に、乗車口の係員に「よろしくお願いします」と声をかけ、ブロンプトンと一緒にゴンドラへ。
わたしがスキーを練習していたころの時代は、体育会系のひとたちはみなリフトの椅子から雪を払ってくれる係員の方に、こうして挨拶していました。
それは子どものころ、下手なためおっかなびっくり冷や汗ものでリフトに乗った時から変わらない習慣です。
当時のリフトは一人乗りで乗降時に減速などしませんでしたから、係員の人に介助してもらわないと、初心者は乗れなかったのです。
こんな感じでゴンドラに乗ると、スキーシーズンを思い出します。
寒い中暖房などついていないのに、滑って疲れているものだからゴンドラの中で居眠りすることが良くあります。
山頂につくとゴーグルが曇るほどに寝汗をかいてしまい、「あちゃあ、やってもた」などということが今でも時々あります。
しかし、こうしてグリーンシーズンにブロンプトンと一緒に空中散歩できるというのは、また格別なものがあります。
だって、冬みたいに外が白一色ではないし、こと白根火山ロープウェイに関しては、草津温泉の街並みや、そのはるか向こうに広がる榛名山などの山並み、そして眼下には山腹を蔽うクマ笹の間に不気味な火山の噴出口がみえかくれして、見ていて飽きません。
先ほど自分がブロンプトンで下ってきた道を上から俯瞰できるというのも、索道でなければできない経験です。
13分ほどの空の旅を終え、山頂駅に到着です。
山麓駅の標高が1,547mで山頂駅の標高が2,016mですから、総延長2,400mで高低差は469mということになります。
これで片道900円が高いか安いかは、この高低差をどれだけ楽しめるかどうかにかかっていると思います。
山頂駅もバリアフリーが施されているので問題なく転がして駅前の広場でゆっくりとブロンプトンを開きます。
それにしても真夏でも肌寒いくらいの涼しさです。
灼熱地獄の都会で自転車に乗ることを考えたら、まさに別天地です。
山頂駅からレストハウスのある白根火山バス停までは、一般車通行禁止の舗装された林道が1.2㎞ほどで通じています。
この道路は、逢ノ峰という側火山の山腹を巻くように設けられていて、山頂駅から国道までほぼ平らな道のりです。
ロープウェイで山頂駅まできた一般の観光客は、予め往復券を購入してまたゴンドラに乗って下山するか、この1.2㎞の林道を無料のシャトルバスに乗るか、あるいは徒歩で歩くかして白根火山バス停から路線バスに乗り換えて下山することになります。
林道自体は自転車が走れるかどうか不明だったので、山頂駅の駅員さんに伺ったところ、歩行者とシャトルバス優先でゆっくり走ってもらえれば、乗っても大丈夫ですと仰っていただけました。
わたしは自転車が嫌われる原因に「スピード」があると思うのです。
でも、せっかく火山河口近くの高山植物の宝庫に来たのですから、それこそ人間の歩く速度から小走り程度のスピードで走らないと、いろいろなものを見落としてしまいます。
ゆっくり、のんびり走れるブロンプトンの良さが、ここでも活きます。
山頂駅を後にすると、左手にゲレンデがみえて、こまくさリフトという名の索道が夏季営業しています。
ここは冬場には本白根ゲレンデとよばれ、草津スキー場の中でももっとも標高の高い場所になります。
日本にはじめてスキーを紹介したのは、T.E.レルヒ少佐で、1911年(明治44年)に新潟県の高田市で軍隊にアルペンスキーを教授したのが日本におけるスキーのはじまりとされています。
現存するスキー場で最古のものは、1915年に開設された猪苗代の沼尻スキー場です。
草津国際スキー場の開設もほぼ同時期で、1948年には日本で最初にリフトが架けられたスキー場になりました。
こまくさリフトに乗ると、湯釜を斜め上から眺望できるばかりでなく、周囲にいくつもの噴火口跡や側火山を確認することができ、草津白根山が複合火山であることがよくわかると思います。
興味があれば、ブロンプトンを小さくたたんでリフト乗り場に置かせてもらい、リフト頂上まで往復(400円)してみるのも面白いと思います。
さてそのままゆるゆると林道を走ります。
道の両側にはクマ笹のうえに白樺やダケカンバが認められますが、火山性地質のためかまとまって植生せず、また高山帯ゆえに低木が殆どなので、見通しはよく効きます。
遠くは北アルプス連峰も見えますので、双眼鏡を持ってくればよかったと反省しました。
やがて弓池の裏側に出てきました。
前々回にご紹介した通り、弓池の周囲には散策路がめぐらされているので、脇にブロンプトンを小さくして停めて、池のほとりにある蓬莱岩にのぼってみてもよいでしょう。
とにかく、のんびりゆっくりでもいろいろできるのがブロンプトンの良いところですから。
なお、シャトルバスが来たときは自転車を降りて寄せ、通行の邪魔にならないようにします。
こちらはあくまでもお邪魔させていただいている身ですから。
こんな感じでゆるゆると走っても、1.2㎞のほぼフラットな林道ですからすぐに国道に出てしまいます。
すぐ右手に白根火山バス停が見えます。
次回は索道との比較のために草津温泉からバスで登り返してみるため、温泉までもう一度下るところから始めたいと思います。